セレンディピティ ダイアリー

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スリー・ビルボード

2018年02月09日 | 映画

マーティン・マクドナー監督、フランシス・マクドーマンド主演。ミズリー州の架空の田舎町に巻き起こる騒動を描いた、コメディタッチのヒューマンドラマです。

スリー・ビルボード (Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)

ミズーリ州の田舎町エビング。ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、娘がレイプされ焼き殺されてから7ヵ月過ぎても犯人が捕まらないことに業を煮やし、町はずれに立つ3枚の看板に広告を出します。ウィロビー警察署長(ウディ・ハレルソン)を名指しで批判するその広告は物議をかもし、ミルドレッドは住民たちの非難の的となりますが...。

数々の映画賞で高い評価を得ている本作。予告を見た時からピンとくるものを感じ、楽しみにしていました。正直にいうと、そこまでどんぴしゃりの私の好みではなかったですが、予測のつかない展開に翻弄されつつ、最後には不思議な安堵を覚える作品でした。なかなかおもしろかったです。

朝露が立ち上る緑の草原に”庭の千草”の美しい調べが流れるオープニングに意表を突かれました。いかにものどかな田舎の風景ですが、これは嵐の前の静けさにすぎなかった。ミルドレッドが町はずれの忘れ去られていた看板に広告を出した時から、小さな町に波乱が訪れます。

名指しで批判された警察署長のウィロビーは、誰からも慕われている好人物。彼は捜査をさぼっているわけではなく、手がかりがなく捜査が手詰まりな状況ですが、それをミルドレッドに話しても聞き入れてもらえません。ミルドレッドの唐突な行動は誰からも理解されず、彼女はどんどん孤立していきますが、本人はお構いなし。

特にウィロビーを尊敬している部下のディクソン警官(サム・ロックウェル)にとって、ミルドレッドの行動は我慢がなりません。彼の怒りの矛先は、なぜか広告会社に向かい、若い社員を2階から投げ飛ばして大けがをさせてしまいます。

挙句のはてには看板に火をつけて燃やしてしまい、それに対してミルドレッドは警察に放火して報復し、騒ぎはどんどんエスカレートしていきます。

どれも立派な犯罪ですが、罪に問われることはありません。^^ ミルドレッドも孤立しているといっても、陰湿な嫌がらせがあるわけでなく、町の人たちもどこかにこにこなりゆきを見守っているようなところがあるし、彼女に対して好意的な人たちもいます。

そして北風と太陽の話ではないけれど、怒りを鎮めるのは怒りではなく、心のこもった一通の手紙でした。そんな単純な、と思うけれど、ことばにはそれだけの力があるというのもまた真実。

ラストは、いつしかすっかり意気投合したディクソンとミルドレッドが、事件と何の関係もないレイプ犯(かどうかすら怪しい)を殺しにアイダホまで行くという、どこまでもずれまくりの2人なのでした。^^

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カスレ

2018年02月07日 | 料理

お豆を使った煮込み料理が食べたくて、フランス家庭料理の「カスレ」を作りました。フランス南西部の地方料理で、白いんげん豆と肉類をコトコト煮込んで作りますが、さらにパン粉をのせてオーブンで焼くこともあります。カスレという名まえはカソーレという土鍋を使うことに由来します。

堤人美「毎日おいしい豆レシピ」

レシピはこちらの本を参考にしましたが、いつものやり方で少しアレンジしました。

白いんげん豆はゆでてあるものを使いました。缶詰もいろいろ出ていますが、私がいつも使っているのはこちら。豆がやや大きいのが気に入っています。サラダにもよく使うので、ふだんから常備しています。

お肉は地域によっても若干違うようで、鴨やがちょう、ソーセージなどが使われるようですが、私は今回、豚肩ロース肉とチョリソーを使いました。豚かたまり肉は一口大に切り分けて前日に塩をまぶし、塩漬けにしておきました。

フライパンにオリーブ油を熱してお肉の表面を焼き付け、たまねぎ・セロリ・にんにくを柔らかくなるまで炒めます。

お鍋に移し、チョリソーと水、ベイリーフ、ケチャップ少々を加えて、お肉が柔らかくなるまで1時間くらいコトコト煮込みます。さらに白いんげん豆とエルブドプロヴァンス(ハーブミックス)を加えてコトコト煮ました。

ほろほろに柔らかい豚肉と、白いんげん豆の優しい味わいがいい感じ。しみじみとおいしくいただきました。

***

YouTubeが私の好きな音楽の傾向を把握していて?お勧めを逐一お知らせしてくれるのですが、先日送られてきた中で気に入ったのが、Charlie Puth が Boyz II Men と共演しているアカペラのバラード If You Leave Me Now です。

