できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

あれから2年

2008-08-31 18:49:48 | いま・むかし

あしたから私は、卒論ゼミの学生とともに、奈良での一泊二日の合宿にむかいます。

2年前のゼミ合宿の日は、大阪市の青少年会館条例(青館条例)を廃止し、事業を「解体」する方針を、地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会が打ち出した日。それからあとは、みなさんもご承知のとおり、青少年会館(青館)に集まる子どもやその保護者を含む市内各地区の人びとや、子どもの人権などにかかわるNPO団体などの反対にもかかわらず、あっという間に条例廃止・事業「解体」の方針が市長から出され、2007年3月末をもって、その方針どおりになりました。

その後、市民利用施設としての「暫定使用」という形で、2007年4月以降の大阪市内の旧青少年会館(旧青館)は、各地区住民やNPO団体などが自主サークルを立ち上げ、団体登録の上で利用するという方式が取られています。一方、青館条例廃止後も「解体」されずに残った「ほっとスペース事業」も、その多くは旧青館で引き続き実施されていますが、一部はすでに別の場所に移されています。

そして、このブログでも何度か発信したとおり、各地区で保護者や住民が自発的にサークルをたちあげ、例えば旧青館を活用して子ども会活動を開始したり、中学生や高校生対象の夜の勉強会、識字教室、和太鼓などのサークル活動、その他スポーツ・文化活動などに取り組みはじめています。また、その子ども会活動のなかには、学生ボランティアや地区の若者の協力などを得て、開始当初の週1回や月1回のペースから、やがて学期中の平日午後とか、夏休み中のお盆休みの期間以外の毎日とか、だんだん、活動回数を増やすところがでてきています。

もちろん、大阪市内のすべての旧青館所在の各地区で、こうしたとりくみがうまくいっているわけではありません。停滞中の地区もありますし、場所の確保やリーダーのスケジュールの問題、資金面の問題など、いろんな課題に直面している団体・サークルなどもあります。というか、うまくいっている団体・サークルであっても、やればやるほど、運営上の課題ばかりが次々にでてくる、というところでしょうか。

それでも、「条例廃止くらいで、地区の活動が停滞してたまるか、なにくそ!」という思いで子ども会活動を続けているおとなもいれば、「あらためて子ども会活動をするなかで、今まで青館事業があったことのありがたさが実感できた」という保護者もいます。あるいは、「こうした自主的な活動を通じて地区内の子どもや保護者、若者と知り合うことができて、各地区の教育運動の活性化につながっている」という方もいます。この状況の激変のなかで、少しずつではありますが、新たな各地区の教育・子育て運動の「芽」が育ち始めている。そんな実感を抱くことも、私の場合、徐々に増えてきたように思います。

そして、いまや大阪市内だけでなく、ここ数ヶ月の例の大阪府の行財政改革の動向を通じて、今後、大阪府下の各地区の青館についても、活動規模の縮小に始まり、やがて施設の整理・統廃合、施設設置条例の廃止などが危惧される状況が見えてきました。大阪市内の各地区や旧青館が直面している状況が、府下の各地区・青館においても見られるかもしれない。そう考えたとき、今、大阪市内の各地区の子どもや若者、保護者、地区住民などが、暫定的に利用可能な旧青館を使って、どのように自主的な教育・子育て活動を立ち上げ、それを軌道に乗せているのかを継続してフォローしていくことは、今後の各地区でのとりくみにとって、とても参考になるデータを提供するのではないでしょうか。

そう考えたときに、去年から大阪市内各地区での旧青館を使った活動について、私らがある研究プロジェクトを立ち上げて、そこで得られた知見をできるだけ情報発信するようにしているのですが、それをぜひ、市内以外のところでも有効活用してほしいな、と思います。

と同時に、「これだけ大阪市内や大阪府下の状況が様変わりしているし、条例廃止等のダメージのなかでも、そこから立ち上がって何か活動を再建しようと努力する人びとが出てきたのに、いったい、大阪で人権教育や解放教育を論じてきた人びとは、いま、どこで、なにをやっているのか? こういった各地区で粘り強く活動している人びとを支援しようとか、もっとどんなことをしてるのかを知ろうとか、そういう動きを起こす気もないのか? あんたらにとっての人権教育や解放教育とは、いったい、なんなのか?」という思いも、私としてはこの2年間のなかで、だんだん強まってきています。

そして、青館条例廃止から2年が過ぎましたが、私のなかでは、青館条例ができる前の子ども会活動の状況から、青館設置・条例制定、そして廃止・事業「解体」に至るまでの三十数年のあゆみについても、「そろそろ、私らの視点で、きちんと歴史的な検証作業を行い、何が成果で何が課題なのか、きちんとした総括をしなくちゃ」という思いも強まっています。

こういう形で、今後も引き続き、大阪市内各地区の旧青館と、そこを使って何か活動を続けている子どもや保護者、若者、地区住民にまずは軸足を置きながら、その周辺の課題にも視野を広げて、いろんな取組みを継続していくつもりです。また、そこで見えてきた諸課題については、このブログだけでなく、雑誌記事や論文なども含め、いろんな形で発信していこうと思います。

今後ともご支援、ご協力をよろしくお願いします。

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