2月13日(日)に開催された、(社)全日本鍼灸学会 中部支部研修B講座の参加報告の続きです。
内容で印象に残ったこと、勉強になったことを書いておきたいと思います。
●アレルギー体質の強さを示す血液検査IgE抗体の発見者は日本人の石坂公成 氏である。
●IgE抗体はアレルギーの強さ、好酸球はアレルギーによる炎症の強さを表す。基本的なことだけれど、確認の意味で書いておいた。
●痒みとは…掻きたくなるような感覚。当たり前のようだが、当たり前でない。痒いという感覚は痛みと同様つらい症状である。また、嗜好的掻破行動というものがあり、掻くことにより、精神的りラックスを得たり、興奮した感情を落ちつけたりする。心はりラックスできるが、炎症は強くなり、アトピー症状の悪化に繋がる。掻くなと言われても難しく、ストレスにもなる。なんか上手い言い方はないものか。
●ステロイドの使用については、皮膚科学会の中でも意見が分かれている。ステロイドの使用に関するガイドラインなども出ているが、「ステロイドを使い過ぎるからアトピー症状が悪化する」という意見と、「症状が悪化するから、ステロイドを増やすのであって、ステロイドで症状が悪化しているのではない」という意見があり、分かれている。私に言わせれば、ステロイドがどんなもので、どこに作用し、どんなメカニズムで症状が改善するかを理解していれば、体に悪いか、悪くないか分かると思うのだが…
●症例報告(皮膚炎の写真も入っている)から、鍼灸治療はアトピー症状を改善するとともに、その他に出現している体の多くの不定愁訴が改善していく。身体を健康な状態に戻そうとする自然修復力が働き、身体最大の臓器である皮膚の症状が改善される。その他の愁訴も同じことが言えるのだと思う。
●症例報告から、鍼治療を行うと、皮疹や痒みが改善される。その改善度は人それぞれ違うが、その症状改善に伴い、IgE抗体や好酸球値も改善する傾向にある。そして、この状態は治療を重ねるほど状態が良くなる。適切な刺激を、適切な場所に、定期的に(20回か、30回か、それは個人差あり)鍼刺激を行うことが大切である。
●牧田中医クリニックの平馬直樹 氏 が作成した難治性アトピー性皮膚炎に到る中医学的考え方の図や、江川先生がアトピーの患者に行っている弁証分類による鍼灸治療は、一つの患者の診方としては勉強になった。
●長期経過をたどる患者ほど、随伴症状が多くみられる。精神的イライラ、肩こり、ほてり感、便秘、下肢の冷え、生理不順、残尿感、食欲不振、などなど挙げるときりがないが、そこに目を向け、体全体から多くの愁訴を改善していくことこそ鍼灸治療を活かす道である。これも臨床家としては当然かもしれないが、その辺りを再認識するとアトピーの患者の対応も変わってくる。
●Th1細胞とTh2細胞。江川先生の研究テーマであり、今、取り組んでいる研究の一つ。鍼灸治療を行うことで、この二つのバランスが良くなることが動物実験では確認されている。この細胞は免疫細胞であり、比率で1細胞が多くなると自己免疫疾患に、2細胞が多くなるとアレルギー疾患になることが分かっている。私はここにも興味があり、腸管免疫において多くの免疫細胞や抗体が生成、変化している。鍼灸治療は胃腸を整えることは昔から得意とするところであり、ここが鍼灸治療とアレルギー疾患に関する接点にならないのかな~と思う。
●『笑うカイチュウ』『サナダから愛をこめて』の著者である藤田 絋一郎 先生は、お腹の中の虫(カイチュウ)を研究されている先生である。サナダムシなどお腹の中の虫は、現在ではほとんど存在しない。その腹の中の虫の減少とアレルギー疾患の増加の曲線がキレイに反対を示しているという。そこで、お腹の中の虫が減少、消滅したことがアレルギー疾患が増加した原因の一つではないかと考えている。
●藤田先生は、お腹の中の虫を潰して、その中にアレルギーを治す物質はないか研究され発見した。その物質をアトピー性皮膚炎を発症させたネズミに注射したところ皮膚症状が翌日にはキレイに改善されていた。…が、その翌日には、すべてのネズミが死んでしまった。
●この実験を通じて、外から何かを入れて治すというのではなく、体に優しく、体内の治癒力を賦活させる治療法こそ、これから必要とされてくるものであり、東洋医学の時代が必ず来ると、ドクター向けの講演会で藤田先生が話されていたと江川先生から聴いた。
●最後に、治療の工夫として生活改善を話されていた。食事について「かゆみを増す食べ物」、「皮膚バリアーを強化する食べ物」などを教えて頂いた。これはこれで必要であるが、食事も大事な治療方法の一つ。全体のバランスが大切であり、内容が大切である。東洋医学的に、あるいは生理学的に全体を捉えてどういう食事が大切で、健康に向かっていくのか、ここが重要であると感じている。「食」の問題は、これからの私が磨きをかけて勉強する一つの課題であるとも考える(アトピーに限らず)。
また、長々と書いてしまいました。
外は雪が舞っていましたが、部屋の中は熱気ムンムン、質疑応答も活発に行われた講演会でした。
