ジュゴン保護キャンペーンセンターの意見書を作成しました。
少し長いですが、どうか読んでください。
(写真提供 南山大学教授 目崎茂和)
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普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書への意見書
ジュゴン保護キャンペーンセンター
事務局長 蜷川義章
2007年8月より那覇防衛施設局によって「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書」が広告縦覧されました。この方法書が対象としている「普天間代替施設建設事業」は沖縄ジュゴンの生息海域の中心で計画されている大規模な埋め立てを伴う米軍基地建設です。
一方沖縄ジュゴンは世界の北限のジュゴンで、個体数は50頭未満と推定されます。2004年国際自然保護連合(IUCN)の第3回世界自然保護会議(バンコク)は沖縄ジュゴンの保護計画の作成と保護区の設置、ゼロオプション(計画中止)を含む国際水準での環境アセスメントの実施を日本政府に勧告しました。そして今年の8月3日に環境省は沖縄ジュゴンを「レッドリスト」の最も高い絶滅危惧1A類に分類しました。「レッドリスト」への分類を踏まえ、ジュゴンを種の保存法の指定種にし、具体的な保護計画を策定し保護区を設置することが求められています。
したがって、今回の「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書」にあっては、単に基地建設の環境影響の調査方法を記すだけではまったく不十分です。ジュゴンとジュゴンの生きる環境すべての積極的な保全方法および基地建設による環境影響と回避の可能性に関して、あらゆる角度からの検討が必要です。
しかし、今回の方法書はまったく落第です。
まずジュゴンが絶滅危惧種であるとの記述がありません。積極的なジュゴン保護計画が必要という基本認識がないのです。
建設予定地の辺野古崎一帯は、豊かなサンゴ礁生態系を形成している場所で、海草藻場が発達し、海草をエサとしているジュゴンの目撃例もこのあたりに集中しています。埋め立てにより、キャンプシュワブ前浅瀬の良好な海草藻場が失われますが、更に潮流の変化等で、広くこの海域の海草藻場、ジュゴンなどの生物が悪影響を受けることは明らかです。
これらの環境影響に対して、方法書は「4.4 評価の手法の選定(1)影響の回避・低減について」で「対象事業の実施により選定項目に係る環境要素に及ぶおそれのある影響が、実施可能な範囲でできる限り回避され、又は低減されており、必要に応じその他の方法により環境の保全についての配慮が適切になされているかについて検討します」と記すのみです。影響回避の選択としての「ゼロオプション(計画中止)」の記載もありません。ちなみに全体で約300ページの方法書のうち環境影響の回避・低減に関する記述は1ページのみです。
さらに今回の方法書がジュゴン保護をまじめに考えていない事例をあげます。
まず方法書にはジュゴンの調査期間が書かれていません。ジュゴンの出産間隔(3~7年)を考えると、10年以上の長期の調査が必要です。また現在アセス法に反して行われている事前調査で、海草藻場への来遊確認をする機器(パッシブソナー、水中カメラ)を数十箇所に設置しています。しかしこの方法は沖縄のように個体数の少ない地域での有効性は確かめられていない上に、大型の機器の設置は、ジュゴンが水路を利用しにくくし、海草藻場に入れない可能性すらあります。ジュゴンに圧力を加え、有効性も検証されていない調査は全く非科学的です。このような非科学的な調査を地元住民や環境団体などのい反対を押し切って進めるのはなぜでしょうか。「ジュゴンの調査を行なった」という既成事実のみを積み上げようとしているとしか思えません。
このように今回の方法書はジュゴン保護の基本認識を全く欠き、環境アセスメントを「基地建設のためのアリバイづくり」に形骸化するものです。直ちに撤回を求めます。
辺野古・大浦湾一帯の海は多種多様な生きものを育み、地元の人々は海とともに生きてきました。IUCN(国際自然保護連合)の2度にわたるジュゴン保護勧告からもわかるように、辺野古は世界的にも注目されています。新たな基地建設はジュゴンを絶滅に追いやり、サンゴ礁生態系を破壊し、地元住民の生活を破壊します。いかなる「実施可能な範囲」の影響回避策をとったとしても、その結果は変わりません。「ゼロオプション」しか選択の余地はないのです。
環境アセス法に反する事前調査の即時中止と、辺野古崎における普天間代替施設建設計画の撤回を求めます。
少し長いですが、どうか読んでください。
