できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

大阪府PT試案が意味するもの

2008-05-14 11:34:46 | ニュース

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805130016.html

http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/080514/20080514003.html

http://mainichi.jp/kansai/news/20080513ddf041010012000c.html

そのうち、新聞社各社の記事掲載が終わるかもしれないけど、一応、リンクだけははっておく。

昨日、大阪府庁の周辺で、府下の障害者団体によるPT試案への抗議集会や、府庁を取り囲んでのシュプレヒコールなどがあったそうである。そのことは、上にリンクをはった朝日新聞・毎日新聞・大阪日日新聞のネット配信記事からも明らかである。

リンクが先々切れてもネット上に記録を残したいので、3紙の記事の内容を私なりに要約・整理してまとめておくと、次のとおりになる。まず、「知事に届けよう! 障害者や家族の想い・大阪ネットワーク」という団体が主催して、約3000人が集まった、ということ。その集まった人びとの多くは、就労支援やグループホームなどへの府の支援事業の縮小・廃止案と、障害のある人たちへの医療費負担の増加を求める提案への抗議の意思表示のために来た、ということ。そして、集会参加者からは、「御堂筋のライトアップよりも障害者の暮らしが明るくなるように」「障害のある子どもたちの笑顔を奪わないで」とか、このPT案に対して「障害者の生活基盤が奪われる切実な問題だ」という声がでている、ということ。だいたい、3紙の記事からわかることは、こんなところである。

これを読んで思い出したのは、以前もこのブログで引用した「福祉徴用の時代」という一文である。これを書いた人は、大阪市の市政改革にもいろいろかかわり、今度は大阪府の特別顧問として府政改革にもかかわろうとしている。この人は、自らのブログに読売新聞の取材にこたえた記事を掲載しているが、そこには、「補助金を当てにしている団体は、削られれば困ると言いますが、冷静に見て、そんなに気の毒な状況でしょうか。医療費助成など他の都道府県にないサービスも多い。財政危機なのだから、事業の見直しについて、一律に「弱者いじめ」と批判するのは無理があります」などという文章もある。

正直なところ、行財政改革のほかの部分はさておき、教育や福祉に関する改革についていえば、私はこの人の考えには、ちっとも納得しない。

はっきりいえば、この人の考えは、今まで社会的に不利益を被りやすい層の人びとに対して、国としても不十分な施策しか行なわず、他の都道府県なども不十分な施策しかやってこなかったが、その線を「あたり前」「妥当」とした上で、「大阪府や大阪市は今までやりすぎたのだから、財政難だし、他の都道府県並み、国のレベル並みの線に至るまで、そんな部分はやめていい」といっているわけである。

他の都道府県にだって、「もっと教育や福祉に関する施策の充実を」という声をあげてきた当事者はいるわけだし、国レベルで考えれば、その施策の不十分さを指摘する声はたくさんある。むしろ、日本全体で「底上げ」をはからなければならない課題も多々あって、大阪府・大阪市の行政が自腹を切りながら、当事者からの声を受け止めつつ、教育・福祉施策について先行的にやってきたラインに、国や他の都道府県の施策をそろえるべきだ、という考え方だってできるわけである。

結局、この人の理屈は、社会的に不利益を被りやすい層への支援施策を、「財政危機だから」という理由だけで、「全国一律に低レベルにもっていく」ということ以外のなにものでもないように思う。

しかし、昨日あたりから報道されているように、たとえば大阪府の財政再建策として、府議会議員の報酬や定数を削減するという案だってある。前からこのブログに書いているように、この財政危機のなか、何から予算を削減するのか、何から事業を縮小するのか、どういう施設を統廃合するのかといったことのなかに、行政トップ層の価値意識が現れる。

とすれば、今出されている財政再建案は、やはり、「他の都道府県でやっているような教育・福祉サービスのレベルにまで大阪府・大阪市の事業は下げてよし。全国一律に低レベルでよし」という価値意識にもとづいている、と言われても、しかたがないのではないだろうか。

そして、「御堂筋キラキラ計画」というのか、御堂筋のイルミネーションにかける約20億円の予算があれば、昨日、府庁の周辺で抗議集会を行なった諸団体への助成金のかなりの部分がまかなえると思うのは、私だけだろうか。そこに、やはり、今の大阪府の財政再建案がどのような価値意識にもとづいているのかが、顕著に現れているように思う。

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