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鳴門競艇:請求権を放棄する旨の市議会の議決が裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとはいえないとされた事例

2018-11-25 16:55:36 | 日記
平成29(行ヒ)185  公金違法支出損害賠償等請求事件
平成30年10月23日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  高松高等裁判所

 市の執行機関に対して損害賠償請求及び不当利得返還請求をすることを求める住民訴訟の係属中にされた上記各請求に係る請求権を放棄する旨の市議会の議決が裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとはいえないとされた事例

産経新聞の報道です。
徳島県鳴門市がボートレース(競艇)事業運営のため周辺漁協に支払った「公有水面使用協力費」は違法な支出だとして、住民が市に対し、漁協に返還請求するよう求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は23日、住民勝訴の2審判決を破棄し、請求を棄却した。住民の逆転敗訴が確定した。
 協力費は既に、別の訴訟では違法と認定され、市に返還請求を命じる判決が確定しているが、今回の上告審では、これを受けて市議会が返還請求権の放棄を議決したことの是非が争われた。
 岡部裁判長は、議決について「返還請求すれば漁協の財政に相当な悪影響を及ぼすため、水産業振興の観点から一定の配慮をした」と指摘。「不合理とは認められず、市議会の裁量権の逸脱とは言えない」と結論づけた。


事実認定を見ていきます。
1)鳴門市公営企業の設置等に関する条例で、鳴門市は競艇場を経営している。この条例で、競艇事業を含む公営企業の各事業を通じて管理者1人を置き,その職名を企業局長としている。平成24年度及び同25年度において企業局長の職にあったのは,Aである。
(2)
ア 本件競艇場が設置された昭和28年当時,参加人らは,本件水面及びこれに近接する海域においてボラ漁の漁業権の設定を受けており,参加人らの組合員らは,これらの海域において漁業を営んでいた。だが漁業権は,昭和38年に消滅したが,参加人らは,同年,本件水面に近接する水面上にわかめ養殖業のための区画漁業権の設定を受け,組合員らがわかめ養殖業を営むようになった。もっとも,参加人らは,昭和50年9月以降は,市に対して漁業被害の実情を書面により報告することや,減収額の調査をすることはなくなった。
イ 市が参加人らに対してそれぞれ支払った本件協力費の額は,昭和52年度には202万5000円であったが,順次増額され,平成7年度から同21年度までは各600万円であった。その後,本件協力費は,競艇事業の経営状況の悪化等を理由として,平成22年度は各580万円,同23年度は各500万円,同24年度は各450万円と順次減額された。
ウ 市は,平成16年8月までに,本件競艇場に設置されていたフェンスを移動するなどして,本件競艇場の規模を拡張する鳴門競艇場競走水面整備事業(以下「本件拡張整備事業」という。)を行った。その際,市は,参加人らに対し,本件拡張整備事業に係る工事協力金として,本件協力費とは別に各1000万円を支払い,参加人らは,本件拡張整備事業に同意した。


つまりは、漁業権は無くなって減収分の調査協力金も徐々に減らされています。拡張か何かあったんでしょうね、フェンスの移動で協力金とは別に各1000万円を払っています。
すごいですね、その区域を利用する人ではなく個人に調査費と1000万ですからね。これでは、競艇場も大赤字でしょう。

