http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201201060002.html (2013年度から認証保育所導入へ、橋下市長が方針:朝日新聞関西ネット配信記事2012年1月6日付)
こういう記事を見ると、何か橋下市長が待機児童対策や保育施策で目新しいことを打ちだしたように一見、見えてしまいます。しかし、よく記事を読むと、「すでに導入した東京都では」と書いていますよね。ということはこれ、他自治体ですでに実施済みの施策を大阪市に持ち込む、ということです。
あるいは、次の「保育ママ」関連のこの記事ですが。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120107/lcl12010713290000-n1.htm (【橋下維新】橋下市長、「保育ママ」完全登録制へ:MSN産経ニュース2012年1月7日付)
これもまた、「保育ママ」というと何か新しい制度が始まるように見えるのですが、でも、東京都福祉保健局の次のホームページを見ればわかるように、すでに実施している自治体もあるわけですよね。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/hoiku/h_mama/qa/index.html (東京都福祉保健局:家庭福祉員(保育ママ)Q&A)
続いて、妊婦健診の話。これについても今日のネット配信記事では、大阪市がこれから実質無償化に踏み切るという次の記事が出ていますが。
http://www.asahi.com/health/news/OSK201201060194.html (妊婦健診、実質無料化へ 大阪市、助成大幅増の方針:朝日新聞ネット配信記事2012年1月6日付)
これもまた、よくよくネットで検索をかけてみると、次のような別の記事が出てきました。
http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009060401000529.html (妊婦健診の助成に格差7万円、都道府県平均、厚労省調査:共同通信2009年6月4日付け)
この記事をよく見ればわかるように、すでにもう3年近くも前から、国レベルでは妊婦健診の無料化に向けての財源を市区町村に渡していたことがわかります。しかしながら、各市区町村がそれ以外のことにこの財源を使っていて、健診費用に充てられていなかった。しかも、あてられていないがゆえの妊婦健診助成額の全国最低は、橋下氏が知事時代の大阪ですよ。これなどは、本来やるべきはずの施策を怠っていて、今、あらためて本来の施策に戻しただけのことを、何か実績のように語るんですよね。
マスメディア関係者のみなさん、橋下市長や大阪維新の会、あるいは橋下市長就任後の大阪市役所側の公式発表をそのまま伝えるだけでなくて、こうしたこともきちんと伝えてくださいね。
そして、先日お伝えした大阪市内の公立学校の統廃合問題に関する次の記事ですが。
http://mainichi.jp/kansai/news/20120105ddf041100016000c.html
これも、ツイッターである方から教えていただいたのですが、大阪市教委ではすでに学校適正配置審議会で、12学級程度の学校を適正規模だと考えると、現状では、市内の公立小学校297校中89校(およそ3割)がそれ以下の規模にあるというデータを、2010年度のうちに出しています。そのことは、以下のPDFファイルからも明らかです。
http://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000081/81411/33kaishingikaishiryou.pdf
ということは、この学校統廃合に関する橋下市長の出した方針も、今まで大阪市教委が検討してきた方向性の上にたってのもの、ということにしかすぎません。
ただ、市教委は慎重に関係各方面との調整をすすめ、地元住民や保護者、子どもなどへの理解をもとめつつ、学校統廃合をゆっくりとすすめようとしているのだと思います。なぜそうするかといえば、急激に学校統廃合をすすめると、子どもや保護者、地元住民の生活にさまざまな混乱が生じるからであり、調整していても統合後の学校ではしばらく何かと混乱が起きることを、過去の経験上、市教委サイドは身を以て知っているからでしょう。
これに対して橋下市長サイドは、期限を区切って、なおかつ、「学校統廃合のための学校選択制導入」という方法を使って、スピードを上げて一気にやろうとしているだけにしかすぎません。しかし、これはきわめて乱暴なやり方で、地元住民や子ども、保護者を混乱に陥れるだけであることは、前にも書いたとおりです。
マスメディアのみなさん、繰り返しになりますが、橋下市長サイドから出てくる情報については、このように、必ず別の観点からの情報を補って、「この改革提案がどの程度のものなのか?」がわかるように伝えてほしいです。
少なくとも、お正月明けから伝えられている一連の橋下市長の施策は、たとえば「他自治体の子ども施策のマネ」か、「本来、もっときっちりとやってないといけない施策を、ようやく、本来のレベルにもどしただけ」か、あるいは、「前の市長(さらにそれ以前)の時期に決めた方向性を、スピードを無理やりにでも早めてやろうとしているだけ」といったものが多いのではないでしょうか。
そして、きっとこういう形で、他自治体のマネや過去の施策をいったん継承したうえでその実施速度を上げるようなものでなければ、就任前からある程度準備をしているとはいうものの、たった2週間かそこらの間で、矢継ぎ早に橋下市長が政策提案を打ち出してくることなど、できるわけがないと私などは思うのですが。