新聞記事等から調査報告書の要点と課題を読み解く【1】(神戸・教員間いじめ問題関連)
先日は上記のとおり、神戸新聞の2月21日~22日あたりの記事を中心に、【1】を書きました。
今回は別の新聞社の記事で、気になったものをとりあげて論評しておきます。
ただ、その前に、朝日新聞の配信した次の記事が気になったので、先にコメントをします。
加害側30代教諭、懲戒免職処分へ 教員間暴力 神戸市教委(朝日新聞(有料)配信記事、2020年2月23日)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14376529.html?iref=mor_articlelink02
有料記事なので詳細が読めない方もおられるかと思いますが・・・。一応、概要を説明しますと、この記事は教員間いじめ問題の調査報告書提出を受けて、神戸市教委の加害教員4人と当時の管理職への懲戒処分の見通しについて書いてあるものです。
しかも、加害の事実認定について、程度の重い方から順に1名は懲戒免職、1名は免職か停職、1名(女性)は停職か減給、1名は減給か戒告、当時の管理職(校長)は停職か減給、現校長は戒告以上と、かなりこの記事では具体的に処分内容の見通しが綴られています。
一応、この記事では「市教委は今後、処分対象者の弁明を聴き、外部の弁護士らでつくる分限懲戒審査会の意見もふまえ、処分を最終決定する市教委会議に処分案を提出する」とのことですが・・・。
でも、この記事、「2月中にも、加害側の教諭4人のうち、最も多くの加害行為があったとされる30代の男性教諭を懲戒免職処分とする方向で調整していることが、関係者への取材でわかった」という書き出しなんですよね。
では、この取材対象となった「関係者」っていったい、誰なのか? なんの意図があって、マスコミにたいしてこのような重大な情報を語っているのか? 神戸市教委のこの「関係者」って、分限懲戒審査会や市教委の会議を待たずに、まるで「世論操作」でもするかのように情報を流すのか?? なんなのだ、この不可解な動き? そして、そこにまったくの疑問もさしはさまない取材陣・・・。
と、このように私、思った次第です。いいのでしょうか、こんな重要情報をマスコミに先に軽くしゃべってしまう神戸市教委「関係者」って・・・?? 取材陣も、「この情報、なにかの意図があって流しているのか?」と思わないのでしょうか・・・??
私などはこういう記事を見てしまいますと・・・。例の「評判リスク管理」の観点から、市教委は「加害教員の懲戒免職処分やむなし」という世論を煽りたいのか、それとも逆に「加害教員4人全員を懲戒免職にするのは無理ですよ。このあたりが懲戒処分の妥当なラインですよ(だから、あんまりむちゃくちゃ騒がないでください)」というかたちで、世論の「沈静化」をかけようとしているのか。どういう意図があるんだろう・・・? そんな風に読み解いてしまいますね。私は後者のように読み解いたのですけどね・・・。
では、ここからは本題の調査報告書に関する記事へのコメントです。今回は上記の続きで、朝日新聞の記事で見ておきましょう。
(1)神戸の教員間暴力、125件 ハラスメント含め、調査委が認定 「管理職が空気、助長」(朝日新聞(有料)配信記事、2020年2月22日)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14375222.html?iref=pc_ss_date
(2)校長はプチヒトラー 教諭、被害を相談できる空気なく (朝日新聞(有料)配信記事、2020年2月21日)
https://digital.asahi.com/articles/ASN2P6Q4FN2PPTIL01J.html?iref=pc_ss_date
(3)教員間暴力「ハラスメント容認の空気」 調査委が指摘 (朝日新聞(有料)配信記事、2020年2月21日)
https://digital.asahi.com/articles/ASN2P535ZN2LPIHB027.html?iref=pc_ss_date
(4)「一日も早く教壇に」 被害教諭から子どもへメッセージ (朝日新聞(有料)配信記事、2020年2月21日)
https://digital.asahi.com/articles/ASN2P54CGN2PPIHB00N.html?iref=pc_extlink
この4本のネット配信記事からわかるのは、「朝日新聞は比較的、冷静なトーンで調査報告書の概要を紹介している」ということです。神戸新聞よりは「扱いが小さいのかな?」と思ったりもします。
また、この4本の記事のうち(1)~(3)に対して思うことは、すでに前回【1】で、神戸新聞の記事へのコメントをブログ記事にまとめた際にも書いたようなことばかりです。
つまり、「具体的な事実経過の検証に力点を置いた弁護士らの調査報告書に即して記事を書くので、どうしても加害教員や管理職らの行為のひどさに焦点があたってしまって、その背景要因や構造にまで踏み込んで記事を書いてはいない。調査報告書そのものの弱点が、記事にまで出てしまっている」ということです。
それこそ、(2)の記事には「校内で横行していた加害行為の実態を詳しく伝え、「どこでも起こりうること」として、学校現場や市教委の改革を求めた」とあります。「どこにでも起こりうること」とは確かに私は思います。でも、実際にはここまでひどいか、その手前の段階のことが「起きている」学校と、そうでない学校があります。そのちがいはなぜ生まれてくるのでしょうか?
