DVDで見た旧作、2作品の感想です。
シドニー・ポラック監督、ロバート・レッドフォード&メリル・ストリープ主演のアフリカを舞台にした壮大な愛の物語。「バベットの晩餐会」の原作者アイザック・ディネーセンの長編「アフリカの日々」を映画化した作品と知り、興味を持ちましたが、あとからディネーセンの自伝と知って驚きました。
1913年。デンマークの資産家の娘カレン(メリル・ストリープ)は、ひょんななりゆきからスウェーデン貴族のブロアと結婚することを決め、英領東アフリカ(現ケニア)に移住します。カレンはここで酪農をはじめるつもりでしたが、ブロアは勝手にコーヒー農園を買い取り、しかも自分は家に居つかず、ハンティングに明け暮れていました。
カレンは現地の人たちを上手に使いながら、ひとりでコーヒー農園を切り盛りしていましたが、やがてイギリス人のハンター、デニス(ロバート・レッドフォード)と惹かれあうようになります...。
窮屈な母国を離れ、雄大なアフリカの大地に根を張って生きることを決めたカレンでしたが、思いつきで結婚したブロアとはもともと性格が合わなかったのでしょう。カレンはブロアを愛そうと努力しますが、彼の浮気性は直らず、病気をうつされ、最後にカレンはブロアを追い出してしまいます。
カレンとデニスは、おそらく最初に会った時から惹かれあうものを感じていたのだと思います。2人ともヨーロッパ社会の格式や慣習に束縛されず、アフリカの大自然の中で自由に生きることに価値を見出しました。支配階級としてでなく、現地の人たちに敬意を表し、真に友人として接する姿に心を打たれました。
人間ドラマとしても心に残るシーンがたくさんありましたが、何といってもアフリカの大自然がすばらしかった。砂漠の中を一日移動したり、目の前にライオンが現れたり。デニスの操縦する小型機に乗って空を飛ぶシーンは圧巻でした。そして若き日のレッドフォードとストリープはどちらも美しく、魅力的でした。
その土曜日、7時58分 (Before the Devil Knows You're Dead) 2007
「オリエント急行殺人事件」(1974) のシドニー・ルメット監督の遺作で、今は亡きフィリップ・シーモア・ホフマンが主演していると知って見てみました。弟役にイーサン・ホーク、妻役にマリサ・トメイ、父親役に”オリエント急行~”でポアロを演じたアルバート・フィニーが出演しています。
ニューヨーク郊外。不動産会社の経理担当重役を務めるアンディ(ホフマン)は、弟のハンクに強盗を持ちかけます。アンディは会社の金を横領し、ハンクは離婚した妻に養育費が払えず、どちらもお金に困っていたのです。その計画は両親が経営する宝石店を襲うというもの。店員の老女がひとりでいる時間を狙えば楽勝で、被害は保険で賄われるというわけです。
アンディは近所に顔が知られているので、ハンクがひとりで実行することになりましたが、気の弱いハンクが友人のボビーを巻き込んだことから事件は思わぬ方向に向かいます。店にいたのは母親で、ボビーとの銃撃戦との末、2人とも亡くなってしまうのです。ショックの中で事件の真相を探った父は、息子たちの関与を知ることとなり...。
先の読めない展開で、クライムドラマとして大いに楽しめましたが、見終えてみれば、この映画のほんとうのテーマは家族の確執だったのだと気づきました。仕事に成功し美しい妻のいるアンディは、はたから見れば人生の勝者。でも内心では劣等感の塊でした。
彼は外見のよい弟をうらやみ、父親から愛されていないと信じ込んでいたのです。彼がこのような犯罪を計画したのは、もちろんお金に困っていたということもありますが、父親に強盗の被害を負わせ、それを弟に実行させることで、小さな復讐を果たすつもりでいたのではないか...と思いました。
母の葬儀の席で父の愛を知り、犯行を後悔するアンディ。ところが時すでに遅し。狂い始めた歯車はとどまることなく、アンディとハンクを取巻く状況はどんどん悪い方向へと転がっていきます。そして真実を知った父の決断... 悲しい結末がずしりと胸に響きました。