最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

期間従業員であろうと皆勤手当を払え

2018-06-26 07:42:23 | 日記
平成28(受)2099  未払賃金等支払請求事件
平成30年6月1日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  大阪高等裁判所

1 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労働契約法20条に違反する場合における当該有期契約労働者の労働条件
2 労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」の意義
3 労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」の意義
4 乗務員のうち無期契約労働者に対して皆勤手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例


日経新聞の報道です。

不合理な非正規格差、損害賠償で救済 最高裁が初判断
 物流大手「ハマキョウレックス」(浜松市)の契約社員の運転手が正社員に支給されている6種類の手当の支払いなどを会社に求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は1日、労働契約法が禁じる不合理な待遇格差があっても非正規社員の待遇は正社員と同一にはならず、損害賠償によって救済すべきだ、とする初判断を示した。
 そのうえで、二審・大阪高裁判決のうち4種類の手当相当額の支払いを命じた部分を支持して、会社側の上告を棄却。残る2種類のうち1種類については契約社員に支給しないのは不合理であると認め、高裁判決の一部を破棄して審理を差し戻した。
 運転手の男性が支払いを求めた手当は、通勤費のための「通勤手当」、食事代を補助する「給食手当」、住居費を補助する「住宅手当」、1カ月間無事故で勤務した運転手に支給される「無事故手当」、特殊業務に従事した際の「作業手当」、全営業日に出勤した運転手に支給される「皆勤手当」の6種類。
 一審・大津地裁彦根支部判決は通勤手当を支給しないのは違法と判断。二審・大阪高裁は通勤、給食、無事故、作業の4つの手当について相当額を支払うよう会社に命じた。これに対し、最高裁は皆勤手当についても契約社員に支給しないのは不合理であると判断した。


同一労働同一賃金の流れが進んでいますが、その流れを受けた裁判です。

裁判所の事実認定を見ていきます。

1 Aさんはあるトラック輸送会社に1年契約で働き始めました。
2 内容は次の通り
    期 間 平成20年10月6日から同21年3月31日まで(ただし,更新する場合があり得る。)
    勤務場所 ○支店
    業務内容 配車ドライバー
    賃 金 時給 1150円,通勤手当 月額3000円
    昇給賞与 原則として昇給及び賞与の支給はない。ただし,会社の業績及び勤務成績を考慮して,昇給し又は賞与を支給することがある。
3 正社員に適用される就業規則(以下「本件正社員就業規則」という。)は,従業員が5年以上勤務した後に退職するときは退職金を支給する旨を定め、無事故手当、特殊業務手当、昼飯の弁当手当、住宅手当、通勤手当は倍額の差がありました。
4 る「嘱託,臨時従業員およびパートタイマーの就業規則」(以下「本件契約社員就業規則」という。)は,基本給は時間給として職務内容等により個人ごとに定めること,交通機関を利用して通勤する者に対して所定の限度額の範囲内でその実費を支給すること,原則として昇給しないが会社の業績と本人の勤務成績を考慮して昇給することがあること,賞与及び退職金は原則として支給しないこと等を定めている。


露骨なまでに正規従業員とパートとの間に差があるのです。

5 正社員については出向を含む全国規模の広域異動の可能性があるが,本件契約社員就業規則には配転又は出向に関する定めはなく,契約社員については就業場所の変更や出向は予定されていない。正社員については,公正に評価された職務遂行能力に見合う等級役職への格付けを通じて,従業員の適正な処遇と配置を行うとともに,教育訓練の実施による能力の開発と人材の育成,活用に資することを目的として,等級役職制度が設けられているが,契約社員についてはこのような制度は設けられていない。

それなりに、正社員は非正規よりもそれなりの別の義務が生じるようです。
それについて高裁は
(1) 契約社員である被上告人と正社員との間で本件賃金等に相違があることが労働契約法20条に違反するとしても,被上告人の労働条件が正社員と同一になるものではないから,本件確認請求及び本件差額賃金請求は,いずれも理由がない。
(2) 被上告人と正社員との間の住宅手当及び皆勤手当に係る相違は不合理と認められるものには当たらないから,当該相違があることは労働契約法20条に違反しない。


として、ち住宅手当及び皆勤手当に係る部分をいずれも棄却しました。これについて、最高裁は
1 労働契約法20条は,有期労働契約を締結している労働者(以下「有期契約労働者」という。)の労働条件が,期間の定めがあることにより同一の使用者と無期労働契約を締結している労働者の労働条件と相違する場合においては,当該労働条件の相違は,労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。),当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,不合理と認められるものであってはならない旨を定めている。

第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

2 件差額賃金請求について
ア 本件確認請求及び本件差額賃金請求は,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労働契約法20条に違反する場合,当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるという解釈を前提とするものである。
イ 労働契約法20条が有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違は「不合理と認められるものであってはならない」と規定していることや,その趣旨が有期契約労働者の公正な処遇を図ることにあること等に照らせば,同条の規定は私法上の効力を有するものと解するのが相当であり,有期労働契約のうち同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効となるものと解される。


結論
有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が同条に違反する場合であっても,同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当である。

本件についての結論
同条にいう「不合理と認められるもの」とは,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができるものであることをいうと解するのが相当である。


住宅手当居ついては、正規従業員は転勤の可能性があるから差別的扱いではない。
皆勤手当については、従業員を集める目的であるので正規・非正規と区別する根拠がない。
通勤手当については、そもそも通勤を目的として支給されるのであれから区別する根拠がない。
給食手当については、そもそも食事補助を目的として支給されるのであれから区別する根拠がない。
特殊勤務手当については、そもそも特殊勤務についての定義がない。同一労働の正規従業員にはついているのに、非正規につかないのは根拠がない。

裁判官全員一致
裁判長裁判官 山本庸幸
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守

これは裁判所の判断うんぬんより、法体系に問題がありそうです。
この判決は思いっきり契約の自由の原則に反しているんですよね。労働契約法20条で非正規差別をしてはならないとはいっても、転勤を受け入れない従業員とどう区別するのかの問題が残ります。この裁判ではそこは問われてないので判断しなかったとは思いますが、こうなってくると従業員と個別で労働契約を結ぶ必要が出てきます。
零細企業ならまあ不可能ではないですが、大企業ではそんなことできるのでしょうか。

根本的に転職市場がもっとしっかりしていれば、不満がある企業にいつまでも居ざるを得ない状況で、会社にとっても従業員にとっても不幸な事です。