読書日和

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「大地のゲーム」綿矢りさ

2013-12-18 19:44:36 | 小説
今回ご紹介するのは「大地のゲーム」(著:綿矢りさ)です。

-----内容-----
私たちは、世界の割れる音を聞いてしまった―。
21世紀終盤。
巨大地震に見舞われた首都で、第二の激震に身構えつつ大学構内に暮らす学生たちと、その期待を一身に集める<リーダー>。
限界状況を生き抜こうとする若者の脆さ、逞しさを描く最新長篇!

-----感想-----
この小説は東日本大震災をモデルにしたのだと思います。
首都東京を襲った巨大地震。
街中が壊滅し、絶望の中に暮らす「私」「私の男」「リーダー」。

物語は「学祭二週間前」から始まります。
大地震の後で奇跡的に形を保つ大学構内にて、形成されていくコミュニティー。

「反宇宙派」なるなぞの組織も出てきます。
”大きな支配に疑問を抱き、個人へ立ち返る精神、指導者も国家も我が国も他国も世界もすべてを疑う精神”とのこと。
リーダーが文字どおり「リーダー」を務め、「私」と「私の男」もそのメンバー。
歪な世界となってしまった大学構内にて徐々に勢力を伸ばしていきます。

「あの夏の日以来」や「あの日」という言葉が何度も出てきます。
P30 あの夏の日未曾有の大地震が私たちを襲った。そして、また一年以内に巨大な地震が来ると政府は警告している。

どうやら「あの夏の日」に大地震が首都東京を襲い、さらにまた一年以内に巨大な地震が来るようです。
大学の中が主な舞台なのですが、家に帰らず、大学に寝泊りしている人がすごく多いです。
大地震の日以来、みんなどこか歪んでしまった印象を受けます。
「どうせもうダメだ」というような。。。
それらの秩序を何とか保っているのが「リーダー」です。

絶望的大地震がすぐ目の前に迫っていて、ワクワクするような展開ではないですが、そんな中にも綿矢さんらしい表現があったのでご紹介。

P34 私は野良猫、爪のかわりに見えない槍を持って生きている


こういうの、綿矢さんらしくて良いんですよね
キラリと光る独特な表現が出てくるとことがあります。

物語は次第に「学祭一週間前」→「学祭二日前」→「学祭当日」と、学祭の日へと向かっていきます。
学祭の日に何が起きるのか、まさか本当に大地震が来るのか…
ここが山場です。
緊迫の物語後半、なかなかの読み応えでした。
いずれ必ず起きると言われている首都直下型地震なだけに、その時自分はどこに居るのだろう、無事で済むのだろうかといったことも少し考えさせられました。


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