本堂前のお寺の掲示板に、荎草園について「広々と本堂の周辺一帯をめぐり古城跡東殿山を望むたたづまいなど、往時の雄大さは今忍ぶべくもない」とありました。かっては飛び石づたいに黄色いツワブキの花を見て木戸をくぐり回遊する池泉回遊式の大きな庭であったようです。
お座敷から最も素晴らしい景色を眺めることができるように、樹木や池などに加え、庭橋や石灯籠などを配した庭を「池泉鑑賞式庭園」と呼ぶことを知りました。広い座敷に座して静かにお庭を眺める贅沢を味わえる空間なのですね。
部屋の外側の廊下も畳敷きになってその向こうにコケむしたお庭と池があります。池の向こうはそのまま自然の山へとつながっています。山側からの細い流れは水量は少ないのですが急斜面なので滝のように流れ落ち続けています。静かなお庭の中でこの水音だけが響いています。
実がなっていました。熟すと真紅になるそうです。百人一首で 「名にし負わば 逢坂山のさねかづら 人に知られで くるよしもがな」 と詠まれているのがこれです。蔓の先が分かれて絡み合うことから恋人たちが後に会うことができるようにと願って詠んだそうです。
鍾山と看板のある僧堂の前に一株の緑が植えてありました。太い柱につるが巻き付いていて、濃い緑の葉が密集しています。この植物がお庭の名前の荎草(てっそう)とお庫裡さんにおしえていただきました。これは中国名で和名はサネカズラとのことです。