Charlie Puth (feat. Boyz II Men) - If You Leave Me Now (Studio Session)

Charlie が5月11日にリリースするセカンドアルバム "Voicenotes" に収録される新曲で、映像は最近公開されたスタジオセッションの様子だそうです。失恋を歌った切ないバラードですが、ハーモニーがとってもきれい。

Charlie はメロディがきれいで好きなアーティストでもありますが、最近「デトロイト」を見て気分がモータウンになっていたこともあって、Boyz II Men との共演は私にはとてもタイムリーでした♪

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デトロイト

2018年02月06日 | 映画

キャサリン・ビグロー監督の最新作で、1967年のデトロイト暴動と、その中で起こったアルジェ・モーテル事件を描いた事実に基づくドラマ。ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、アルジー・スミスらが出演しています。

デトロイト (Detroit)

1967年7月、ミシガン州デトロイト。デトロイト市警察が、違法営業していた黒人経営のクラブを摘発したことがきっかけで、抑圧されていた黒人たちの怒りが沸点に達し、大規模な暴動へと発展します。暴動を制圧するために、市警察のほかミシガン州軍も投入され、街中に緊張が高まる中、アルジェ・モーテルの一室から銃声数発が鳴り響きます。

それは宿泊していたひとりの若者がふざけて競技用ピストルの空砲を鳴らしたものでしたが、クラウス(ウィル・ポールター)ら警官たちはモーテルに突入。宿泊客全員を集め、狙撃犯とピストルのありかをめぐって過酷な尋問を行っていくのでした...。

冷徹なまなざしで、社会に鋭く切り込む作品を送り出してきたビグロー監督は、尊敬する大好きな監督のひとり。本作もきつい作品であろうことを覚悟しつつも、期待して楽しみにしていましたが、一方で”衝撃の40分”があまりに喧伝されていたので、見る前は少々腰が引けていました。

でもやはり見てよかった。個人的にはビグロー作品の中で一番気に入りました。それは容赦のない厳しい描写の中にも、どこか今までにないエモーショナルな部分が感じられたからかもしれません。凄まじい緊張感に押しつぶされそうになりながらも、終始スクリーンから目が離せませんでした。

デトロイト暴動といえば、映画「ドリームガールズ」を思い出しますが、本作でも当時のモータウン・サウンドの人気が背景として描かれています。両者はこの時代のデトロイトにおける光と影であり、コインの表と裏のようだと感じました。シュープリームスみたいな女の子たちがステージでのりのりで歌う場面は、本作で一瞬の心躍るシーンでした。

映画はデトロイト暴動の勃発からはじまり、徐々に核心となるアルジェ・モーテル事件、そして裁判と大きく3つのパートに分かれています。ドキュメンタリータッチで描かれる群像劇ですが、中心となる人物は3人。

警備員のディスミュークス(ジョン・ボイエガ)は事件の目撃者であり、本作では狂言回し的な役割を果たしています。彼は穏やかで良識があり、非暴力によって人種間の軋轢を緩和しようと日頃から心がけている”よき黒人”。しかし黒人の立場で白人警官たちの横暴を止めることは不可能で、ラリーたちに”今日を生き抜け”と励ますのが精いっぱい。

事件のあと、警察によばれた彼は、正しい証言によってラリーたちを助けてあげられると確信したはずです。それが実は自分に容疑がかけられているのだと知った時の、絶望と諦観の表情が忘れられません。

ボーカルグループ ”ザ・ドラマティックス”の歌手ラリーは、出演する予定のコンサートが突然中止になり、急遽宿泊することになったアルジェ・モーテルで事件に巻き込まれます。音楽が好きで女の子が好きな陽気な少年。しかし彼はこの時の凄まじい経験と親友を亡くしたショックから、事件後はデトロイトの教会で聖歌を歌うという道を進みます。

ラリーを演じるアルジー・スミスくんはすてきな男の子でしたね。彼自身も歌手だそうで、映画で美しい歌声を披露しています。最後の方で聖歌を歌う場面では感極まって号泣してしまいました。エンディングでは、彼が演じたラリー・リード本人とともに Grow というバラードを歌っています。

そしてラリーたちを執拗に尋問したのが、警官のクラウス。いじめっ子がそのまま大きくなったような顔が特徴的なウィル・ポルタ―は「リトル・ランボーズ」に出てた子だったのですね。未熟な若造が銃を持たされて偉くなったと勘違いし、どんどん狂気に染まっていくところがほんとうに恐ろしかった。

