平成27(行ヒ)156 損害賠償請求事件
平成28年1月22日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 高松高等裁判所
漁業協同組合の理事会の議決が,当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってされたものであっても,当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは,その効力は否定されるものではない.
ある高知県東洋町が漁業災害対策資金として1000万円を漁協に貸し付けました。そのとき、漁協の理事の中に貸し付けに関して利害関係者がいました。そこで、住民が利害関係者がいる状態で重要な契約を結ぶのは、件貸付けに係る支出負担行為及び支出命令が違法であるとして訴え損害賠償を請求しました。
事実前提として 「水産業協同組合法37条2項は,漁業協同組合の理事会の議決について特別の利害関係を有する理事は,議決に加わることはできない旨を定め,A漁協定款49条の3第2項は,これと同旨を定めている。」の規定を認めています。
ところが、当該漁協は「A漁協定款は,49条の3第1項において理事会の定足数及び議決要件について同法37条1項と同旨を定める一方,上記の各
要件を加重する旨の定めを設けていない。」としています。
水産業協同組合法の37条2項は「2 前項の議決について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」としています。
37条1項は「理事会の議決は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。」と定めています。
この点裁判所は、「漁業協同組合の理事会の議決が,当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってされたものであっても,当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは,その効力は否定されるものではないと解するのが相当である。」としています。
よく分からないのは次の点です。裁判所は「Bは本件貸付けに係る被害漁業者の経営者であり,同人の子であるCは本件貸付けに係る貸付金を原資としてA漁協から融資を受けた者であるから,いずれも本件議決につき特別の利害関係を有するものというべきである。」と利害関係にあったことを認めています。その上で、「A漁協の理事8名からこれらの者を除外した6名の過半数に当たる4名が出席し,その全員が賛成したのであるから,特別の利害関係を有する理事を除いてもなお議決要件を満たすということができる。」としています。
この利害関係者を除いたとして計算しても、過半数を超えて参加し3分の2が賛成しているから問題ないとしています。
この裁判官は心理学を無視しています。理事会の参加者は、目の前の人たちの行動と全く無関係に意思決定できるという前提に立っています。これはバンドワゴン効果と言われるもので、本来だったらしないだろう行動を周りの人たちに流されて行ってしまう行動です。この意思決定がそのバンドワゴン効果であったかどうか、検証していません。
子供が漁協理事である親に言わなかったので知らなかったと言える状態だったのか、それは判断されないのでしょうか?下手すれば詐欺罪適用の可能性だってあったわけです。このくらい大目に見て貸してくれよと暗に圧力がかかったのかもしれません。おそらく訴えた住民はその可能性を着いたものだと思います。
おそらく今回の裁判は、貸付先が仲間内で利害関係者があるとはわかっているが、実態は議事録もそろってるし当事者がいなかったとしても定足数が足りてるから、細かいこと言うなと言ったところでしょうか。既に貸し付けを行っているので、その現実を優先せよとのことでしょうか?貸付先が善意の第三者だったらそのロジックは納得できますが。
では、何故この法律があるんでしょうか?田舎で毎日顔を合わせている人から、融資を頼まれて断りきれなかった。ましてや、その当事者がその場にいたら断れるんですか?
それを断る資質と能力がある人が理事をやっているので問題がないというのであれば、理事に損害賠償を払わせる判断があってしかるべきではなかったのでしょうか。
原審の判断が正しく、この最高裁の判断はトンデモ判決でしょう。
今回の裁判官
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 千葉勝美
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 山本庸幸
平成28年1月22日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 高松高等裁判所
漁業協同組合の理事会の議決が,当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってされたものであっても,当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは,その効力は否定されるものではない.
ある高知県東洋町が漁業災害対策資金として1000万円を漁協に貸し付けました。そのとき、漁協の理事の中に貸し付けに関して利害関係者がいました。そこで、住民が利害関係者がいる状態で重要な契約を結ぶのは、件貸付けに係る支出負担行為及び支出命令が違法であるとして訴え損害賠償を請求しました。
事実前提として 「水産業協同組合法37条2項は,漁業協同組合の理事会の議決について特別の利害関係を有する理事は,議決に加わることはできない旨を定め,A漁協定款49条の3第2項は,これと同旨を定めている。」の規定を認めています。
ところが、当該漁協は「A漁協定款は,49条の3第1項において理事会の定足数及び議決要件について同法37条1項と同旨を定める一方,上記の各
要件を加重する旨の定めを設けていない。」としています。
水産業協同組合法の37条2項は「2 前項の議決について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」としています。
37条1項は「理事会の議決は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。」と定めています。
この点裁判所は、「漁業協同組合の理事会の議決が,当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってされたものであっても,当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは,その効力は否定されるものではないと解するのが相当である。」としています。
よく分からないのは次の点です。裁判所は「Bは本件貸付けに係る被害漁業者の経営者であり,同人の子であるCは本件貸付けに係る貸付金を原資としてA漁協から融資を受けた者であるから,いずれも本件議決につき特別の利害関係を有するものというべきである。」と利害関係にあったことを認めています。その上で、「A漁協の理事8名からこれらの者を除外した6名の過半数に当たる4名が出席し,その全員が賛成したのであるから,特別の利害関係を有する理事を除いてもなお議決要件を満たすということができる。」としています。
この利害関係者を除いたとして計算しても、過半数を超えて参加し3分の2が賛成しているから問題ないとしています。
この裁判官は心理学を無視しています。理事会の参加者は、目の前の人たちの行動と全く無関係に意思決定できるという前提に立っています。これはバンドワゴン効果と言われるもので、本来だったらしないだろう行動を周りの人たちに流されて行ってしまう行動です。この意思決定がそのバンドワゴン効果であったかどうか、検証していません。
子供が漁協理事である親に言わなかったので知らなかったと言える状態だったのか、それは判断されないのでしょうか?下手すれば詐欺罪適用の可能性だってあったわけです。このくらい大目に見て貸してくれよと暗に圧力がかかったのかもしれません。おそらく訴えた住民はその可能性を着いたものだと思います。
おそらく今回の裁判は、貸付先が仲間内で利害関係者があるとはわかっているが、実態は議事録もそろってるし当事者がいなかったとしても定足数が足りてるから、細かいこと言うなと言ったところでしょうか。既に貸し付けを行っているので、その現実を優先せよとのことでしょうか?貸付先が善意の第三者だったらそのロジックは納得できますが。
では、何故この法律があるんでしょうか?田舎で毎日顔を合わせている人から、融資を頼まれて断りきれなかった。ましてや、その当事者がその場にいたら断れるんですか?
それを断る資質と能力がある人が理事をやっているので問題がないというのであれば、理事に損害賠償を払わせる判断があってしかるべきではなかったのでしょうか。
原審の判断が正しく、この最高裁の判断はトンデモ判決でしょう。
今回の裁判官
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 千葉勝美
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 山本庸幸