関西地方の方言に「もみない」と言う言葉があるようです。
この言葉は食べ物の味がよくない時の表現で、元々は、「この煮物もみないわ」のように味付けがうすかったりして期待通りの味とは違うことを表していたのが、次第に「美味しくない」「まずい」と意味が広がったようです。
お客さんに食べ物を提供する際に、「もみないもんやけど・・・」と、挨拶の表現のような使い方もします。
その使い方が、昨日のNHKの朝ドラ「べっぴんさん」でも使われていました。
そのシーンは、ヒロインすみれ(芳根京子)の父・坂東五十八(いそや:生瀬勝久)に、坂東家の執事の井口忠一郎(曾我廼家文童)が白湯(さゆ)を差し出しながら、“もみないと思いますけど・・・”話しかけたセリフでした。
ドラマの時代背景は戦後の神戸・大阪を舞台にしていることから、当時は一般的にこの言葉が使われていたのかも知れません。
この「もみない」は上方落語でもしばしば登場していたようですが、最近では関西でも通用しなくなりつつあるそうです。
語源については、「旨くもない」が変化したとの説もあるようですが、江戸時代の方言集『物類称呼(ぶつるいしょうこ:江戸時代の方言辞典)』には、日本書記の逸話として、奈良・吉野の村人が、カエルを煮て食って、あまりのうまさに、「もみ」と名付けたという話が紹介されているそうで、ここから美味いものは「もみなるもの」、まずいものは「もみないもの」、というようになったということです。
それにしても、古(いにしえ)のカエル料理の味から生まれた「もみない」という歴史を感じる言葉が、最近では関西でも通用しなくなりつつあるというのは残念ですね。