令和4(受)1780 退職慰労金等請求事件
令和6年7月8日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 福岡高等裁判所 宮崎支部
退任取締役の退職慰労金について株主総会決議による委任を受けた取締役会がした、内規の定める基準額から大幅に減額した額を支給する旨の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないとされた事例
朝日新聞の報道です
テレビ宮崎の退職慰労金、85%減らされた前社長が逆転敗訴 最高裁
退職慰労金を不当に減らされたとして、テレビ宮崎(宮崎市)の渡辺道徳・前社長が、同社側に約2億円の支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は8日、前社長の請求を退ける判決を言い渡した。同社側に全額の支払いを命じた一、二審判決を破棄し、前社長の逆転敗訴が確定した。
同社は退職慰労金に関する内規で「在任中に特に重大な損害を与えた場合は減額できる」と定める。同社の取締役会は2018年2月、渡辺氏が在任中に出張宿泊費やCSR(企業の社会的責任)事業などで不適切な支出を繰り返したとして、慰労金を85%減額し、5700万円を支払った。
払ったんですね。全額取り返すどころか、むしろ背任で刑事告発すべき案件かと思いますが。
訴えの内容です。
1 人株式会社テレビ宮崎の代表取締役を退任した被上告人が、上告人会社の株主総会から被上告人の退職慰労金について決定することの委任を受けた取締役会において、代表取締役である上告人Y1の故意又は過失により上記委任の範囲を超える減額をした退職慰労金を支給する旨の決議がされたなどと主張して、上告人Y1に対しては民法709条等に基づき、上告人会社に対しては会社法350条等に基づき、損害賠償等を求める事案である。本件では、上記の取締役会決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか否かなどが争われている。
続いて事実確認です。
(1)上告人会社においては、退任取締役の退職慰労金の算定基準等を定めた取締役退任慰労金内規が存在する。・・・退任取締役のうち、「在任中特に重大な損害を与えたもの」に対し、基準額を減額することができる旨の定めがあった。なお、本件内規には、減額の範囲ないし限度についての定めは置かれていない。
訴えた元代表取締役は、退職慰労金を貰う事と損害賠償は別物だと思っているようです。
(2)ら平成27年までの間、上告人会社から、社内規程所定の上限額を超過する額の宿泊費等を受領した。同年、上告人会社について実施された税務調査においてこのことが発覚し、当該超過分合計約1610万円が被上告人の報酬と認定され、被上告人は、上告人会社が納付した上記の報酬認定に係る源泉徴収税に相当する額を負担することになった。被上告人は、平成28年7月、上告人会社の取締役会の委任を受けた代表取締役として自らの平成28年度の報酬を決定するに当たり、これを前年度と比べて2308万円増額し、その後は退任するまで増額された報酬を受領した。
せこいですね。家賃補助?のちょろまかした上に、報酬を増額ですか?
交際費として、上記の額を大幅に超過する額(当該超過分は合計約1億0079万円)を上告人会社に支出させた。さらに、被上告人は、上告人会社の海外旅費規程を改定させ、平成24年から平成28年までの間、被上告人の出張に伴う支度金として、上記の改定前の海外旅費規程によるよりも約545万円多い額を上告人会社に支出させるなどした
思いっきり背任じゃないですか。刑事事件にならなかったのでしょうか。というか、退職まで誰も気づかない?公認会計士はこれまで何をやってたんでしょうか。事件は税務調査で分かったようです。
(3)被上告人は、平成29年5月に開催された上告人会社の取締役会において、体調不良を理由に、同年6月に開催される定時株主総会の終結時をもって代表取締役及び取締役を辞任する意向を表明した。
(4)平成29年6月16日に開催された上告人会社の定時株主総会において、被上告人の退職慰労金について、本件内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の決議がされた。
平成29年5月26日の宮崎日日新聞報道があったようなので、その直後ですね。ということは背任の可能性を取締役たちは知っていたことになります。しかもごめんなさいではなく、体調不良で逃亡です。
(5)被上告人と利害関係のない弁護士3名及び公認会計士1名並びに上告人会社の常勤監査役1名で構成される調査委員会が設置され、本件調査委員会により被上告人の退職慰労金に関する事実関係の調査等が実施された。
ア 本件行為1は、特別背任罪の成立要件の充足を否定しきれない悪質な行為である。・・・、その支出のうち約2億0558万円は明らかに過剰なものであった。
イ 上告人会社の取締役会は、本件行為1につき告訴をすると判断した場合、被上告人に退職慰労金を支給しない旨の決議をすべきである。・・・そして、被上告人に退職慰労金を支給する場合、被上告人に係る基準額から上記アの財産上の損害の額の全部又は相当部分を控除して上記退職慰労金の額を算出する方法を採用することには合理性がある。
この金額だと刑務所に入るのもおかしくない金額です。示談があっても退職金全額不支給どころか、刑事告訴すべきですね。甘やかしすぎですよ。
(6)被上告人の退職慰労金に係る基準額として算出した3億7720万円から上記 アの約3億5551万円の約90%相当額を控除した5700万円を退職慰労金として支給するのが相当である旨の上告人Y1の提案が支持され、被上告人に対して上記の額の退職慰労金を支給する旨の決議がされた。
第三者委員会であってもノーギャラってことはあり得ませんからね。なんだかんだ言って1000万ぐらいはかかっていると思われます。
