上砂理佳のうぐいす日記

「夏への扉」展では暑い中、たくさんの方にお越しいただき誠にありがとうございました!★

さまよえる私

2006-10-18 | 06-07 コンペとショー
気持ちは一喜一憂で、まるで「さまよえるオランダ人」(笑)。
他の方の意見を聞くのは楽しいですね。自分の中の風通しが良くなります。
これから公式試合が始まるとまた意見噴出になると思いますが、コメントは「同調」だけでなく反対意見でももちろん構いません。ただ、余り長い間、ここで論争をやる気はありません(笑)。それと「独り言の流しっぱなし」コメントに終始していないか、それだけは配慮をお願いします。

キャンベルでショックを受けていた私にK嬢から激励のメールが。
「まあまあ。カナダのJ君が言ってたよ。“シーズン初めから簡単に滑りこなせてしまうPGは、決してその人を成長させることはない”って。だから大ちゃん、大丈夫よ」
…あああ。なんと含蓄のあるお言葉。さすがカナダのJ選手。長い試練を経てきた人だけに、この言葉がズーンと重く身に沁みる。目先の結果より「過程」が大事ということ。そうですな。
私は絵の仕事をしてるけど、これも全く同じ。自分にとって楽な絵ばかり描いていると、何年経っても上手くならない。
逆に「うわっ。これは乗り越えられない…(泣)」級のものと格闘していると、ボロボロになりながらも、自分のMAXのレベルは上がる。でも安心してなまけているとまたズルズルと落ちていく(笑)。

昨年のトリノイヤーの荒川静香ちゃんがフト胸をよぎりました。
SP、FSとも難プログラムで手こずり、GPシリーズで大苦戦。全日本終了の段階で遂にコーチを変えPGを一から作り直し。
時間ギリギリでトリノに辿り着いた時は既に「突き抜けた境地」ですらありました。「私はやれるだけの事は全てやりきった」という自信。そこからくる落ち着き。そこまでの紆余曲折の過程を考えると、なんとも言えない説得力を感じましたわ。私は。

よーく考えると、大ちゃんはまだ「うよきょくせつ」の「う」ぐらいまでしか行ってない(笑)。
自分が楽しめるレベル範囲内で選手生活を送るのなら、それはそれで構わないのだけれど、本人曰く「金メダルを獲る」気なら、ハードルを高くしてそれをクリアしていくしか方法は無いんだろな。
去年のハードルは、まずは「低迷からの脱出」だった。
GPでいきなり優勝して、五輪代表選考レースのトップ走者になった。
ところが、1年後輩の伏兵、織田君の急成長で横に並ばれてしまう。
全日本選手権で「ハナの差」で振り切った。
シーズン開幕時は「出場を目指すぞ」レベルだった五輪が、いつの間にか「メダルを獲るぞ」に変わってる。
…でも結果で出た答えは「まだまだな自分」だった。
「なんだ。8位じゃん。全然ダメじゃん。」と言う事は簡単だ。
でも、あの1年間の格闘の過程で、得たものは計りしれないはず。

オープン大会だから気楽に~と構えていた私ですが、結構いろんなものが見えてきてしまいました(笑)。昨日、プロトコル(ジャッジ詳細)が出ましたが、男子の分を見ると「現実を突きつけられた」感触です。
例えばスコット・スミスの滑りと大ちゃんの滑りって、大人と子供くらいの差があるよ…とTVを見て思っていたけど、そんな事は殆ど評価には反映されてない。それに男子の2種類のステップってほぼ皆、レベル3なんだもの。あのスミスの遅いステップでレベル3…。大ちゃんは加点はついてるけれど、それなんぞ「2アクセル1個分」で帳消しになる点差。
去年よりステップが力強く速く複雑になってて、「世界最高峰」の謳い文句はウソじゃないと思います。すばらこいステップ。踊り。去年は「最高峰レベルだけど“世界一”ではないよ」と実は思っていたから(^^;)。けれど、筋トレが効いてきたのかパワフルさが違います。
なのに結局「大ちゃんのイイとこ」は、安定したジャンプをミスなく跳ぶ「磐石の体勢」の上に乗せないと、高く評価されないものなのね。
地面=土が無いと花は咲かない。実もつけない。
ステップや表現、という美しい花を咲き誇らせる為には、まずは土を踏み固めよ、という事かな、と思ってしまった。

