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ブログ版 シュプリッターエコー

栃原敏子展――ジャズの魅力

2008-04-01 18:58:06 | 美術
 栃原敏子さんの個展を神戸・ハンター坂のギャラリー島田で見ました。
 いつも衝撃的な抽象画を並べる栃原さんです。
 詳しくはSplitterecho(シュプリッターエコー)のウェブ版に書きたいと心積もりしていますが、展覧会の会期が2日(水)までですので、さしあたりフットワークの軽いこのブログで紹介しておきたいと思います。

 力強い作品です。
 モダンジャズのインプロビゼーション(即興)を思わせます。
 主としてリズムとメロディーによって編み出される曲の主題と、そしてピアノならピアノの、サックスならサックスの、それら楽器の音そのものによって表現されるミュージシャンその人の命の力、その二つの要素のきびしいせめぎあいがモダンジャズの魅力です。
 栃原さんの絵にもこれと同じような二つの力のせめぎあいがあるのです。

 絵にはある主題、主題というような明快なものでなくてもある印象、あるいはある雰囲気、あるいはある直感が画家によって持ち込まれます。
 それが描く動機になるのです。
 栃原さんの場合もそこは基本的に同じです。
 ところがその主題(or 印象、雰囲気、直感)に対抗するように、すさまじい命の力がその絵にあふれてくるのです。

 その命の力は具体的には強い色、強い構成になって表れます。
 栃原さんが赤い絵の具を使うと、なんでこんなに力強い赤になるのか、栃原さんが例えば画面を二つに分割すると、なんでこんなに奥行きが深くなるのか、じっさい、不思議でなりません。
 栃原さんの真価がむしろまずニューヨークで発見されたのも、あるいはこのジャズ的な魅力と深さがストレートに共感を得てのことではなかったか、とそんなふうにも思えます。

 創造というものの神秘な力を実感させる画家なのです。

 ギャラリー島田は078.262.8058