つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

今よりも津幡がオープンだった頃の話。

2010年12月14日 01時16分18秒 | 日記
現在、深夜。
安酒を飲みながら束の間の休息に浸っているところだ。
やや酔いの回った頭を抱え、散歩中に写した画像を見ていたら、
「今日の一枚」が目に留まり、キーボードを叩き始める。

…写っているのは、何て事のない住宅街。
かつてこの一角には小さな酒屋があった。

幼い僕は、生家から歩いて1分とかからないこの辺りへ、
父の使いで日本酒を買いに出かけたものである。
求めた銘柄は「兼六」。
茶色い一升瓶を抱えて歩いた自分を妙に覚えている。

その酒屋の店内には立ち飲みのカウンターがあって、
赤ら顔の大人達が集っていた。
子供が足を運ぶくらいだから
それほど夜の更けていない時間帯だったと思うが、
裸電球の下では、既に酒宴の真っ最中。

アルコール臭。
肴のサバ缶や牛肉の大和煮、竹輪などの匂い。
のしイカの甘い香り。
店内は、人いきれと雑多な喧噪が混ざり合っていた。

記憶の中の店のオヤジさんは、常に爪楊枝を咥え、
座を取り仕切る陽気な人である。
僕が酒を買いに行くと、空の一升瓶と引き換えに、
新しい「兼六」を渡してくれ、笑顔で頭を撫でてくれた。

思えば、当時のご近所は随分とオープンだった。
酒屋の入口をはじめ、家々の扉はお粗末なカギしかない引き戸。
それも鍵をかける事など、滅多にない。
台風が来たときくらいである。
帰宅するなり厳重にロックする今とは大違い。
つまり、心もオープンだったのだ。
コメント
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