今日は『賀茂曲水宴』についてお話します。曲水宴(きょくすいのうたげ)は、中国で禊を行う行事として秦の時代(紀元前700年代)から始まったといわれています。日本では、顕宗天皇(485年)が初見で大伴家持や藤原道長などが私邸において催したと言われています。今現在も、北は北海道旭川市の男山庭園から南は鹿児島市の仙巌園と広がっています。
賀茂曲水宴は上賀茂神社で行われ、1182(寿永元)年に当時の神主が曲水宴を催したのが始まりで、昭和35年に再興されたが一時中断、平成6年皇太子殿下御成婚を機に奉祝行事として再々興されました。毎年4月第2日曜日に開催され、平安時代の雅そのままを受け伝えるためにその当時のまま今も行われています。曲水宴は、禊の他にも水流に盃を浮かべて漢詩をつくることも行っていました。賀茂曲水宴は、上賀茂神社内の渓園で行われ、渉渓園に流れる小川の淵に5名の歌人(男性は衣冠、女性は小袿という平安時代の宮廷衣服を着用)が座り、小川の上流より水鳥を模った舟に盃を乗せて流し、その舟が歌人の前を通り過ぎるまでに和歌を1首書き終えます。5名の歌人の前を盃が通り過ぎる間、笙や龍笛、太鼓、箏などの雅楽が奏でられ、またその当時この宴で焚かれていた薫物(たきもの)お香が、悠久の世界に誘ってくれます。そして、5名の歌人の前を舟が通り過ぎ、それぞれ和歌が完成されると一首一首、独特の節回しで披講(和歌朗詠)されます。これもまた趣があり心地よく感じます。慌ただしい日々の中、こういったゆっくりした時間を過ごすことができるのも日本人の粋ではないでしょうか。
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