(3)Aは,平成25年4月1日,市を代表して,参加人らとの間で,要旨以下の内容の公有水面使用協定書を作成して公有水面使用協定(以下「本件協定」という。)を締結し,市は,同月30日,本件協定に基づき,参加人らに本件協力費として各430万円を支出した。・・・本件協力費の支出に関し,市議会において決算の認定がされてきた。
(4)
ア 市の担当者は,平成23年10月に開かれた市議会予算決算委員会や同24年に行われた本件協力費に関する住民監査請求手続において,本件協力費について,漁業補償の趣旨を含むとの言及や,港湾管理者である徳島県(以下「県」という。)との水域占用協議に参加人らの同意が必要となるからその対価であるといった説明はしなかった。
イ 被上告人らは,平成24年4月,平成18年度から同23年度までの間の本件協力費の支出が違法であるとして,徳島地方裁判所に対し,当時企業局長の職にあった者に対する損害賠償請求及び参加人らに対する不当利得返還請求をすること等を求める住民訴訟)を提起した。
(5)徳島地方裁判所は,平成27年12月11日,本件支出に係る支出負担行為である本件協定は違法,無効であるとし,被上告人らの請求のうち,Aに対する860万円の損害賠償請求及び参加人らに対する各430万円の不当利得返還請求をすることを求める部分を認容する判決を言い渡し,その理由中で,本件協定が違法であることの根拠の一つとして,本件水面の占用期間延伸手続に参加人らの同意が必要であるとは認められないことを挙げた。上告人は,同判決に対して控訴した。

住民からすれば、訳の分からない金をダラダラと漁民に払うなということでしょう。

(6)競艇事業を実施するには,本件水面の占用についての県の許可を要し,これには参加人らの同意が必要であるとされていたこと,参加人らの同意を得るための協定書が締結できなくなれば競艇事業が実施できなくなるおそれがあるとの認識があったこと等の説明を行った。

(7) 前件訴訟の第1審判決を受けて,市は,平成26年度以降の本件協力費の支出を取りやめた。また,Aは給料月額の10%を6か月減額する懲戒処分を受け,B市長については6か月の給料月額の減額率を10%上乗せし20%減額する条例が可決された。


原審は
本件協力費の支出は,合理性,必要性を欠くものであったところ,永年その支出が継続され,この間に支払われた金額は多額に及んでいる。Aは,その合理性,必要性の基礎となる事情について調査し,検討すべき義務を負っていたにもかかわらず,漫然と従前の経緯を踏襲して支出を行ったものであり,参加人らも,支出の違法性を基礎付ける事実関係を認識した上で,多額の利益を得たものであり,いずれも帰責性は大きい。本件議決の提案理由等についても的確な説明責任が果たされているとはいえない。

私もそう思いますね。昭和28年から延々と減額されながらも払われ続けてますよ。


これについて最高裁は
(1) 普通地方公共団体がその債権の放棄をするに当たって,その適否の実体的判断は,住民による直接の選挙を通じて選出された議員により構成される普通地方公共団体の議決機関である議会の裁量権に基本的に委ねられているものというべきである。・・・個々の事案ごとに,当該請求権の発生原因である財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響,当該議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響,住民訴訟の係属の有無及び経緯,事後の状況その他の諸般の事情を総合考慮して,これを放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であって上記の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるときは,その議決は違法となり,当該放棄は無効となるものと解するのが相当である。

参加人らは,本件協力費の支出の適否を判断する立場にはなく,従前と同様に市との間で協定を締結し,それに従って本件協力費を受領したにすぎないものである上,本件協力費の支出が合理性,必要性を欠くものであったことが明らかな状況であったといい難いことは上記のとおりである。そうすると,参加人らが受領した本件協力費の累積金額が相当高額に及ぶことを考慮しても,参加人らの帰責性が大きいということはできない。

以上の諸般の事情を総合考慮すれば,市が本件各請求権を放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であるとは認め難いというべきであり,本件議決が市議会の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできない。

納得いきませんね。これって法的手続きではそうかもしれませんが、実際にこれを利用して公金をばら撒く事が出来ますよね。しかも昭和28年から延々と支払い続けている事については言及なしですか?これは乱用だと思いますが。

裁判長裁判官 岡部喜代子 トンデモ
裁判官 山崎敏充 トンデモ
裁判官 戸倉三郎 トンデモ
裁判官 林 景一 トンデモ
裁判官 宮崎裕子 トンデモ

こういうのは実際に請求して返せないとなれば放棄することもあり得るでしょうが、最初から諦めるのはどうなんですか?