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似顔絵(高峰秀子さん・「綴方教室」豊田正子)(portrait HIDEKO TAKAMINE)

昭和13年の山本嘉次郎監督「綴方教室(つづりかたきょうしつ)」で、
高峰さんは13歳とは思えない出色の演技で、
いわゆる子役からの脱皮を果たした、と言われている。
いまその映画を見ると、随所にその天分のきらめきを感じる。
例えば、こんなシーンだ。
ブリキ屋一家の娘・小学6年の正子は、貧しい中でも明るく暮らしている。
しかし、先の見えない貧窮の中、ある朝食事中に、近所で芸者になった娘の噂話をしていた母が、
あんな生活もいいかもしれない、きれいな着物を着てなあ、と、
正子の方を笑って見て言う。
その瞬間、穏やかにご飯を食べていた正子の顔が、
ふっと不安に曇るのだ。
その無言の表情の移り変わりを、高峰さんは見事に演じた。
無言で、その心理を痛いほど感じさせる名演である。
この年齢の演者によく用いられる、清新な瑞々しい演技、などという型にはまったものではない。
堂々たる大人の演技である。
高峰さんは、只者ではなかったのである。
(ビデオからの模写なので、ラフにしか写せないのが残念だ。)
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