最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

臨時国会開催要求が遅れたのは国家賠償の対象ではない

2023-11-18 20:58:04 | 日記
令和4(行ツ)144  憲法53条違憲国家賠償等請求事件
令和5年9月12日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

 憲法53条後段の規定により国会の臨時会の召集を決定することの要求をした国会議員は、内閣による上記の決定の遅滞を理由として、国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることはできない

マスコミでも取り上げられなかったので、事実確認から見ていきます。

1 参議院の総議員の4分の1以上である72名の議員は、平成29年6月22日、憲法53条後段の規定により、内閣に対し、国会の臨時会の召集を決定することを要求した。・・同年9月22日、臨時会(第194回国会)を同月28日に召集することを決定した。同日、第194回国会が召集されたが、その冒頭で衆議院が解散され、参議院は同時に閉会となった。

①主位的に、上告人が次に参議院の総議員の4分の1以上の議員の一人として国会法3条所定の手続により臨時会召集決定の要求をした場合に、内閣において、20日以内に臨時会が召集されるよう臨時会召集決定をする義務を負うことの確認を、予備的に、上記場合に、上告人が20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの確認を求める
②内閣が上記1の要求から92日後まで臨時会召集決定をしなかったことが違憲、違法であり、これにより、上告人が自らの国会議員としての権利を行使することができなかったなどとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求める


確かに、4分の1以上の要求があったにもかかわらず、20日どろか3か月後に臨時国会、挙句に解散となれば大いにもん問題ありますね。このときは安倍首相のときでした。
これについて最高裁は、
国会と内閣との間における権限の分配という観点から、内閣が臨時会召集決定をすることとしつつ、これがされない場合においても、国会の会期を開始して国会による国政の根幹
に関わる広範な権能の行使を可能とするため、各議院を組織する一定数以上の議員に対して臨時会召集要求をする権限を付与するとともに、この臨時会召集要求がされた場合には、内閣が臨時会召集決定をする義務を負うこととしたものと解されるのであって、個々の国会議員の臨時会召集要求に係る権利又は利益を保障したものとは解されない・・・・同条後段の規定上、臨時会の召集について各議院の少数派の議員の意思が反映され得ることを踏まえても、同条後段が、個々の国会議員に対し、召集後の臨時会において議員活動をすることができるようにするために臨時会召集要求に係る権利又は利益を保障したものとは解されず。


国家賠償そのものが個人の権利を侵害した場合にしか対象にならないということでしょうか。そもそも裁判所は政治に口出ししてはいけないというのが、原則では?そっちの方が問題のような気がしますけど。

同条後段の規定上、臨時会の召集について各議院の少数派の議員の意思が反映され得ることを踏まえても、同条後段が、個々の国会議員に対し、召集後の臨時会において議員活動をすることができるようにするために臨時会召集要求に係る権利又は利益を保障したものとは解されず

ここではあくまでも告解賠償の対象ではないと言っています。

裁判官宇賀克也の反対意見
(1)国会議員にとって、国会において国民の代表として質問、議案の発議、表決等を行うことは、最も重要な活動といえ、憲法上は召集されるはずであった臨時会で上記のような議員活動をすることができないことは極めて重大な不利益であり、事後的な損害賠償によって回復できるものではないので、憲法53条後段の規定による臨時会召集要求があったにもかかわらず臨時会召集決定がされないという事態を事前に防止するための法的手段が用意されていてしかるべきである。

ちょっとわかりませんね。国会議員は国民の負託を得て国会議員を勤めているのであって、国会議員の不利益は有権者の不利益ですよね。でも、それは明確な不利益というか具体性についてはかなりあいまいで、どうやってその額を算定しろと?

記録によれば、憲法53条後段の規定による臨時会召集要求のうち20日以内に召集されたのは40回中5回しかなく、かつ、過去3年間をみても、臨時会召集決定は臨時会召集要求から20日を大きく超えてから行われている。このような事態が生じているのは、臨時会召集要求がされた場合、内閣として臨時会で審議すべき事項等も勘案して、召集時期を決定する裁量があるという認識があるからと思われ、そうである以上、令和5年ないし令和6年に臨時会召集要求がされても、20日以内に臨時会が召集されない蓋然性は相当に高いと思われる。したがって、即時確定の利益も認められると考えられる。

確かに、こんなに守られていない法律では、法治国家としては問題があります。それには賛成しますが・・・

2 国家賠償請求について
国家賠償法1条1項は、①国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員による作為又は不作為であること、②職務関連性があること、③違法性があること、④故意又は過失があること、⑤他人に損害が生じていることを国家賠償責任の要件として規定している。そのほか、明文の規定はないが、違法な作為又は不作為と損害の間に相当因果関係がなければならず、


これはその通りですね。

本件では、①及び②の要件を満たしていることは明らかと思われる。③については、本件においては、憲法53条後段の規定による臨時会召集要求から98日後に臨時会が召集された上、召集された臨時会の冒頭で衆議院が解散され、臨時会での審議は全く行われなかったので、臨時会召集要求は拒否されたとみざるを得ない。

(3)この損害が法的保護に値するものといえるかである。この点についても、結論としていえば、法的保護に値すると考えてよいと思われる。当審は、既に最高裁平成30年(行ヒ)第417号令和2年11月25日大法廷判決・民集74巻8号2229頁において、個々の議員が、議事に参与して表決に加わることを議会の機関としての活動の問題としてではなく、個々の議員の権利行使の問題として捉え、出席停止処分取消訴訟が法律上の争訟に当たることを前提として、司法審査の対象となるとしたのである。

これはあくまでも議員個人としての権利に関わる話ですからね。今回の件に該当するかというと、要求が期限通りに実施されなかったことですから、対象外とするのはそうなるでしょう。

裁判長裁判官 長嶺安政
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
裁判官 渡 惠理子
裁判官 今崎幸彦

何か今ひとつですよね。裁判所としては期限内にやることやれよと言いたかったのでしょうが、これは政治的の話であり、裁判所が判断すべきではないと突き返すべき案件だと思います。