ニコライ・モロゾフは、ソルトレイク五輪で優勝したヤグディンの振付師で、個性的で華やかなステップを振付ける事でも有名ですが、確かにヤグには「頑強なジャンプ+高度なスキル」がありました。だからこそ、あのステップが映えに映えた。ジャンプがボロボロの時には、ステップワークも芸術的表現も光らなかった。
「ステップが武器」なんて大ちゃん本人は公言してなくて、ジャンプをミスしてては話にならない、という事は百も承知だろうけど。そしてそれに取り組んでいる最中だろうけど。
私が漠然と思っていたより遥かに、今はジャンプの重要性が高くなってると思いました。まだGPも始まっていませんが、キャンベルもジャッジは勿論公式の人で、採点基準も同じはず。おおざっぱに言ってしまえば、「質の高いジャンプを跳ぶ人」の方が、「質の高いスケートをする人」より、上の順位に着く(?)
この現実とどう取り組んでいくのか、モロゾフはじめ大ちゃん陣営の対策が気になりますわ。場合によっては今季は結果が出なくて、来季に持ち越しかもしれない。何か大きな犠牲を払ってでも、勝ちたいのなら今のやり方(演技スタイル?)を変えなくてはならないのかも。

まとまり無い文章で、何を言いたいのか解らなくなってきたなあ(笑)。
織田君のFSを見ましたが、良いです。素晴しい。殿も進歩しています。
PG構成もいい。点の取り方が実に理にかなってて効率的。難はステップと表現力なんだけど、あの効率の良さの前にはほとんど問題が無いように思う。
…なんだけど、何度も何度も繰り返し見ようとは思わないのよね。この感覚は「真央ちゃんの演技を“うまいなあ!”とは思えど、何度も見ようと思わない」という感覚と酷似してる。でも現実に高得点が出るのは、のぶりんや真央ちゃんだろな、ということも解ってる。

感動しない演技でも金メダルだから拍手するしかないか…という事は、旧採点法の過去でもあるにはありました。でも新採点法になってからは、「感動」と「点数」のギャップがより顕著になったような。「感動」と「順位」はまあまあ納得できるかな。でも点数は謎が深まるばかり。ジャッジの詳細を一般のファンでも即時にネットで見られる、という事も心理的に大きく影響してるのかもしれません。ネットが無い時代は「仕方ないな。ジャッジが下した判定だから」と、あきらめもついたけど、今はついついプロトコルを見て悩んでしまうという(苦笑)。
その辺りのジレンマとどう戦うのか。
静香ちゃんがトリノ五輪で一つの答えを出した事に、私は何か鍵があるのかな?と思っています。「美しさを損なうことなく新採点法に対応する」彼女なりの格闘があった。それは成功した。
大ちゃんも静香ちゃんの側でずーっと一緒に練習していたのだから、何がしかの影響は受けていると思うんですよね。それにモロゾフが無策でいるとも思えない。静香ちゃんと同世代仲間の本田君が、今季からコーチについてくれていることも、幸運(大ちゃんの人徳?)と受け止めたい。私はずっと、テクニカルの面での男性コーチがついてて欲しいな~と思ってたから。特に4回転の。
いろんな思いが頭を巡りますが、やっぱり「勝って」欲しいのがホンネなので、手放しで大ちゃんの新プロを楽しもう~という気になれないの。だって勝たないとTVで演技見られる機会も減るんだよー。あと、殿の脅威も私を圧迫しているなあ。
目の前の世界選手権が東京@日本、ということも大きく影響してるかも。
間に合うのかな、大ちゃん。いや。間に合わせなさい!
コメント (18)
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