前にも書いたとおり、昨日・おととい(6月5~6日)と、神戸で行われた「全国学校事故・事件を語る会」の「大集会」に参加しました。これは年1回開かれる集会で、北は北海道から南は九州・鹿児島まで(まだ沖縄県の方は来られていませんが)、学校での事故・事件で子どもを亡くされた遺族や、重い後遺症を抱えておられる子どもの家族、あるいは、自分自身がその被害者だという方などが集まってくる会です。
ちなみにこの会では、隔月1回ペース(主に偶数月の第一土曜)、「小集会」という形で、遺族の方などが集まって交流する取り組みも行っています。また、私はこの数年、この「大集会」には必ず参加しています。また、事務局のメンバーのひとりとして、去年から集会の準備等にも協力しています。
さて、今年も1日目は、「学校での事故死」「いじめ自殺」「教員の指導上の問題に伴う自殺」(「指導死」という言葉を使う方もいます)「後遺症等に悩むケース」と4つのグループに分かれて、それぞれの体験を語り合う会が行われました。私は「いじめ自殺」の遺族のグループに入ったのですが、遺族側からは「学校からわが子の死に関する事実がなかなか知らされない」とか、「逆に、その事実を知ろうとする遺族の動きをさえぎるような形で、学校や地元の人々の動きが起きる」こと、さらには、「遺族に対する誹謗中傷や、亡くなった子どもにさらに追いうちをかけるような悪質なうわさが流れる」といった話がありました。ちなみに、このグループには十数年前にわが子の「いじめ自殺」があった方と、つい2~3年前にあった方とが同席したのですが、このような状況に遺族側が追い詰められる構図は、なぜかよく似ていたのでした。また、この構図が生じるのは、「いじめ自殺」だけでなく、「学校での事故死」「教員の指導上の問題に伴う自殺」のケースでも起きているようです。
2日目のシンポジウムには、事故・事件の被害者支援に取り組む精神科医が来られていたのですが、その方によると、遺族の方にとって「わが子がなぜ死んだのか。その経過や事実を知りたい」という動機は当然のことで、「そこがわからなければ、わが子の事故・事件で傷ついた遺族の心身の回復に、さまざまな問題が生じてくる」といった話がありました。だから、教育行政当局や学校が本気で被害者遺族への支援をする気であれば、「心のケア」よりも真っ先に、「事故・事件の経過や原因等について、誠実かつ速やかに説明すること」が必要であるわけです。
ところが、これも昨日のシンポジウムで私が話しましたが、今の教育行政当局や学校には、被害者遺族側に対して、「事故・事件の経過や原因等について、誠実かつ速やかに説明すること」がなかなかできない。また、そのような被害者遺族側の置かれている状況に対する配慮や関心すら、近年に至るまで出てこなかった状態にあります。
一方、学校の「危機管理」や、事件・事故発生時に学校に派遣される臨床心理士等の「緊急対応チーム(CRT)」に関する議論は一定、この何年かで進みました。その背景には、例の大阪教育大学附属池田小学校での事件以後の議論の蓄積があります。しかし、それらの議論は学校で事故・事件が発生したときに、「学校コミュニティを守る」という観点から行われている状態。つまり、今の学校の「危機管理」や「緊急対応」に関する議論は、たとえば学校で事故・事件が発生した際、どのように校長や教育行政の担当者がマスコミに対応するのか、保護者からの問い合わせや保護者会でどのような方法で説明をするのか、亡くなった子どもの周囲にいる子どもや教職員へのケア、支援をどうすすめるのか、といった議論が中心です。
もちろん、今ある学校の「危機管理」や「緊急対応」に関する議論が、決して不要だという気はありません。ですが、今の議論の流れには、すっぽり「被害者・遺族への支援」という観点が抜け落ちているように思われています。また、あったとしても、たとえば学校の立場から亡くなった子どもの葬儀どう関わるかとか、学校の責任が問われるようなケースにどう対応するか、といった内容が中心で、被害者・遺族の側が求めている「事故・事件の経過や原因等に関する誠実な説明」ということには、あまり触れられていないのが実情です。そして、事故・事件発生後に遺族の側に生じる誹謗中傷や亡くなった子どもへの悪質なうわさなど、いわゆる「二次被害」のことに目を向けた議論も、ほとんどないような状態です。
私としては、まずはこのような「学校事故・事件の被害者・遺族が直面する現実」について、「何らかの形で情報発信を行い、広く知っていただく必要がある」ということを、今回の大集会に参加して、あらためて実感しました。と同時に、「事故・事件の経過や原因等に関する誠実な説明」を出発点にした、学校事故・事件発生時に被害者・遺族側を適切に支援するシステムづくりの必要性も、今後、いろんな場面で訴えていきたいと考えています。
そして、本気で起きた事故・事件の再発防止を学校や教育行政当局が真剣に考えるのであれば、被害者・遺族の声に耳を傾けるところ、起きた事故・事件の事実経過や原因等にきちんと向き合うこと。この2つのことが重要ではないかと、この場を借りてあらためて述べておきたいと思います。
※この内容は、もうひとつの「日記帳」ブログに、今日、書き込んだ内容と同じものです。タイトルだけは少し、「日記帳」ブログから変えました。このことはできるだけいろんな人たちに訴えておきたいし、知っておいてほしいので、ここにも転載しておきます。
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