警察の緊急通報指令室にかかってきた一本の電話から発覚した誘拐事件を、電話の音声だけをたよりに解決するデンマークのサスペンス映画。スウェーデン出身グスタフ・モーラー監督の長編デビュー作です。
THE GUILTY ギルティ (Den Skyldige / The Guilty)
警察の緊急通報指令室でオペレーターをしているアスガーは、ある日、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受けます。彼女からの電話ごしに聞こえてくる音声だけを頼りに、アスガーはこの事件を解決しようと奮闘しますが...。
電話の音声だけを頼りに誘拐事件を解決。舞台は警察の緊急通報指令室のみ。映画に登場するのはほぼ主人公のアスガー(ヤコブ・セーダーグレン)だけ、という実験的要素に満ちた異色サスペンスです。上映館が少ないのと、前評判が高かったこともあって、シアターはほぼ満席でした。
斬新なアイデアと予想外の結末。音声だけでストーリーが展開していくので、映像的にどうしても地味になってしまうのは否めませんが、主人公のアスガーと同じく、私たちも限られた情報だけをたよりに推理をはたらかせるのは、集中力を要するスリリングな体験でした。
今どきは、誘拐されたらまず犯人から携帯電話を取り上げられて、外界との接触を断たれるでしょうから、最初からどうもおかしい...とは思っていましたが、それはともかく、本件とは全く関係のないアスガーの過去が彼の行動に影響を与え、深みのある物語となっていたのが見事でした。タイトルのギルティについても、あれこれ考えさせられました。
映画を見ていくうちに、アスガーは実はもと警官で、過去の過ちからこの部署に左遷されてきたらしい、ということがわかってきます。最初はオペレーターの仕事に熱意がもてずに、同僚にも高飛車な態度だったアスガーですが、突然の誘拐事件に遭遇し、なんとか彼女を助けようと奮闘していくうちに、彼の中に警官としての情熱がもどってきます。
それはすなわち自分自身と向き合うことであり、ある意味自分の首を絞めることにもつながるのですが...。
ジェイク・ギレンホール主演でハリウッドでリメイクされることが決まっているそうですが、結末を知っていても楽しめるかな? でも見てみたい気もします。