できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

2166冊目:二松啓紀『移民たちの「満州」 満蒙開拓団の虚と実』

2015-09-14 23:37:30 | 本と雑誌

2166冊目はこの本。

二松啓紀『移民たちの「満州」 満蒙開拓団の虚と実』(平凡社新書、2015年)

先月読んだ本の締めくくりはこの本。

かつて京都府内から満蒙開拓団として送り出された人々のことを連載記事に書いた新聞記者が、その連載終了後も資料を読み直したり、取材を積み重ねて、新たに書き下ろした本。なかなか、読み応えがあります。

それとともに・・・・。日本国内の農村の諸問題の「解決」策として、日本各地の農村から旧・満州各地に送り出された数多くの人々。その旧・満州各地では、地元の中国人らを追い出したり、破格に安く買い上げた農地に入植し、作業に従事することになるが・・・。今度はソ連参戦後、ソ連軍や中国人らの攻撃にさらされ、身ぐるみはがされる形で帰国したり、旧・満州で徴兵されてソ連軍とたたかい、シベリアに抑留される人々も出る。そして日本に帰国後も苦難の生活を歩まざるを得なかった人々も多い。これが日本の植民地政策の実情だったのだ・・・ということも、この満蒙開拓団に関する著者の研究からはわかります。

移民たちの「満州」: 満蒙開拓団の虚と実 (平凡社新書)


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2165冊目:保阪正康『戦場体験者 沈黙の記録』

2015-09-14 23:25:31 | 本と雑誌

2165冊目はこの本。

保阪正康『戦場体験者 沈黙の記録』(筑摩書房、2015年)

「戦友会」はそこでしか兵士たちが過酷な戦場体験(自らの直面した命の危険性と、自ら他者の命を奪うことの罪悪感の両方)を語ることができなかった場であり、また、そこでしか語られないことで、戦場体験は社会全体に広まることなく封印された側面がある。

これゆえ、たとえば程度の差こそあれ、日中戦争当時に中国で残虐な掃討戦(治安戦)に参加した兵士の体験談が残っているのに、それを「なかった」ことのように語る人々がいること。また、特攻機でアメリカ海軍の艦船に攻撃をかけたパイロットのなかには、海軍上層部への批判を突入直前に語った者もいるのに、それが「なかった」ことのようにされていること。こうしたことを、本書の著者は問題視している。

さらに本書では、最も過酷な戦場に居て生還した兵士たちほど記録や語りを出しづらく、むしろ大本営参謀や上級司令部勤務の将校など、後方に居た者ほど敗戦直後から記録や語りを残し始めたことも指摘している。そういう人々の記録や語りには、当然、失敗した作戦等々に対する自己弁護もまじっていることであろう。

なお、この本の第2章(日中戦争の実態を伝える)、第3章(元戦犯たちの苦悩)の内容は、野田正彰『戦争と罪責』と切り口が若干異なるが、中身はかなりのところで重なっている。あと、戦地の「慰安所」の設置についても、軍医や衛生兵などの記録から、地域差はあるにせよ「ほぼ一般的にはこのような形で、現地の業者などを介在させながら、軍として兵士の性の管理の必要上、このように慰安所を設置したのではないか」という例を出している。

戦場体験者 沈黙の記録 (単行本)


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2164冊目:野田正彰『戦争と罪責』

2015-09-14 23:15:33 | 本と雑誌

2164冊目はこの本。

野田正彰『戦争と罪責』(岩波書店、1998年)

かなり古い本なのだが、この本も先月読んだ本の1冊。

日中戦争での「加害」行為に関する兵士・将校の手記等を手がかりにして、旧日本軍の加害性を認識して罪責を自覚に至るプロセスについて考察したもの。また、日中戦争中の軍医の記録などから、戦場での加害行為を忌避し、飲食ができなくなるほど心身が追いつめられた「戦場栄養失調」の人々の存在を明らかにしている。

戦争と罪責


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2163冊目:笠原十九司『日本軍の治安戦』

2015-09-14 23:07:36 | 本と雑誌

2163冊目はこの本。

笠原十九司『日本軍の治安戦 日中戦争の実相』(岩波書店、2010年)

この本も先月読んだ本の1冊。こちらは日中戦争において「治安戦」と称して行った作戦の実情について、日中双方の記録をつきあわせて実相を明らかにしようとしたもの。八路軍など、中国共産党軍の浸透に対して、いわゆる「三光」作戦として行われた日本軍の作戦がこの「治安戦」でもある。占領地の治安維持のために徹底した掃討戦を日本軍は行うのだが、その渦中で民間人を殺害したり、あるいは物資の略奪等々を行って、ますます日本軍憎しの心情を中国人に与え、八路軍に協力的にさせてしまっていく・・・。このプロセスはおそらく、かつてはベトナムに、今はアフガニスタンやイスラムの諸地域に攻め込んだアメリカ軍にもあてはまるのではなかろうか。

日本軍の治安戦――日中戦争の実相 (シリーズ 戦争の経験を問う)


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2162冊目:香月泰男『私のシベリヤ 香月泰男文集』

2015-09-14 20:27:02 | 本と雑誌

2162冊目はこの本。

香月泰男『私のシベリヤ 香月泰男文集』(筑摩書房、1984年)

昨日で終わるかと思ったのですが、他の作業に追われて、まだ先月読んだ本の紹介が残ってしまいました。今日はなんとか、終わらせたいです。

さて、この本は2161冊目の栗原俊雄『シベリア抑留』(岩波新書)に関連して、関東軍の兵士としてシベリアで実際に抑留された経験のある画家が、自らの体験を綴った本。誰か別の戦争体験を綴った本を読む中で、参考文献として出て来ていたので、それで古本屋から取り寄せて読みました。

私のシベリヤ―香月泰男文集 (1984年) (筑摩叢書〈290〉)


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