最高裁は次のように判断しました。
(1)上告人会社の株主総会が退任取締役の退職慰労金について本件内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の決議をした場合、取締役会は、退任取締役が本件減額規定にいう「在任中特に重大な損害を与えたもの」に当たるか否か、これに当たる場合に減額をした結果として退職慰労金の額をいくらにするかの点について判断する必要があるところ、上記の本件減額規定の趣旨に鑑みれば、取締役会は、取締役の職務の執行を監督する見地から、当該退任取締役が上告人会社に特に重大な損害を与えたという評価の基礎となった行為の内容や性質、当該行為によって上告人会社が受けた影響、当該退任取締役の上告人会社における地位等の事情を総合考慮して、上記の点についての判断をすべきである。
いつもの意味不明なまで長い文章です。小学校で勉強し直せと言いたくなりますな。
1 退職慰労金は取締役会で一任する旨決議されている
2 取締役会は、取締役の職務の執行を監督する立場にある
この2つを根拠に判断すべきとしました。
取締役会は、上記の点について判断するに当たり広い裁量権を有するというべきであり、取締役会の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということができるのは、この判断が株主総会の委任の趣旨に照らして不合理である場合に限られると解するのが相当である
広い裁量権?当然の範囲だと思いますけどね。
(2)前記事実関係によれば、上告人会社の取締役会は、被上告人が代表取締役在任中に本件各行為をしたことを考慮して、本件取締役会決議をしたものである。
上告人会社に損害を与えるものであったか否かにかかわらず、被上告人が本件減額規定にいう「在任中特に重大な損害を与えたもの」に当たるとして減額をし、その結果として被上告人の退職慰労金の額を5700万円とした取締役会の判断が株主総会の委任の趣旨に照らして不合理であるということはできない。
全員一致の意見
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 安浪亮介
裁判官 岡 正晶
裁判官 堺 徹
裁判官 宮川美津子
全員まとも。
問題はこの会社です、刑事事件にしましょうよ。主要株主は以下の通りです。
関西テレビ放送株式会社(19.5%)
株式会社読売新聞グループ本社(17.2%)
株式会社フジ・メディア・ホールディングス(9.9%)
株式会社宮崎日日新聞社(6.6%)
放送局のコンプラはどうなってるんでしょうね。
令和6年7月8日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 福岡高等裁判所 宮崎支部
退任取締役の退職慰労金について株主総会決議による委任を受けた取締役会がした、内規の定める基準額から大幅に減額した額を支給する旨の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないとされた事例
朝日新聞の報道です
テレビ宮崎の退職慰労金、85%減らされた前社長が逆転敗訴 最高裁
退職慰労金を不当に減らされたとして、テレビ宮崎(宮崎市)の渡辺道徳・前社長が、同社側に約2億円の支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は8日、前社長の請求を退ける判決を言い渡した。同社側に全額の支払いを命じた一、二審判決を破棄し、前社長の逆転敗訴が確定した。
同社は退職慰労金に関する内規で「在任中に特に重大な損害を与えた場合は減額できる」と定める。同社の取締役会は2018年2月、渡辺氏が在任中に出張宿泊費やCSR(企業の社会的責任)事業などで不適切な支出を繰り返したとして、慰労金を85%減額し、5700万円を支払った。
払ったんですね。全額取り返すどころか、むしろ背任で刑事告発すべき案件かと思いますが。
訴えの内容です。
1 人株式会社テレビ宮崎の代表取締役を退任した被上告人が、上告人会社の株主総会から被上告人の退職慰労金について決定することの委任を受けた取締役会において、代表取締役である上告人Y1の故意又は過失により上記委任の範囲を超える減額をした退職慰労金を支給する旨の決議がされたなどと主張して、上告人Y1に対しては民法709条等に基づき、上告人会社に対しては会社法350条等に基づき、損害賠償等を求める事案である。本件では、上記の取締役会決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか否かなどが争われている。
続いて事実確認です。
(1)上告人会社においては、退任取締役の退職慰労金の算定基準等を定めた取締役退任慰労金内規が存在する。・・・退任取締役のうち、「在任中特に重大な損害を与えたもの」に対し、基準額を減額することができる旨の定めがあった。なお、本件内規には、減額の範囲ないし限度についての定めは置かれていない。
訴えた元代表取締役は、退職慰労金を貰う事と損害賠償は別物だと思っているようです。
(2)ら平成27年までの間、上告人会社から、社内規程所定の上限額を超過する額の宿泊費等を受領した。同年、上告人会社について実施された税務調査においてこのことが発覚し、当該超過分合計約1610万円が被上告人の報酬と認定され、被上告人は、上告人会社が納付した上記の報酬認定に係る源泉徴収税に相当する額を負担することになった。被上告人は、平成28年7月、上告人会社の取締役会の委任を受けた代表取締役として自らの平成28年度の報酬を決定するに当たり、これを前年度と比べて2308万円増額し、その後は退任するまで増額された報酬を受領した。
せこいですね。家賃補助?のちょろまかした上に、報酬を増額ですか?
