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似顔絵(高峰秀子・「名もなく貧しく美しく」 秋子) (portrait HIDEKO TAKAMINE)

名残は尽きなくとも
もう高峰さんに別れを告げなくてはならないのだろう。
最後に(と言っても、これからも似顔絵は描くだろうが)、
やはり初めて高峰さんの演技に打たれた「名もなく貧しく美しく」から一枚描こう。
この映画は耳の不自由な夫婦の話で、
夫婦間の会話は全て手話(妻だけは声を出すことができるが)。
その結婚から子育てのさまざまな困難を描いている。
DVDが出ているので、詳しくは見ていただきたいが、
手話をしながら、気持ちが顔に溢れ出る、その演技が素晴らしい。
この映画で、人間の表情の美しさに目覚めた、と言ってもいいくらいだ。
描いたのは、映画のラスト近く、
両親を疎んじて逆らっていた息子が、成長して両親の有り難さを知る。
その卒業式で、「仰げば尊し」が流れる中、
校庭に面した窓の外から、いとおしそうに、息子を眺める
高峰さんの「母親のまなざし」である。
高峰さんは私の両親とほぼ同世代だから、
こんなシーンを見ると、母とダブる部分があり、
私には特別な感慨があるのだ。

もう、高峰さんはいないけれども、
教えてもらった「人間の美しさ」は忘れずにいようと思う。
高峰さん、本当に有難うございました。
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