すずりんの日記

動物好き&読書好き集まれ~!

小説の原点②

2005年12月22日 | 小説・短編、他
彼女は、「仙人」になりたいと思っていました。

人の近づかないような山に住み、霞を食べて生きている。
彼女にとって「仙人」は、
「選ばれた人間」ではなく、「神」でした。

彼女は、人の力になるのがもともと好きで、
悩みを聞いたり、学を助けたり、心をのぞいたり、
彼女の周りの、一部の人々に力を貸していました。

ところが、噂が噂を呼び、
彼女の名が広い範囲にまで知れ渡るようになると、
今までの何十倍という人が、
1人で何十個もの助けを求めて、
彼女の元へ、やって来るようになりました。

でも彼女は、
人の力になるのが好きでした。

彼女は、
人の力になるのがもともと好きだったので、
昨日も、今日も、明日も、
人々に力を貸していました。

ある日、
彼女の元に来た人々の列が少しだけ途切れたので、
彼女は、一休みしました。
その時彼女は、
自分の足元に霞のようなものがたち込め、
体が宙に浮いてくるのがわかりました。

彼女は喜びました。
これで、もっと人助けができる、と。
彼女は仙人になれましたが、
まだ半人前なので、宙を浮くことしかできませんでした。

人々は、彼女の姿を見て、喜びました。
人々は、言いました。
「あの人は、宙を浮けるだけじゃなくって、なんでもできるんだ。
姿を消したり、雨を降らせたり、物を出したり。
あの人は、神様なんだよ。」

しかし、彼女は、まだ半人前なので、
ほんの少し宙を浮くことと、
人の悩みを聞いてあげることしかできませんでした。

私は神じゃない。
彼女は、何度も、人々に訴えようとしました。
しかし、神としての彼女を求めてやってくる人々の群れは、
そんな彼女を許しませんでした。

彼女は、人間社会に絶望しました。

そして、それと同時に、
自分が、「神」ではなく、
人々と同じ、「人間」であるということに、
腹が立ちました。

彼女は、
人間社会を見下ろせるような高い山に棲みつき、
霞を食べて生きるようになりました。

彼女は、
自分にとっての「人間」として、ではなく、
人々にとっての「神」として、

今も、あの山に棲んでいることでしょう。


                

こんなことを書いていたころもありました


コメント
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