小梨平ではクマが出たとの看板が出ていました。こちらに設けられた「クマベル」は間違いなく通る人のクマへの関心を高めます。通りすがった人はこのベルを半ば照れ笑いをしながら鳴らします。幸か不幸かこのベルのおかげか、この日クマに出会うことはありませんでした。
湿原を歩くために木道が整備されています。河童橋方面から上がってくる人たちと時々すれ違います。ほとんど例外なく「こんにちは!!」などとあいさつを交わします。上高地という自然の中で同じ空気を共有しているという特別感を確かめ合っているんですね。
湿原の水面の穏やかさの反面、目線をすこしあげますと、根元を洗われてかろうじて緑を枝先に残している大木や、枯死して青空を突き刺すようにして立っている木がたくさん並んでいます。沢からの水道の変化に耐えてゆかなければ生き残れない自然の厳しさを感じさせます。
これまで何回か上高地を訪れてきましたが、湿原がこれほど大きく広がっていたとの認識はありません。流れは広く緩やかで、水はあくまでも澄み切っています。冷たい水の中でも水草をそだて、多くの魚をはぐくむ優しさを感じさせます。