外山 滋比古氏(お茶ノ水女子大学・名誉教授)の随筆から:
ノーベル賞を受賞した田中耕一博士は小学校4年生のとき、理科の実験の時に先生に質問した。
先生はそれに答える前に、「キミ、すごいなあ、そんなことがわかるのか」と言われたそうだ。
この一言が田中少年の科学者志望のきっかけになったという
吉田松陰は門下のものをだれかれとなく、ほめた。崇拝する先生に、ほめられれば
眠っている才能がとび出してきてどんどん伸びるということになたのだろうと想像される。
ほめなくては人は育たない。
年をとってきて、あちらこちらも悪くなって、一人前のことができない。
目、耳、歯・・・。不思議と嗅覚だけは老いを知らず顕在。
どうして嗅覚だけが良いのか、ずっと不思議に思っていたが、ある時、疑問が解けた。
母は私が八歳の時になくなったが、それを予知していたかのように、いろいろなことを教えた。
そのひとつに花の香りをかぎわける、というのがあった。
いくつかの花の香りをかぎわけて母からほめられた。
知らず知らずのうちに嗅覚をみがかれていたのだろうと今は考える。
子どもの中にある能力、才能をひきだす、掘り出すのが、子どもの教育である
そう考えるようになった。そのきっかけが私のハナである。
英語で教育する、というのをeducate というが、これは引き出すというのが原義で、
外からあたえるものではなく、もともと眠っている能力を引き出し目覚めさせる、という点で、
いわゆる教育とは違っている。
外山氏は小学校から大学まで先生から褒められたことが一度もない。
戦争末期、予備士官学校で個人面接を受けた。
その席で中尉から「キサマは実に頭がいい。これまでもそう言われたことことがあるだろう・・・」
その後半の言葉がはっきりしないほど驚いた。
それから60有余年、自信を失いそうになると、この中尉の言葉が蘇るのである。
私たちも褒められたことって、いつまでも覚えていますよね。
外山氏の随筆って、なにげにユーモアがあって、新しい発見があります。
↑ の抜粋したところは、長くなるので面白いところはカットしてます