最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

じん肺で死亡。未支給分は相続できるか。

2017-07-24 15:09:05 | 日記
平成27(行ヒ)349  じん肺管理区分決定処分取消等請求事件
平成29年4月6日  最高裁判所第一小法廷  判決  その他  福岡高等裁判所

じん肺管理区分が管理1に該当する旨の決定を受けた常時粉じん作業に従事する労働者等が管理4に該当するとして提起した当該決定の取消訴訟の係属中に死亡した場合における労働者災害補償保険法11条1項に規定する者による訴訟承継の成否

時事通信の記事です。
じん肺認定をめぐり、原告の死亡後も遺族が裁判を継続できるかが争われた訴訟の上告審判決が6日、最高裁第1小法廷であった。池上政幸裁判長は、継続を認めなかった二審福岡高裁判決を破棄し、遺族が裁判を続けられるとの初判断を示した。
 その上で、認定について改めて判断するため審理を同高裁に差し戻した。
 原告は2009年にじん肺と診断された北九州市の男性。健康管理の基準となる「管理区分」の申請をめぐり、じん肺と認めなかった福岡労働局の決定を不服として提訴し、一審の口頭弁論終結後に死亡した。
 一審福岡地裁は「じん肺と推認できる」として決定を取り消したが、福岡高裁は「遺族には法的な利益がない」として訴訟を終了させた。
 第1小法廷は「労働局でじん肺と認定されなかった場合、労災の不支給処分を受けることが確実だ」と指摘。認定された場合、原告の未支給分を請求できる遺族には法律上の利益があると判断した。(2017/04/06-17:04)


裁判所の事実認定を見ていきます。
1 Aさんは15年建物管理者として働いていました。粉じんに触れる可能性の高い職場です。H21年に健康診断を受けたところ、病気が発覚しました。
2 労働局長は、地方じん肺診査医の審査に基づき、平成21年11月2日,Aが管理1に該当する旨の本件決定をしました。つまり、管理1はじん肺の所見がないという区分二なり、職場の影響ではないという判断でした。(参考 福島労働局
3 Aさんは納得いかず、審査請求を行いましたが、平成22年3月31日に同審査請求を棄却する旨の裁決となりました。
4 Aさんは平成22年9月29日,本件決定及び本件裁決の各取消し並びに国家賠償を求めて本件訴訟しました。が、第1審口頭弁論終結後の同25年9月14日に死亡しました。
5 地裁では平成25年12月10日、管理2以上に該当するとして,本件決定を取り消し、Aさんの(国家賠償請求)を棄却する旨の判決をしました。
6 平成26年6月6日、Aさんの妻及び子である上告人らが相続により本件訴訟におけるAの地位を承継したと主張して,訴訟承継の申立てをした。

地裁では、じん肺法の性質上、労働者の固有の権利であることが始まりであるのだから、Aさんの死亡で訴えの資格がないとしました。

これに対して最高裁は、
同法23条は,管理4と決定された者については,療養を要するものとしているところ,これは,労災保険給付の対象となる業務上の疾病として,「粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症」が定められ,療養補償給付等の対象とされていることに対応する規定であり,

給付金が絡むので、遺族にも相続権があるとしたわけですね。更に、

管理1に該当する旨の本件決定を受けたAは,管理4に該当するとして,本件決定等の取消しを求める本件訴訟を提起したところ,その係属中に死亡し,その妻及び子である上告人らにおいて訴訟承継の申立てをしたというのであるから,本件訴訟は,Aの死亡によって当然に終了するものではなく,上告人らがAの死亡の当時同人と生計を同じくしていたのであれば労災保険法11条1項所定の遺族に該当するものとしてこれを承継することになる。

第一小法廷判決
裁判長裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之

極めてまともな判断が出ました。
これが最高裁まで争われたこと自体、どうも納得いきません。というのも、労災がらみとはいえ100%の治療費とそれにかかわる費用が支援されるわけではないのです。さらには、国家賠償の対象になり得る内容であれば、家族の心理的負担は測定できないのでともかくとして、かなりの費用負担をして看病もしているはずです。1審は、死んだから交通事故の賠償金を払わなくても良いみたいな感じに見えてきますね。