三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

現代アート・川俣正作品体験-1

2012年07月17日 07時42分04秒 | Weblog



現代アートというのは、ジャンル自体なかなかとらえどころがない。
また「作品」という概念自体も持ちにくい。
そういう世界で、北海道三笠市出身で世界的に著名な作家・川俣正さんがいる。
以下、Wikipediaでの紹介から

川俣 正(かわまた ただし、1953年 - )は、北海道三笠市出身の芸術家、造形作家。作品は日本のみならず、世界各国で展開されている。
作品制作スタイルについては、ワーク・イン・プログレスと呼ばれるプロジェクトを組み、現地で制作されることが特徴。国内でのワーク・イン・プログレス例としては
コールマイン田川(福岡県田川市)、
ワーク・イン・プログレス豊田(愛知県豊田市美術館)、
直島スタンダード2や越後妻有トリエンナーレ等がある。
東京藝術大学教授などを経て、現在、フランス国立高等美術学校教授。

知人の武部建設・武部さんがかれの高校時代の友人ということで
故郷・三笠市への思いを表現する創作活動への支援活動を行っていたのです。
で、わたしもその線から「友の会」みたいなことになっておりまして、
それとなく武部さんのブログを見ていたのですが、
どうも川俣さんが三笠市に入って創作活動を始めたらしいこと、
さらにその創作にはボランティア的な作業活動が行われていること。
そして、それが一段落して半ば打ち上げ的なチェロコンサートが開かれたことなどが
ブログからは情報として伝わってきました。
わたしもそれとなく気にはなっていたのですが、
いつ行ったらいいのか、どうも要領を得ないまま過ごしておりました。
やむなく、昨日朝、武部さんのブログを確認後、
「で、いつ、見に行ったらいいのさ?」
と連絡した次第であります。
現代アート、なかなか一筋縄ではいかない。
単に見に行くにもかなりの手順が必要であります(笑)。
しかし、武部さんたちはそれに一々付き合わなければならないのだから、
それもまた、大変だろうと案ずる次第であります。
で、聞いたらきのうは後片付けもあって、作品の創作地・旧美園小学校にいるという。
ということで11時に約束して札幌を出発。
旧美園小学校はわかったけれど、
「正門」というのが不明で学校を一回りして、ようやく発見。
そのうえ、学校の玄関を入っていったら、
「そうじゃなく、こっちが入り口」って言われたのは、
盲点になっているような小さな入り口。
っていうような、現代アートが作り出す異次元(笑)プロセスを経て
ようやく武部さんに出会えて、写真のような
みごとな造形作品にたどり着くことが出来た次第であります。

作品はジオラマとして
かれ、川俣正さんの原風景としての炭坑を
シンボリックに表現したものであることは明らかであります。
一見して、正面右手には炭坑の象徴としての「ズリ山」が表現されている。
その周囲に炭坑施設建築群、さらに「炭坑住宅」が規則的に配置されている。
それらが、この地の幾春別川とおぼしき川筋で左右に分けられて
境界を形成していて、ある納得できるスケール感を感受できる。
またなぜ武部さんが川俣さんに目を付けられて現地活動を担当しているかも
この作品はきわめて明瞭に語ってくれています。
こんな作品、建築的素養がなかったら創造不能ですね。
構造本体は木材で骨組みが構成され、
その上に合板が貼り込まれ、その上により柔らかな薄い合板が張られて
その上から段ボールで表面仕上げされている。
現在はところどころ白いペインティングが施されている。
白いところと、そうでないところのバランスもそのコントラストが微妙に面白い。
武部さんはよく建築家の住宅も施工するのですが、
今回は現代アートのプロデューサーを担当していたということ。
傍目に見てもこれは嵌まり役で、川俣さんの慧眼恐るべしであります。
・・・って、まぁ、高校の同級生なら、やるしかないですよね(笑)。
そういった人間関係性も楽しそうで、つい釣り込まれてしまいます。

なんですが、そういうこととは別に
作品としても、そのスケール感はすごい。
廃校になった小学校体育館全域を使って、それぞれの既存建築の要素に
新たな役割を与えています。
体育館の窓は水平面の大きな要素に取り入れられていて
そこからの採光は、時間経過の中でときに劇的な効果を生み出すに違いないと思います。
作品の真ん中付近には、一筋の湾曲した川のような通り道が造作されていて
まるで地形を感じながら、その「胎内」に入り込んでいくような感覚をもたらします。
そこから通り突っ切ると体育館演壇に至ります。
この既存の体育館演壇は、いくつかの視線の高さの段差が設けられていて
このジオラマオブジェの背面からの全体俯瞰を提供しています。
さらに演壇を反対方向に降りていくと、オブジェの見せ場である盛り上がった地形側の
胎内をくぐり抜けてくることが出来る。
そのように作品を体感した後、幾春別川をふたたび下って
そこから体育館キャットウォークに上がると、
この作品全体をまさにジオラマとして感覚することが出来る。(写真の位置です)
この全体バランスは均整が取れていて、
建築と彫像の中間のような存在感を与えてくれています。
現在は、川俣さんの第1期創作活動が終わった時点ということで、
来年また第2期活動が行われることになっているそうです。
しかし、これはこれで、一個の芸術作品であることは間違いがない・・・。

<だいぶ長くなったのできょうはここまで。あすもこの項、続けます>
なお、この現代アート見学希望の方は、こちらへ
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