交際費として、上記の額を大幅に超過する額(当該超過分は合計約1億0079万円)を上告人会社に支出させた。さらに、被上告人は、上告人会社の海外旅費規程を改定させ、平成24年から平成28年までの間、被上告人の出張に伴う支度金として、上記の改定前の海外旅費規程によるよりも約545万円多い額を上告人会社に支出させるなどした
思いっきり背任じゃないですか。刑事事件にならなかったのでしょうか。というか、退職まで誰も気づかない?公認会計士はこれまで何をやってたんでしょうか。事件は税務調査で分かったようです。
(3)被上告人は、平成29年5月に開催された上告人会社の取締役会において、体調不良を理由に、同年6月に開催される定時株主総会の終結時をもって代表取締役及び取締役を辞任する意向を表明した。
(4)平成29年6月16日に開催された上告人会社の定時株主総会において、被上告人の退職慰労金について、本件内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の決議がされた。
平成29年5月26日の宮崎日日新聞報道があったようなので、その直後ですね。ということは背任の可能性を取締役たちは知っていたことになります。しかもごめんなさいではなく、体調不良で逃亡です。
(5)被上告人と利害関係のない弁護士3名及び公認会計士1名並びに上告人会社の常勤監査役1名で構成される調査委員会が設置され、本件調査委員会により被上告人の退職慰労金に関する事実関係の調査等が実施された。
ア 本件行為1は、特別背任罪の成立要件の充足を否定しきれない悪質な行為である。・・・、その支出のうち約2億0558万円は明らかに過剰なものであった。
イ 上告人会社の取締役会は、本件行為1につき告訴をすると判断した場合、被上告人に退職慰労金を支給しない旨の決議をすべきである。・・・そして、被上告人に退職慰労金を支給する場合、被上告人に係る基準額から上記アの財産上の損害の額の全部又は相当部分を控除して上記退職慰労金の額を算出する方法を採用することには合理性がある。
この金額だと刑務所に入るのもおかしくない金額です。示談があっても退職金全額不支給どころか、刑事告訴すべきですね。甘やかしすぎですよ。
(6)被上告人の退職慰労金に係る基準額として算出した3億7720万円から上記 アの約3億5551万円の約90%相当額を控除した5700万円を退職慰労金として支給するのが相当である旨の上告人Y1の提案が支持され、被上告人に対して上記の額の退職慰労金を支給する旨の決議がされた。
第三者委員会であってもノーギャラってことはあり得ませんからね。なんだかんだ言って1000万ぐらいはかかっていると思われます。
最高裁は次のように判断しました。
(1)上告人会社の株主総会が退任取締役の退職慰労金について本件内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の決議をした場合、取締役会は、退任取締役が本件減額規定にいう「在任中特に重大な損害を与えたもの」に当たるか否か、これに当たる場合に減額をした結果として退職慰労金の額をいくらにするかの点について判断する必要があるところ、上記の本件減額規定の趣旨に鑑みれば、取締役会は、取締役の職務の執行を監督する見地から、当該退任取締役が上告人会社に特に重大な損害を与えたという評価の基礎となった行為の内容や性質、当該行為によって上告人会社が受けた影響、当該退任取締役の上告人会社における地位等の事情を総合考慮して、上記の点についての判断をすべきである。
いつもの意味不明なまで長い文章です。小学校で勉強し直せと言いたくなりますな。
1 退職慰労金は取締役会で一任する旨決議されている
2 取締役会は、取締役の職務の執行を監督する立場にある
この2つを根拠に判断すべきとしました。
取締役会は、上記の点について判断するに当たり広い裁量権を有するというべきであり、取締役会の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということができるのは、この判断が株主総会の委任の趣旨に照らして不合理である場合に限られると解するのが相当である
広い裁量権?当然の範囲だと思いますけどね。
(2)前記事実関係によれば、上告人会社の取締役会は、被上告人が代表取締役在任中に本件各行為をしたことを考慮して、本件取締役会決議をしたものである。
上告人会社に損害を与えるものであったか否かにかかわらず、被上告人が本件減額規定にいう「在任中特に重大な損害を与えたもの」に当たるとして減額をし、その結果として被上告人の退職慰労金の額を5700万円とした取締役会の判断が株主総会の委任の趣旨に照らして不合理であるということはできない。
全員一致の意見
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 安浪亮介
裁判官 岡 正晶
裁判官 堺 徹
裁判官 宮川美津子
全員まとも。
問題はこの会社です、刑事事件にしましょうよ。主要株主は以下の通りです。
関西テレビ放送株式会社(19.5%)
株式会社読売新聞グループ本社(17.2%)
株式会社フジ・メディア・ホールディングス(9.9%)
株式会社宮崎日日新聞社(6.6%)
放送局のコンプラはどうなってるんでしょうね。