18世紀のイングランド王室を舞台に、アン王女と彼女に仕える2人の女官の間の愛憎劇を、ブラックな笑いをからませて描いた歴史ドラマ。オリビア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズが共演しています。
18世紀初頭、フランスとの戦争下にあるイングランド。アン女王(オリビア・コールマン)に仕える女官サラ(レイチェル・ワイズ)は、女王を意のままに動かし、絶大な権力を握っていました。そんな中、没落した貴族の娘でサラの従妹にあたるアビゲイル(エマ・ストーン)が宮廷に入り、ひょんなことからアン女王の侍女を務めることに。
サラはアビゲイルを牽制しますが、アビゲイルは再び貴族の地位を得て、サラの立場に取って代わろうと女王に積極的に近づきます...。
予告を見た時には、女王の傲慢ぶりや女同士の鞘当てに、私が苦手そうな作品だな~と警戒していたのですが、批評家たちの評価が軒並み高く、アカデミー賞にも多くの部門でノミネートされているので、つい気になって見に行きました。大好きなレイチェル・ワイズが出ているというのにも背中を押されました。
でも結論からいうと、私には合わなかった。もともと人間の悪意を描いた小説や映画が苦手というのもあるし、単純な人間なのでブラックユーモアはどちらかというと苦手。本作も、エログロナンセンスのどぎつい笑いについていけませんでした。この笑いが受け入れられるかどうかが、本作の好き嫌いの分かれ道になるかと思います。
監督は、ここ数年ヨーロッパの映画賞を総なめにしているギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督。どの作品もクセが強そうで、これまでなんとなく敬遠してきたので、見たのは本作が初めてです。
お下劣なイギリス王室がこれでもかと描かれていますが、Wikipediaをいろいろチェックしてみると、登場人物と関係性、戦争をめぐる両党の駆け引きなど、意外と史実に基づいていることに驚きました。^^; イギリス王室はこの映画を見てよく怒らなかったなーと思いますが、そういえばこれまでも映画には寛容でしたね。
私好みの映画ではないけれど、アン、サラ、アビゲイルの3人の女性たちの駆け引きはスリリングで見応えがありました。そしてそれは演じる3人のオスカー俳優たちによる演技バトル?でもありました。俳優たちのプロ根性、役者魂に圧倒されました。
この映画を見て、女は怖いというコメントもちらほら見ましたが、それは違うと思いました。愚かなリーダーに気に入られたくて、なりふり構わず取り入ろうとする側近の姿、というのは今の時代にもよく見る光景。ラストはちょっぴりほろ苦く、シェイクスピアのリア王を思い出したりもしました。
歴史劇に現代の要素を織り交ぜた演出ですが、それは衣装にも表れていて、ウエストをぎゅっと絞ったクラシックなドレスながら、黒と白をシャープに生かしたデザインというのが斬新。サラのパンツ姿もかっこよかった。不安を掻き立てるような通奏低音は、映画「セヴン」のクライマックスを思い出しました。
それから、ニコラス・ホルトくんがマッド・マックスばりの白塗りで出ていました。^^ 最初は気がつかなかったですが、瞳の色でわかりました。エンドロールのデザインも凝っていましたが、均等割付になっていてすごく読みづらかったです。^^;