1964年のミュージカル映画「メリー・ポピンズ」の続編。前作から数十年後のロンドンに、メリー・ポピンズが帰ってきました。「シカゴ」のロブ・マーシャル監督を監督を務め、エミリー・ブラントがメリー・ポピンズを演じています。
メリー・ポピンズ リターンズ (Mary Poppins Returns)
大恐慌時代のロンドン。バンクス家の長男マイケル(ベン・ウィショー)は成人し、結婚して3人の子供たちの父親となっていましたが、一年前に妻を亡くしてからというもの家の中はてんてこ舞い。さらには借金をかかえて、家を失うピンチに陥っていました。そんなある日、かつてバンクス家の教育係だったメリー・ポピンズが風に乗ってやってきます。
予告を何度も見て楽しみにしていた作品。「メリー・ポピンズ」は2006年にブロードウェイのミュージカルを見ていて、その時に予習のために1964年の映画も見ました。今回は復習しませんでしたが、前作を見ていなくても十分楽しめる作品になっていたと思います。
ロブ・マーシャル監督らしい、ミュージカルの王道を行く、愛と夢と音楽に彩られたすてきな作品。前作と同様、クラシックなミュージカル映画のテイストはそのままに、最新のテクノロジーを使って、古くささを感じない、洗練された映像になっていて感動しました。
冒頭の Lovely London Sky から、一気にミュージカルの世界に引き込まれ、そのままバンクス家の子供たちといっしょに、わくわくしたり、どきどきしたり、ドラマティックな音楽に思わず涙したり... 夢と冒険の世界をたっぷり堪能しました。
エミリー・ブラントの歌も見事でしたが、メリー・ポピンズを何かと気にかけ助けてくれる街灯の点灯夫ジャック(リン・マニュエル=ミランダ)の歌がすばらしくて、映画を見ながら彼はいったい何者?!となりました。きっと只者ではないと、あとでググってみたら...
彼はブロードウェイのミュージカル・スターで、今もっとも予約が取れないミュージカル「ハミルトン」で主演している俳優さんなのですね。エミー賞、トニー賞はじめ数々の賞を受賞している大物と知り、大いに納得しました。本作は豪華キャストで、みなさん歌が上手ですが、彼のような人がいるとミュージカル映画は締まりますね。
エミリー・ブラント演じる、一見クールなメリー・ポピンズも実にチャーミングでした。最初は取り澄ましていて、何事にもあまり乗り気でない風を装っているのだけれど、最後は誰よりも一番ノリノリになっているのがおもしろい。カラフルでクラシックなイギリス風ファッションもすてきでした。
バスタブの中や、ロイヤルドルトンの器に入って、いろいろな世界を冒険するのも楽しかったし、メリル・ストリープが、メリー・ポピンズのエキセントリックな従姉を演じるさかさまの世界もおもしろかった。
久しぶりに、マイケルの姉ジェーン役でエミリー・モーティマーが見れたのもうれしかったです。彼女はいくつになってもキュートな女優さん。社会活動家としてがんばっているジェーンと、ジャックとのほのかなロマンスもさわやかできゅんきゅんしました。
唯一、不満だったのはコリン・ファース演じる銀行の頭取だけ空を飛べなかったところ。悪役に罰を与えるのは、ディズニーらしくない!とぷんぷんしました。ラスト近くになって、メアリーが言った「扉が開くまで」の意味を突然理解して、えっ!と泣きそうになりました。このままいつまでも映画の世界に浸っていたかったです。
音楽が旧作の曲を一切使わず、すべて本作のための書き下ろした新曲というのも、すごく勇気のあることだと思いました。でも、エンドロールの曲の最後のワンフレーズに、スーパーカリフラジリスティック~の一節が使われていて、にやりとしました。
ミュージカルの好きな人はきっと楽しめる作品だと思います。私は今度はより音響のいいシアターでもう一度見たいです。