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似顔絵(高峰秀子さん・「浮雲」 幸田ゆき子) (portrait HIDEKO TAKAMINE)

成瀬巳喜男の傑作「浮雲」で、
戦時中、仏印で知り合い関係を持った男と、終戦直後の荒んだ日本で
離れるに離れられない不倫関係を続けながら、どこまでも堕ちて行く女を
最後には神々しい輝きすら感じさせる演技で、高峰さんは演じ切った。
森雅之が言い放つ、自虐に満ちた皮肉が、
見ている自分も言ってみたい衝動に駆られるような秀逸なもので、
それを鋭く切り裂くような高峰さんの台詞と、
それでいながら男に惹かれて行く、矛盾した心情を
小利口な解釈などせず、そのまま鮮烈に我々に示してくれた。
この少々くたびれたカップルの行く末を、
地の果てまで見放さずに見つめ続ける作者の冷めた視線が、
成熟した映画を生みだしたのだった。
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