読書日和

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「まほろ駅前多田便利軒」三浦しをん

2007-11-12 23:50:43 | 小説
ついにずっと読みたいと思っていた一冊を読みました。
今回ご紹介するのは「まほろ駅前多田便利軒」(著:三浦しをん)です。

-----内容-----
「犯罪に加担しているやつを見かけたら、おまえどうする」
「放っとく」
ペットの世話・塾の送り迎え代行・納屋の整理・恋人のふりetc.―そんな仕事のはずだった。
幸福は再生する。
形を変え、さまざまな姿で、それを求めるひとたちのところへ何度でも、そっと訪れてくるのだ。
痛快で、やがて熱く胸に迫る便利屋物語。
第135回直木賞受賞作。

-----感想-----
というわけでついに読みました、しをん先生の代表作にして直木賞受賞作
「まほろ駅前」とあったので、まずまほろってどんな場所なんだろうという疑問が出てきました。
小説の説明によると、東京の南西部にまほろ市があり、そこは東京都南西部最大の住宅街であり、歓楽街であり、電気街であり、書店街であり、学生街であるとのことです。
そのまほろ市で便利屋を営む多田啓介(ただけいすけ)。
そしてひょんなきっかけで多田と行動を共にすることになる行天春彦(ぎょうてんはるひこ)。
この二人の前にはしばしば一波乱ある依頼が舞い込んできます。
はらはらしたり、ドキドキしたり、笑いもあったりで、読んでいてどんどん先の展開が気になっていきます
便利屋というのは、日常の些細なこと、例えば犬の散歩や部屋の掃除などを依頼主に代わって行う仕事です。
「便利屋」という職業と、多田と行天の二人、それにまほろ市の雰囲気、この3つが上手く合わさっているような気がします。
この本のハードボイルドな感じはそこから生まれているのだと思います。

多田と行天は昔同じ高校に通っていました。
その高校時代、多田は行天に対して悔やんでも悔やみきれないことをしてしまいました。
以来、行天には気まずい思いを持っています。
このあたりの伏線はしをん先生の真骨頂ですね
この他にも伏線があって、物語に緊張感を持たせています。
ただ依頼をこなす便利屋物語ではなく、多田や行天の悩みや謎、依頼主やその回りの人の苦悩・葛藤が、緊張感たっぷりの人間ドラマとなっています。
ほんとにすばらしい物語です
たぶん「まほろ駅前」だから、これだけドラマチックなストーリーが出来たのではと思います。
これが別の駅名だったら、便利屋という仕事としっくりこないような気がしますね。
まほろ駅の近くには風俗街があったり、ドラッグの売人がいたりして、ちょっと物騒な一面もあります
でもこのちょっと物騒な感じが、便利屋二人の雰囲気とよく合うんですよね。

あと、しをん先生の小説には、必ず心に残る一文があります。
今回もあったので、それをご紹介します。
「愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと」

小説を読んでいて、んっ、これは!という文に巡り合うことってありますよね
しをん先生の小説には必ずそういう文があります。
だから読みながら常にワクワクドキドキできるのだと思います。
次の作品でもきっとワクワクドキドキさせてくれることでしょう
それではまた。

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