1997年 文廟の中には茶館があった
昨日の続き。文廟の中には茶館があり一元(当時13円くらい)でお茶を飲めて、中央の舞台では生演奏カラオケがあり市民の憩いの場だった。最初ここに入った時の私は、手が震えるほど興奮した。それは、まさしく本当に私が撮りたかった古い上海の庶民の姿が目の前にあったからだ。
ただし、この茶館の中でNoblex135Uを使い写真を撮るのは至難の業。画面右からは少し外光が入るのだが、それ以外の場所はトップに電球が二つしか無く相当暗い。ノブレックス135Uという回転式のパノラマカメラは、ピント調整機能は無い固定焦点なので絞りで深度をかせぐしかない。この時のフィルムはイルフォードXP2だったので、暗部が潰れないようISO400の感度をISO100まで落として使った。このフィルムは露光オーバーでもハイライトが飛ばないからだ。この時は、シャッタースピードは1秒で絞りはf8だったと記憶している。通常のカメラであれば三脚を使って1秒なんてよくあるし何の問題もない。でも、この回転式カメラの1秒は、シャッターを切ってから露光が終わるまで120秒もの時間が必要なのだ。その露光時間中に茶館の客や給仕のおばあちゃんがカメラの前を横切ってくれるので、それらカットは使い物にならない。
当日はカメラアングルを決め、歌が始まるとシャッターをを切るの繰り返しで、この日50カット以上撮ったがモノになったカットは2カットのみ。この写真は私の代表作でもあるし、後日知ったのだが、地元の上海人も知らなかった場所だったらしい。この旧城内は、地元の上海人もほとんど入り込まない場所で、この旧城内に行くのも嫌がる人が多かった時代の話。
Noblex135U