この記事で小説カテゴリーが通算50記事になります。
節目の50記事目でご紹介するのは、「さくら」(著:西加奈子)です。
-----内容-----
ヒーローだった兄ちゃんは、二十歳四ヶ月で死んだ。
超美形の妹・美貴は、内に籠もった。
母は肥満化し、酒に溺れた。
僕も実家を離れ、東京の大学に入った。
あとは、見つけてきたときに尻尾にピンク色の花びらをつけていたことから「サクラ」と名付けられた十二歳の老犬が一匹だけ。
そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。
僕は、実家に帰った。
「年末、家に帰ります。おとうさん」。
僕の手には、スーパーのチラシの裏に薄い鉛筆文字で書かれた家出した父からの手紙が握られていた―。
-----感想-----
「さくら」は以前から気になっていました。
書店の文庫本コーナーに行くと、西加奈子さんの本がクローズアップされているのを見ることがあります。
「あおい」という本が、「『さくら』でおなじみの西加奈子さんのデビュー作」と紹介されていて、西加奈子さんって誰なんだろう?と思いました。
そして、『さくら』という小説は有名なのか、なら一度読んでみようかな、というように興味を持ちました。
内容は、「長谷川家」という一家の、過去から現在までへの軌跡が描かれています。
長谷川家は父、母、この小説の語り手である薫(かおる)、薫の兄の一(はじめ)、妹の美貴(みき)の5人家族でした。
かつては幸福だった長谷川家。
しかし、一の事故をきっかけに、長谷川家は少しずつ崩壊していきます。
小説の冒頭、すでに長谷川家は崩壊していました。
かつては幸福だった長谷川家がなぜ崩壊してしまったのか、それを明らかにするべく、物語は過去へとさかのぼります。
まだ美貴も生まれていない昔までさかのぼって、そこから物語は過去進行形で進んでいきます。
そこには、幸福な長谷川家の姿がありました。
一と薫はまだ幼稚園で、二人とも毎日楽しく過ごしていました。
父と母もとても仲が良くて、幸せな毎日を送っていました。
やがて美貴が生まれ、5人家族になった長谷川家は、その後もしばらくは幸せでした。…が、一家の運命を変えてしまう日が、確実に迫ってきます。
一の事故です。
私はてっきりこの事故で一が死ぬのだと思っていましたが、この事故では一命をとりとめました。
その後車椅子生活になってしまいましたが、「さくら」と散歩にいけるくらいまでには回復しました。
しかし、一家に与えた影響は大きく、父は痩せ始め、母は太り始めていきます。
そしてついに、一家の崩壊を決定的なものにしてしまう、一の死が訪れます。
母はさらに太り、美貴は奇抜な行動に拍車がかかり、父は家出してしまいます。
ここまで物語が進んで、舞台は現在に戻ってきます。
家出した父が戻ってきて、長谷川家にどんなことが起こるのか、バッドエンドのまま終わってしまうのか、それとも何かどんでん返しがあるのか、興味深く読むことができました。
最初の方こそ退屈な小説かもという印象でしたが、読み進めるうちにどんどん面白くなっていきました。
特に中盤以降は、すごい展開に衝撃を受けることがありました。
美貴の恋心と、強烈な嫉妬から恋敵を排除しようとする恐ろしい行動、このエピソードが一番すごかったと思います。
一、父、母の三人の運命にも影響を与えるほどのエピソードでした。
西加奈子さんは物語の構成が上手いだけでなく、文章も綺麗で読みやすかったです。
最後、犬の「さくら」を巡るエピソードにはハラハラしましたが、少しだけ希望の見えるラストだったので良かったです。
「さくら」はこの先も心に残る一冊になると思います。
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
節目の50記事目でご紹介するのは、「さくら」(著:西加奈子)です。
-----内容-----
ヒーローだった兄ちゃんは、二十歳四ヶ月で死んだ。
超美形の妹・美貴は、内に籠もった。
母は肥満化し、酒に溺れた。
僕も実家を離れ、東京の大学に入った。
あとは、見つけてきたときに尻尾にピンク色の花びらをつけていたことから「サクラ」と名付けられた十二歳の老犬が一匹だけ。
そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。
僕は、実家に帰った。
「年末、家に帰ります。おとうさん」。
僕の手には、スーパーのチラシの裏に薄い鉛筆文字で書かれた家出した父からの手紙が握られていた―。
-----感想-----
「さくら」は以前から気になっていました。
書店の文庫本コーナーに行くと、西加奈子さんの本がクローズアップされているのを見ることがあります。
「あおい」という本が、「『さくら』でおなじみの西加奈子さんのデビュー作」と紹介されていて、西加奈子さんって誰なんだろう?と思いました。
そして、『さくら』という小説は有名なのか、なら一度読んでみようかな、というように興味を持ちました。
内容は、「長谷川家」という一家の、過去から現在までへの軌跡が描かれています。
長谷川家は父、母、この小説の語り手である薫(かおる)、薫の兄の一(はじめ)、妹の美貴(みき)の5人家族でした。
かつては幸福だった長谷川家。
しかし、一の事故をきっかけに、長谷川家は少しずつ崩壊していきます。
小説の冒頭、すでに長谷川家は崩壊していました。
かつては幸福だった長谷川家がなぜ崩壊してしまったのか、それを明らかにするべく、物語は過去へとさかのぼります。
まだ美貴も生まれていない昔までさかのぼって、そこから物語は過去進行形で進んでいきます。
そこには、幸福な長谷川家の姿がありました。
一と薫はまだ幼稚園で、二人とも毎日楽しく過ごしていました。
父と母もとても仲が良くて、幸せな毎日を送っていました。
やがて美貴が生まれ、5人家族になった長谷川家は、その後もしばらくは幸せでした。…が、一家の運命を変えてしまう日が、確実に迫ってきます。
一の事故です。
私はてっきりこの事故で一が死ぬのだと思っていましたが、この事故では一命をとりとめました。
その後車椅子生活になってしまいましたが、「さくら」と散歩にいけるくらいまでには回復しました。
しかし、一家に与えた影響は大きく、父は痩せ始め、母は太り始めていきます。
そしてついに、一家の崩壊を決定的なものにしてしまう、一の死が訪れます。
母はさらに太り、美貴は奇抜な行動に拍車がかかり、父は家出してしまいます。
ここまで物語が進んで、舞台は現在に戻ってきます。
家出した父が戻ってきて、長谷川家にどんなことが起こるのか、バッドエンドのまま終わってしまうのか、それとも何かどんでん返しがあるのか、興味深く読むことができました。
最初の方こそ退屈な小説かもという印象でしたが、読み進めるうちにどんどん面白くなっていきました。
特に中盤以降は、すごい展開に衝撃を受けることがありました。
美貴の恋心と、強烈な嫉妬から恋敵を排除しようとする恐ろしい行動、このエピソードが一番すごかったと思います。
一、父、母の三人の運命にも影響を与えるほどのエピソードでした。
西加奈子さんは物語の構成が上手いだけでなく、文章も綺麗で読みやすかったです。
最後、犬の「さくら」を巡るエピソードにはハラハラしましたが、少しだけ希望の見えるラストだったので良かったです。
「さくら」はこの先も心に残る一冊になると思います。
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。