社会科学上の不満

政治・経済上の不満のハケ口(左翼出入り禁止)
外交と防衛、歴史と現状についての不満のハケ口。(観念論の方は出入り禁止)

矛盾と切磋琢磨、似ているようで大きく違う

2015-04-08 00:00:49 | 外交と防衛

 自衛隊、この場合「海自」であるがこれを「矛盾」と言うべきか「切磋琢磨」と言うべきか?言葉遊びで申し訳ない。

 今から20年程前、海自のP3C対潜哨戒機が中国の「漢」級原子力潜水艦を執拗に追いかけたニュース映像があった。これには世界中の海軍関係者が驚いた。P3C対潜哨戒機の能力に、しかし同じ機種を有する米海軍は海自の対潜哨戒能力に驚きを禁じえなかった。「自分たちではこの様に効果的に運用できない」と。そのP3C対潜哨戒機を約90機保有する海自、脅威の潜水艦ハンターである。因みにP3C対潜哨戒機1機で四国ほどの面積の海域の対潜哨戒が可能である。しかし日本の領海や接続海域は予想以上に広大である。200海里の経済海域の広さであれば日本は世界のベスト10上位にいる広大さである。

 通常、米海軍以外で対潜哨戒機を2桁の数装備している国は日本ぐらいである。リムパックでも海自の対潜哨戒から逃れえる米国の原潜は無かった。

 

   *P3C対潜哨戒機

 唯一ソ連(現ロシア)のアルファ級潜水艦(現在廃艦:セヴェロドヴィンスク型に切り替わる)がしばしば逃げおうせた。このアルファ級潜水艦、艦体がチタン合金で造られている攻撃型の原子力潜水艦である。戦術兵器である。戦略兵器たるロシアの戦略潜水艦(SLBM発射潜水艦)は、当時タイフーン級35,000tとデルタ級28,000tであり第二次大戦中の戦艦や空母程度の大きさである。乗務員の健康維持のため艦内プールまである。その戦略潜水艦をガードするのがアルファ級潜水艦の任務の一つである。

 *デルタ級戦略潜水艦 と タイフーン型戦略潜水艦

  いずれも最新艦に更新

 

 *旧ソ連のアルファ級原子力潜水艦

 故にこのアルファ級原子力潜水艦、運動性も潜航深度も他国を寄せ付けない。約1000mの潜航深度を有する。第二次世界大戦時の潜水艦の安全深度が約60m、実際は100mは潜航できたようだ。現代の原潜の潜航深度は約300mである。軍事機密なので詳細は不明である。その中でアルファ級の1000mの潜航深度は飛びぬけて脅威である。水圧で魚雷も潰れてしまう。

 それでも海自のP3C対潜哨戒機のソノブイはこのアルファ級を捉えていた。無音潜航中は不可能であったそうだが、航行中のエンジン音やキャピティーション・ノイズ(スクリューが発する音)を捕らえていたそうだ。因みにマッド(磁気探知機)はチタンが非磁気性金属であるため反応しない。原子炉冷却水を熱源探知で先ず捜索する。

 このアルファ級潜水艦対策で開発されたのが89式長魚雷であり水深900mでも圧壊(水圧で潰れる)しない魚雷である。

 そこで、当然当時の海自保有の潜水艦はこのP3Cから逃れることは可能か?と言う疑問は誰でも持つ。結果当時の海自の最新の「うずしお型潜水艦」までP3Cに直ぐに発見されるという結果になった。正に「矛盾」の語源を再現したような訓練であるが、P3Cが勝利した。その後潜水艦もこの弱点を補強改善してきた。現在の「そうりゅう型潜水艦」では、P3Cの能力での発見が不可能に近いレベルとなった。

 

   *そうりゅう型潜水艦:こくりゅう?

 そこで今度は新たに国産対潜哨戒機P-1を作成し、この「そうりゅう型潜水艦」が発見できるか「切磋琢磨」している。が、「そうりゅう型潜水艦」の発見は困難なようだ。更にソナー等の改善が進むであろう。

 *P1対潜哨戒機

 この様にアルファ級との命掛けの鬼ごっこを20年以上こなしてきた海自に、中国の大音響の潜水艦を発見することは容易である。

 最新の改キロ級(非原子力)をベトナム海軍が購入した。その教育に海自の潜水艦乗りが派遣されている。このベトナムの改キロ級の4割増しの静粛性がおよそロシアの正規の改キロ級の静粛性である。ロシアは他国に武器を輸出する時は劣化版を輸出する、プーチン大統領の発言である。米国もその他の武器輸出国も同様である。「その劣化版の更に劣化コピーしか作れないのが中国である」とこれもプーチン大統領談。

  *ロシアからベトナムが購入した改キロ級潜水艦

 日本はこの劣化版兵器を魔改造でオリジナルより凄い性能にする国なのだそうだ、米軍関係者曰く。

 この様に潜水艦と対潜哨戒機の開発や改造は正に「切磋琢磨」の関係である。日本の防衛はこの「切磋琢磨」によるところも大きい。一見「矛盾」の再現にしか見えないが、ここに、民間企業で言う「改善」の哲学がある。この「改善」の哲学が生きているうちは左翼の妨害にも対応可能である。左翼系マスコミの妨害にも。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする