きのうまで、東京ビッグサイトで開催されている
「東京国際ブックフェア」を視察してきておりました。
ご存知のように、出版の危機状況が続いてきております。
概算の総売上で、2001年には3兆2,700億円だったものが、
2010年には2兆1,300億円というように推移してきている。
なんと10年で35%も総売上が下落してきているのです。
ものすごい地殻変動が起きているなかに、わたしたちの現在はあるわけです。
新聞もひどい状況で、いまや若年層30代くらいまでは
ほぼ購読していない状況。そんなことを反映してなのか、
社会の常識と、新聞が書いていることの間にはいまや相当の距離感がある。
ほぼ日本の主要新聞すべてが消費税を上げる方に翼賛し、右へ習えしている状況って
それが日本の「世論」である、とはどうしても思えない。
まぁ、総体としての「活字文化」というものが存続の危機にさらされています。
事情は欧米でも同様で、もっと極端に事象が発現している部分もあるので、
まさに現代世界の抱えている問題露呈なのでしょう。
そういう危機からの脱出のヒントを求めて、年一度の出版エキスポのこの催事には
ここ数年は参加しています。
いろいろな意味で状況を把握することが出来るし、
またいろいろな人と情報交換することで、出会いが広がったりもする。
で、そうした悩み多き衆生に、説法を傾けるべく駆けつけた
日本の元気なお母さんとでも言える瀬戸内寂聴さんの講演には
すがるように多くの出版関係者が集まってきておりました。
2300名とかのアナウンス。
出版危機に、ビッグネームならなにかのヒントを出してくれるのでは、
っていうような期待感ということでしょう。
作家の方というのはベースが人間探求型なので、ビジネス的な視点から
求めているような答え方は期待しにくい。
「ビジネス」は、実態のよく見えない「世間」と向き合わなければならないけれど
作家はあくまでも個人個人のこころと対話する専門者なのですね。
なので、会場との質問応答タイムでは
論点の食い違いがほほえましく展開しておりまして(笑)、
それはそれで瀬戸内さんの個性全開とでもいえるようで楽しい。
それにしても、ことし90歳ということですが、
1時間10分くらい、講演はずっと立ってこなされていました。
ものすごくエネルギッシュで驚愕します。
この年代になってくると、たぶん、世俗的部分ではなく、
内面から突き動かされる部分のほうが
大きくなってくるだろうと思われるのですが、
まさにそういったエネルギーが彼女から立ち上っています。
独特の早口で、「わたし、昔っから面食いですから(笑)」なんて、
まぁもう、何を言っても許される解脱者の境地なのでしょう。
そういった瀬戸内さんですが、
さすがの彼女の著作を持ってしても、
電子出版というのはきわめて難しいようで、
彼女の最初の小説の初版が、60年前に6000部だったのが、
積極的に取り組んでいる電子出版での販売では、3000部に止まっているのだそうです。
ここまでのビッグネームを持ってしてもそうなのか、
っていうような暗澹としてくるような数字です。
しかしまぁ、なにかの突破口を開いて立ち向かっていくしかないのでしょうね。
その「元気」だけはしっかり会場に充満させられた講演でした。
瀬戸内さん、ありがとうございまいた。
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