片方に世間で評判を呼ぶような学校改革を行い、著書が売れてベストセラーになったり、ドキュメンタリー映画がつくられたりするくらいの有名な校長がいて、他方で暴言などの絶えないような校長もいる。あるいは「教員間いじめ(加害行為、ハラスメント・・・といろいろいいうるわけですが)を横行させるのも、させないのも校長次第」になる。そのくらい、「校長に大きな裁量、権限が与えられている」という構造や背景要因自体を問わないと、今後、かなり「危うい」のではないかと思うのですが・・・。
あるいは前校長について、(2)の記事では「統率力を評価されていた一方、威圧的・高圧的な言動が多かった」とのことですが、その「統率力」を評価してきたのはいったい、誰なのでしょうか? 現場の教職員でしょうか? 同じ管理職仲間でしょうか? それとも神戸市教委でしょうか? 地域の人々や保護者でしょうか? 「文句言わずに黙って私に従え」という前校長の「統率力」を容認してきたものがなんだったのか。それこそ「上意下達」の学校、そして神戸の教育界をつくることを「よし」をしてきた人々が、どこかにいたのではなかったのか。そういうことも問われる必要があると思います。
それこそ、管理職たる校長が横暴なことをしていても、職員会議が校長にブレーキをかけうるような位置付けで学校管理規則がつくられていたら、また状況はちがったかもしれませんが・・・。今の神戸市教委の学校管理規則では、校長はどのような権限を持っているのでしょうか? (もっというと、今の教育法令上の校長の権限との関係はどうだったのでしょうか?)
・・・なんか、こういう「背景要因や構造」をつくってきたものについて(=そのなかには、当該の学校をとりまく環境的な諸要因に加えて、市教委の諸規則や今の教育法令上の問題もあると思います)は、あまり考察がなされていないような印象なんですよね。それよりは、歴代の管理職たちの行為を、加害教員らの行為と同じく「現象」的にとらえて、その段階で調査・検証が終わり、掘り下げた考察へと至っていないような、そんな印象を受けてしまいました。
あと、もう一つ気になるのは、被害教員からの「復職」を願うメッセージを代理人弁護士が公表している件です。ご本人の了解を得て公表しているのであろう、ということを大前提にして書きますが・・・。
「復職に向けての話し合いを、ご本人と代理人弁護士、主治医、市教委との間で、今後、どのようにすすめていくのか? そこで上手に合意を形成して、ご本人の心身の回復ペースにあわせて勤務できるような環境を整えていく必要があるのだけど、そういう準備、はじめているのだろうか? また、そういうご本人の回復ペースをよく理解して、適切にサポートができるような管理職・教職員集団を準備していかなければならないのだけど、そこ、市教委は分かっているのだろうか? それこそ、当該の学校に復職させるのか? それとも別の学校から職場復帰させるのか? どういうつもりなのだろう?」
ということについて、どうしても私、気になってしまいました。
無理に復職を急いでかえってこじらせてしまったり、復職後の職場環境になじめないで再度休まなければいけなくなってしまう・・・なんてことだけは、とにかく回避してほしい。ゆっくりと、ご本人の回復のペースにあわせて働き方を柔軟に変えられるように。そういう職場環境を整えてほしい。そのことを、市教委に対しては強く、願いました。