図は、福島県の気候条件を詳細にマッピングしたデータです。
先日発表された知見で、住まいと環境 東北フォーラムの研究成果のひとつで
秋田県立大学・松本真一先生が発表されていました。
気候風土というとき、その中身は実にさまざまな条件がそこにあります。
寒い、というのは単純に気温が低いというのが基底的な条件ではありますが、
それに加えて、日射がどうであるかによって大きく2つに分かれます。
冬に日射が少なく、しかも湿度が高いとか、
一方寒さは厳しいけれど、日照率は高いとかで、
そこで建てられる住宅が満たすべき「性能要件」には違いが出てくる。
北海道の場合だとこういった区分けではまず、
日本海側地域の、冬にたくさん雪が降る地域というのがあります。
そのなかでも比較的気温が高い札幌などの地域と、
そうでありながら、同時に気温はマイナス30度くらいまで下がる厳寒の旭川では
相当な違いがある。
雪についていえば、ことしの岩見沢地域のように
発生頻度が高い「石狩湾低気圧」の通路になりやすく
局所的に集中してくるような地形的な特異点というのもある。
一方で、帯広を中心とする太平洋側地域では
冬場は安定した晴天が続く。
ほとんど雪は降らないのだけれど、
寒さは、雪による地表の被覆がない分、放射冷却的な気温低下が激しい。
ちょっと前までは、冬の十勝地方と言えば晴天続きが普通だった。
まぁこういったような地域性が顕著だったのだけれど、
最近、ここ10年ほどは温暖化の影響からか、
帯広を中心とする十勝地方では冬の初めにドカ雪が降って、
その雪が融けないで、春遅くまで残るという傾向になってきている。
南北による地域の違いの他に、このような日射条件の違いというのも、
日本海側と太平洋側では、違いが格段に大きい。
このように違いがあると、必然的に外観にもその特徴が現れる。
太平洋側地域では、ほとんど屋根に関心のないデザインが多くなる。
一方で札幌では、いかに「雪を落とすか」という屋根のデザインポイントが
きわめて関心が高くなってくる。
また、どういう日射条件かによって、窓の開け方には考え方の違いが出てくる。
どう「取り込むか、遮蔽するか」の違いが必然的に現れるのですね。
同じ「寒冷気候」でもこういった違いが大きい。
で、事情は他の地域でも同じ傾向にある。
福島県は、そういうなかでも特異点といえるほどに
「気候区分」が実にさまざまであります。
省エネ区分で見た「地域区分」指標では、たとえば北海道は均一に1地域なのですが、
面積はグッと狭いのに、福島ではなんと2地域から4地域まで幅広くあって、
気候についての地域の主要関心事の所在点がさまざまというのが現実。
端的に言って、いわきを中心とする「浜通」と、
会津若松を中心とする「会津」では、盛岡と千葉くらいの違いがある。
さらに最近は、高断熱高気密の知識や技術を踏まえた上で、ふたたび
日本家屋本来の知恵である夏の対策も住宅づくりで大きな要因になってきた。
夏場の「卓越風」というような言葉も知られてきている。
これは、その地域で季節ごとにどんな風向き、強さの風が吹くかの指標。
こうした知見が、より細かいメッシュで、どんどん進化してきています。
家づくりに当たって、気候風土の違いということに、
もっともっと関心を持っていただきたいと思います。
それが、「地域性を踏まえたいいデザイン」を生む基礎的な条件なのですね。
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