(写真提供 南山大学教授 目崎茂和)
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普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書への意見書
ジュゴン保護キャンペーンセンター
事務局長 蜷川義章
2007年8月より那覇防衛施設局によって「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書」が広告縦覧されました。この方法書が対象としている「普天間代替施設建設事業」は沖縄ジュゴンの生息海域の中心で計画されている大規模な埋め立てを伴う米軍基地建設です。
一方沖縄ジュゴンは世界の北限のジュゴンで、個体数は50頭未満と推定されます。2004年国際自然保護連合(IUCN)の第3回世界自然保護会議(バンコク)は沖縄ジュゴンの保護計画の作成と保護区の設置、ゼロオプション(計画中止)を含む国際水準での環境アセスメントの実施を日本政府に勧告しました。そして今年の8月3日に環境省は沖縄ジュゴンを「レッドリスト」の最も高い絶滅危惧1A類に分類しました。「レッドリスト」への分類を踏まえ、ジュゴンを種の保存法の指定種にし、具体的な保護計画を策定し保護区を設置することが求められています。
したがって、今回の「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書」にあっては、単に基地建設の環境影響の調査方法を記すだけではまったく不十分です。ジュゴンとジュゴンの生きる環境すべての積極的な保全方法および基地建設による環境影響と回避の可能性に関して、あらゆる角度からの検討が必要です。
しかし、今回の方法書はまったく落第です。
まずジュゴンが絶滅危惧種であるとの記述がありません。積極的なジュゴン保護計画が必要という基本認識がないのです。
建設予定地の辺野古崎一帯は、豊かなサンゴ礁生態系を形成している場所で、海草藻場が発達し、海草をエサとしているジュゴンの目撃例もこのあたりに集中しています。埋め立てにより、キャンプシュワブ前浅瀬の良好な海草藻場が失われますが、更に潮流の変化等で、広くこの海域の海草藻場、ジュゴンなどの生物が悪影響を受けることは明らかです。
これらの環境影響に対して、方法書は「4.4 評価の手法の選定(1)影響の回避・低減について」で「対象事業の実施により選定項目に係る環境要素に及ぶおそれのある影響が、実施可能な範囲でできる限り回避され、又は低減されており、必要に応じその他の方法により環境の保全についての配慮が適切になされているかについて検討します」と記すのみです。影響回避の選択としての「ゼロオプション(計画中止)」の記載もありません。ちなみに全体で約300ページの方法書のうち環境影響の回避・低減に関する記述は1ページのみです。
さらに今回の方法書がジュゴン保護をまじめに考えていない事例をあげます。
まず方法書にはジュゴンの調査期間が書かれていません。ジュゴンの出産間隔(3~7年)を考えると、10年以上の長期の調査が必要です。また現在アセス法に反して行われている事前調査で、海草藻場への来遊確認をする機器(パッシブソナー、水中カメラ)を数十箇所に設置しています。しかしこの方法は沖縄のように個体数の少ない地域での有効性は確かめられていない上に、大型の機器の設置は、ジュゴンが水路を利用しにくくし、海草藻場に入れない可能性すらあります。ジュゴンに圧力を加え、有効性も検証されていない調査は全く非科学的です。このような非科学的な調査を地元住民や環境団体などのい反対を押し切って進めるのはなぜでしょうか。「ジュゴンの調査を行なった」という既成事実のみを積み上げようとしているとしか思えません。
このように今回の方法書はジュゴン保護の基本認識を全く欠き、環境アセスメントを「基地建設のためのアリバイづくり」に形骸化するものです。直ちに撤回を求めます。
辺野古・大浦湾一帯の海は多種多様な生きものを育み、地元の人々は海とともに生きてきました。IUCN(国際自然保護連合)の2度にわたるジュゴン保護勧告からもわかるように、辺野古は世界的にも注目されています。新たな基地建設はジュゴンを絶滅に追いやり、サンゴ礁生態系を破壊し、地元住民の生活を破壊します。いかなる「実施可能な範囲」の影響回避策をとったとしても、その結果は変わりません。「ゼロオプション」しか選択の余地はないのです。
環境アセス法に反する事前調査の即時中止と、辺野古崎における普天間代替施設建設計画の撤回を求めます。
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