三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【建具造作がもたらす空間の味わい】

2019年07月25日 05時49分35秒 | Weblog



つくばの「里山住宅博」を見学して来たもので、
ここのところ、そのことをブログ記事で書いていると本州地域のみなさんから
いろいろな書き込み。ツッコミをいただいて楽しく書かせていただいています。
一昨日も玄関窓に嵌め込まれた「格子建具」を題材にしたところ、
新潟のオーガニックスタジオ・相模さんからツッコミ。
「北海道は、ほぼ左官職人と建具職人が絶滅したとお聞きしてます。
なければないでいろいろ考えるのが北海道の家づくりかなと思いました。」
ないことはなく、左官職人さんで建築工事まで手掛ける方もいるし、
わが家では玉砂利洗い出しの仕事をお願いしたこともある。
建具工事でもいろいろ面倒なお仕事をお願いもしてきている。
ただ、全般的には北海道では、絶滅危惧であることは事実。
そういうなかで「里山住宅博」で見学した建築家住宅2例では
それこそ建具工事が主役かと思われるほどにキモになっていた。

写真は堀部安嗣さんの住宅例からですが、
家の真ん中の吹き抜け空間に、きわめて印象的な室内窓があった。
白い塗り壁のなかにどうやら引き違いの窓がある。
こういう引き違いの窓って、
北海道では一般住宅ではほとんど見られなくなってきている。
わたしも本州地域ではときどき見掛けることはあるけれど、
北海道ではそれこそ歴史的建造物、わが家周辺では
150年前ほどの開拓時期に建てられた「屯田兵屋」で、
こうした木製開口建具が造作されている様子を見る程度。
そういう建具が150年も経っているのに、
いまでも現役で元気に引き違いの役割、機能を果たしている様子を実感すると
このようにイマドキの窓が耐久性を持って存続するのだろうかと
ふと不安になったりもすることがある。
それは異種素材、木材と金属が複合して機能を果たしているものが、
ほんとうに長期間にわたって、持続可能なのかどうか、
イマイチ、信じられないという心理が働いてくるのですね。
木製建具の場合には、職人仕事として一工程で済んでいるけれど、
これらの現代装置類は、複数の工程になっているので、
メンテナンスが難しいのではないかという不安がよぎってしまう。
この引き違いの建具を実際に動かしてみたけれど、
過不足なくスムーズに稼動して、あとは木の機能劣化だけが「按分」される、
そういうわかりやすさが伝わってくる。
北海道のようにこうした建具仕事が絶滅危惧に瀕してくると、
こういった建築表現のありがたさ、すばらしさに目を見張る思いがする。
なにより職人さんの手仕事感が住み手にジカに感じられる部分。

さて、相模さんが言うとおり
「なければないでいろいろ考える」ことが本当に地域としてできるのか、
まさに「試される大地」(ちょっと前の北海道の地域キャッチフレーズ)かなぁと、
本州地域からの叱咤に聞こえた次第です。
コメント
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