勉強になった、刺激になったよ~
二葉鍼灸療院 田中良和
内容で印象に残ったこと、勉強になったことを書いておきたいと思います。
●アレルギー体質の強さを示す血液検査IgE抗体の発見者は日本人の石坂公成 氏である。
●IgE抗体はアレルギーの強さ、好酸球はアレルギーによる炎症の強さを表す。基本的なことだけれど、確認の意味で書いておいた。
●痒みとは…掻きたくなるような感覚。当たり前のようだが、当たり前でない。痒いという感覚は痛みと同様つらい症状である。また、嗜好的掻破行動というものがあり、掻くことにより、精神的りラックスを得たり、興奮した感情を落ちつけたりする。心はりラックスできるが、炎症は強くなり、アトピー症状の悪化に繋がる。掻くなと言われても難しく、ストレスにもなる。なんか上手い言い方はないものか。
●ステロイドの使用については、皮膚科学会の中でも意見が分かれている。ステロイドの使用に関するガイドラインなども出ているが、「ステロイドを使い過ぎるからアトピー症状が悪化する」という意見と、「症状が悪化するから、ステロイドを増やすのであって、ステロイドで症状が悪化しているのではない」という意見があり、分かれている。私に言わせれば、ステロイドがどんなもので、どこに作用し、どんなメカニズムで症状が改善するかを理解していれば、体に悪いか、悪くないか分かると思うのだが…
●症例報告(皮膚炎の写真も入っている)から、鍼灸治療はアトピー症状を改善するとともに、その他に出現している体の多くの不定愁訴が改善していく。身体を健康な状態に戻そうとする自然修復力が働き、身体最大の臓器である皮膚の症状が改善される。その他の愁訴も同じことが言えるのだと思う。
●症例報告から、鍼治療を行うと、皮疹や痒みが改善される。その改善度は人それぞれ違うが、その症状改善に伴い、IgE抗体や好酸球値も改善する傾向にある。そして、この状態は治療を重ねるほど状態が良くなる。適切な刺激を、適切な場所に、定期的に(20回か、30回か、それは個人差あり)鍼刺激を行うことが大切である。
●牧田中医クリニックの平馬直樹 氏 が作成した難治性アトピー性皮膚炎に到る中医学的考え方の図や、江川先生がアトピーの患者に行っている弁証分類による鍼灸治療は、一つの患者の診方としては勉強になった。
●長期経過をたどる患者ほど、随伴症状が多くみられる。精神的イライラ、肩こり、ほてり感、便秘、下肢の冷え、生理不順、残尿感、食欲不振、などなど挙げるときりがないが、そこに目を向け、体全体から多くの愁訴を改善していくことこそ鍼灸治療を活かす道である。これも臨床家としては当然かもしれないが、その辺りを再認識するとアトピーの患者の対応も変わってくる。
●Th1細胞とTh2細胞。江川先生の研究テーマであり、今、取り組んでいる研究の一つ。鍼灸治療を行うことで、この二つのバランスが良くなることが動物実験では確認されている。この細胞は免疫細胞であり、比率で1細胞が多くなると自己免疫疾患に、2細胞が多くなるとアレルギー疾患になることが分かっている。私はここにも興味があり、腸管免疫において多くの免疫細胞や抗体が生成、変化している。鍼灸治療は胃腸を整えることは昔から得意とするところであり、ここが鍼灸治療とアレルギー疾患に関する接点にならないのかな~と思う。
●『笑うカイチュウ』『サナダから愛をこめて』の著者である藤田 絋一郎 先生は、お腹の中の虫(カイチュウ)を研究されている先生である。サナダムシなどお腹の中の虫は、現在ではほとんど存在しない。その腹の中の虫の減少とアレルギー疾患の増加の曲線がキレイに反対を示しているという。そこで、お腹の中の虫が減少、消滅したことがアレルギー疾患が増加した原因の一つではないかと考えている。
●藤田先生は、お腹の中の虫を潰して、その中にアレルギーを治す物質はないか研究され発見した。その物質をアトピー性皮膚炎を発症させたネズミに注射したところ皮膚症状が翌日にはキレイに改善されていた。…が、その翌日には、すべてのネズミが死んでしまった。
●この実験を通じて、外から何かを入れて治すというのではなく、体に優しく、体内の治癒力を賦活させる治療法こそ、これから必要とされてくるものであり、東洋医学の時代が必ず来ると、ドクター向けの講演会で藤田先生が話されていたと江川先生から聴いた。
●最後に、治療の工夫として生活改善を話されていた。食事について「かゆみを増す食べ物」、「皮膚バリアーを強化する食べ物」などを教えて頂いた。これはこれで必要であるが、食事も大事な治療方法の一つ。全体のバランスが大切であり、内容が大切である。東洋医学的に、あるいは生理学的に全体を捉えてどういう食事が大切で、健康に向かっていくのか、ここが重要であると感じている。「食」の問題は、これからの私が磨きをかけて勉強する一つの課題であるとも考える(アトピーに限らず)。
また、長々と書いてしまいました。
外は雪が舞っていましたが、部屋の中は熱気ムンムン、質疑応答も活発に行われた講演会でした。
勉強になった、刺激になったよ~
二葉鍼灸療院 田中良和