三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

人間を入れる寸法

2011年08月02日 06時30分04秒 | Weblog





日曜日から東北に出張であります。
今回はフェリーを利用して苫小牧から仙台までの往復。
太平洋フェリーの新造船のようで、
まことに素晴らしい客船であります。
で、季節は夏休みシーズンと言うことで子どもさん連れや、
学生さんたちの体育会系の遠征などの旅客とか、
わたしのようなビジネス客から、満員での運行。
普段、フェリーを使うと、だいたいガラガラなんですが、
さすがはこの時期、超満員のようですね。

で、乗り込んだのが写真のごらんの寝台。
家族連れでもないので、乗ってしまえば、多少デッキで風に吹かれてみる
くらいはあっても、あとは寝ているだけ。
立派なお風呂もあって、そういう利便性はまったく問題はなく、快適。
なんですが、この寝台スペースはすばらしい人間工学探求の結果と
驚嘆しておりました。
ちょうど、東大名誉教授の内田祥哉先生の講演を記事にまとめたりしていたので、
日本のモジュールの素晴らしさを再認識させられていたときでもあり、
身をもってそういう寸法感覚体験を感受できました。
この寝台、出入り口は利休の「にじり口」もかくや、という開口。
いったんベッドの縁に腰掛けてみると
ちょうど、座高の高さに微妙にフィットする。
そこからやや奥に腰を滑らせていくと
ちょうど、寝る位置に腰が移動する。
で、カラダを伸ばすと、ちょうどカラダが過不足なく
この寝台空間に収納される。
で、照明装置や、寝具の類を並べると
読書~目が疲れて眠たくなる~というプロセスを自然にたどれる。
気がつくと、にじり口にはスライドシャッター仕様の目隠しカーテンがある。
これを下まで下げると、みごとに個室状態になる。
下の所では、微妙な錠装置もあって、しっかり閉鎖状態が保持できる。
まぁわたし、普段は25坪の部屋を独占して寝起きしているので(笑)
こういう「狭さ体験」はしばらくぶりだったこともあって
「感動」もひとしおだった次第ですが、
こういう空間に収められた状態の中で、
こういう空間をも上手に折り合いを考えていくという「文化性」に
思いを巡らせていたわけです。
内田先生も言われているのですが、
日本人って、何坪・何畳の空間っていうことで、
広さを共通認識で語り合える珍しい文化を持っているといわれるのです。
利休さんの茶室って、こういう考え方を根付かせた大きい文化だったのか、
それとも京町家という住宅文化のなかから、
こういう寸法感覚が日本人に根付いていったのか、
ニワトリかタマゴか、ですが、
こういう狭さの中で、精神的にそう圧迫感も感じずに
ふつうに受け入れ続けている、というのは、
すごい文化性なんだと再認識できます。
狭さの中で、自分を落ち着かせ、そういう状況を受け入れて
暮らしていく工夫を巡らす、そんなイメージが湧いてきた次第です。

帰り、木曜日にももう一回、乗船するので
このあたり、イメージを膨らませてみたいなぁと思っております(笑)。
コメント
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