第2 被告国に対する国家賠償請求について
(2) 安衛法は,職場における労働者の安全と健康の確保等を目的として(1条),事業者は,労働者の健康障害の防止等のために必要な措置を講じなければならないものとしているのであって(22条等),事業者が講ずべき具体的措置を労働省令(平成11年法律第160号による改正後は厚生労働省令)に委任している(27条1項)。・・・安衛法は,労働者に健康障害を生ずるおそれのある物等について,人体に及ぼす作用,貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならないとしている(57条)ところ,この表示の記載方法についても,上記と同様に,できる限り速やかに,技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものとなるように指導監督すべきである。このことは,本件掲示義務規定に基づく掲示の記載方法に関する指導監督についても同様である。
要するにやることやらずにいたじゃないかと言っています。
(3)ア 建設業労働者のじん肺症発生件数が昭和40年代後半から急増し,その後も,建設業労働者のじん肺症及びじん肺合併症発生件数又は石綿関連疾患の発生件数が高い水準にあったことからも裏付けられる。
随分前から言われていたよね、何でやらんかったの?という感じでしょうか。
イ また,前記の事実関係等によれば,昭和33年3月頃には,石綿肺に関する医学的知見が確立し,昭和47年には,石綿粉じんにばく露することと肺がん及び中皮腫の発症との関連性並びに肺がん及び中皮腫が潜伏期間の長い遅発性の疾患であることが明らかとなっていた。
もはや未必の故意と言ってもいいくらいの放置です。
(4)イ 前記のとおり,昭和50年の安衛令及び安衛則の改正により,石綿等が健康障害を生ずるおそれのある物として,安衛法57条に基づく表示義務の対象となったところ,同条の定める表示事項の一つである「人体に及ぼす作用」は,その物の危険性が正確に伝わり,必要な手当てや治療が速やかに判明するように,症状や障害を可能な限り具体的に特定して記載すべきであると解され,抽象的に健康障害を生ずるおそれがある旨を記載するのでは足りないというべきである。
単に危険だというだけじゃ駄目だ、さっさと手を打つべきだったと言っています。
結論
(5)本件における以上の事情を総合すると,労働大臣は,石綿に係る規制を強化する昭和50年の改正後の特化則が一部を除き施行された同年10月1日には,安衛法に基づく規制権限を行使して,通達を発出するなどして,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督するとともに,安衛法に基づく省令制定権限を行使して,事業者に対し,屋内建設現場において上記各作業に労働者を従事させる場合に呼吸用保護具を使用させることを義務付けるべきであったのであり,同日以降,労働大臣が安衛法に基づく上記の各権限を行使しなかったことは,屋内建設現場における建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において,安衛法の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,著しく合理性を欠くものであって,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。
こういうところが法律家の傲慢さが見え隠れする文章で嫌なんですが、文章を切りましょうよ。しかも、「適用上違法」である、じゃなくて「要件を満たしている」とかそういう文章にしませんかね。これじゃ敗訴に見えます。判例は法律家のものだけじゃないんですよ。
裁判官全員一致の意見
第一小法廷判決
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
ああだこうだといってますが、昭和20年代から危険が言われ、40年代には科学的に危険と証明されたにもかかわらず、企業はそんな商品を作り続け作業員に対策をとれとも説明もろくにせず、国も放置していたという点からすれば、この判決は妥当だとは思います。
しかし、このどうしようもない文章は何とかならんもんですか。
さらにいうと、懲罰的な意味の賠償金を命令できないもんですか。
補足意見で、「ここまでの放置はないだろ。」の趣旨があってもよさそうです。
(2) 安衛法は,職場における労働者の安全と健康の確保等を目的として(1条),事業者は,労働者の健康障害の防止等のために必要な措置を講じなければならないものとしているのであって(22条等),事業者が講ずべき具体的措置を労働省令(平成11年法律第160号による改正後は厚生労働省令)に委任している(27条1項)。・・・安衛法は,労働者に健康障害を生ずるおそれのある物等について,人体に及ぼす作用,貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならないとしている(57条)ところ,この表示の記載方法についても,上記と同様に,できる限り速やかに,技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものとなるように指導監督すべきである。このことは,本件掲示義務規定に基づく掲示の記載方法に関する指導監督についても同様である。
要するにやることやらずにいたじゃないかと言っています。
(3)ア 建設業労働者のじん肺症発生件数が昭和40年代後半から急増し,その後も,建設業労働者のじん肺症及びじん肺合併症発生件数又は石綿関連疾患の発生件数が高い水準にあったことからも裏付けられる。
随分前から言われていたよね、何でやらんかったの?という感じでしょうか。
イ また,前記の事実関係等によれば,昭和33年3月頃には,石綿肺に関する医学的知見が確立し,昭和47年には,石綿粉じんにばく露することと肺がん及び中皮腫の発症との関連性並びに肺がん及び中皮腫が潜伏期間の長い遅発性の疾患であることが明らかとなっていた。
もはや未必の故意と言ってもいいくらいの放置です。
(4)イ 前記のとおり,昭和50年の安衛令及び安衛則の改正により,石綿等が健康障害を生ずるおそれのある物として,安衛法57条に基づく表示義務の対象となったところ,同条の定める表示事項の一つである「人体に及ぼす作用」は,その物の危険性が正確に伝わり,必要な手当てや治療が速やかに判明するように,症状や障害を可能な限り具体的に特定して記載すべきであると解され,抽象的に健康障害を生ずるおそれがある旨を記載するのでは足りないというべきである。
単に危険だというだけじゃ駄目だ、さっさと手を打つべきだったと言っています。
結論
(5)本件における以上の事情を総合すると,労働大臣は,石綿に係る規制を強化する昭和50年の改正後の特化則が一部を除き施行された同年10月1日には,安衛法に基づく規制権限を行使して,通達を発出するなどして,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督するとともに,安衛法に基づく省令制定権限を行使して,事業者に対し,屋内建設現場において上記各作業に労働者を従事させる場合に呼吸用保護具を使用させることを義務付けるべきであったのであり,同日以降,労働大臣が安衛法に基づく上記の各権限を行使しなかったことは,屋内建設現場における建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において,安衛法の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,著しく合理性を欠くものであって,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。
こういうところが法律家の傲慢さが見え隠れする文章で嫌なんですが、文章を切りましょうよ。しかも、「適用上違法」である、じゃなくて「要件を満たしている」とかそういう文章にしませんかね。これじゃ敗訴に見えます。判例は法律家のものだけじゃないんですよ。
裁判官全員一致の意見
第一小法廷判決
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
ああだこうだといってますが、昭和20年代から危険が言われ、40年代には科学的に危険と証明されたにもかかわらず、企業はそんな商品を作り続け作業員に対策をとれとも説明もろくにせず、国も放置していたという点からすれば、この判決は妥当だとは思います。
しかし、このどうしようもない文章は何とかならんもんですか。
さらにいうと、懲罰的な意味の賠償金を命令できないもんですか。
補足意見で、「ここまでの放置はないだろ。」の趣旨があってもよさそうです。