しかも一度過ちを犯しているのに、そのまま彼を任務につかせた警察の上層部にも問題があったのではないでしょうか。裁判のシーンでは、法の素人が人間を裁く、陪審員制度の限界も感じました。今も白人警官が一方的に黒人に発砲し無罪となる例が後を絶たないアメリカ。決して過去の事件ではないところに人種差別問題の根深さを思いました。

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cafe & dining ICHI no SAKA

2018年02月04日 | グルメ

都立大学駅の近くに昨年11月にオープンしたカフェ cafe & dining ICHI no SAKA (イチノサカ) にお昼を食べに行きました。

(お店のサイトよりお借りしました)

ニュージーランドスタイルカフェとのことですが、店内は北欧風とカルフォルニア風をミックスしたようなシンプルでナチュラルなインテリア。外から見ると、水色のファサードが目を引きます。屋内はガラス戸で2つに区切られていて、道路側はオープンテラスのような雰囲気でした。

ランチは、スープ、サラダ、サーモン、ステーキ、煮込み料理など。それぞれにミニサラダとロカボパン(低糖質のパン)がつきます。

産地直送の無農薬野菜を使ったミニサラダ。紫色の水菜?は初めて見ました。ドレッシングはわずかになじませているだけで、野菜そのもののお味が楽しめました。ロカボパンはミニロールとレーズンブレッド。低糖質・低脂質でかむほどに味わい深いパンでした。

オーストラリアの広大な大地で牧草だけを食べて育ったという放牧牛のステーキ。付け合わせは季節野菜のグリルです。じゃがいも、あやめかぶ(紫のカブ)、芽キャベツ、プチヴェール(結球してない芽キャベツ)など、色や形が美しい。

こちらの付け合わせは、ポテトフライ。ステーキは絶妙なバランスのレアになっていました。ピリッとしたマスタードでシンプルにいただきます。

私は、オーストラリア産ラムのトマト煮込みをいただきました。ストウブの小さめのお鍋ごと運ばれてくると、なんだかわくわくしてきます。お肉はほろほろに柔らかく、野菜は硬めの仕上がりで、それぞれがベストのコンビネーションでした。

この日はコーヒーはいただかなかったのですが、こだわりのニュージーランドスタイルのコーヒーを、機会があれば味わってみたいです。

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スキレットを使って(5)アヒージョ/焼きりんご/ファーブルトン

2018年02月02日 | 料理

スキレットを使って作ったお料理から、アヒージョ3品と、お菓子2品です。

広島産牡蠣のアヒージョ。ふっくら大きな広島産牡蠣が手に入ったので、しめじといっしょにアヒージョにしました。スキレットに牡蠣、しめじを入れ、オリーブ油ざ~っとかけます。にんにくスライスと赤唐辛子を入れて、ことこと煮、最後に塩をふって仕上げました。おつまみに最高でした。

かにかまのアヒージョ。ネットでおいしいと話題になっていたので作ってみました。作り方は牡蠣と同じで、牡蠣であまったオリーブ油も足しました。かにかまが爪の形になっていて、なかなかリアル。味もカニそのもので、感動しました。

お餅のアヒージョ。お正月明けに残ったお餅を小さくカットして焼き餅にし、スープに入れたりしてたのですが、息子から”お餅のアヒージョがおいしいらしいよ”と聞いてトライしてみました。熱で柔らかくなったお餅がくっついて、離しながら焼くのがたいへんでしたが、まわりがパリッ、中がもちっとしておいしかったです。

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お菓子もいろいろ作りました。

ファーブルトン。フランス・ブルターニュ地方の伝統菓子で、プディング風のもちっとした食感の焼菓子です。私はいつもプルーンを入れて作ります。いつもは21㎝の大きなパイ皿で作っていますが、今回は15㎝のスキレット3つに分けて作ってみました。結構ボリュームがあるので、スキレット1つがちょうど2人分でした。

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久しぶりに焼きりんごを作りました。

紅玉の芯をくり抜いて、いつもはお砂糖とシナモン、バターを入れるのですが、今回はメイプルシュガーとシナモン、ココナツオイルを入れました。最近バターの代わりによくココナツオイルを使っています。焼いている間に皮が破けないよう、フォークでつついておき、200℃のオーブンで30分焼きました。

焼き上がったところにバニラアイスクリームをのせると、りんごの熱でとろ~りと溶けるのがいい感じ。フォークとナイフで切り分けながら、あつあつひえひえのコンビネーションを楽しみました。

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