すずりんの日記

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小説「雪の降る光景」第3章1

2008年03月15日 | 小説「雪の降る光景」
 4月25日に、我がドイツ軍の殺人部隊であるナチス親衛隊は、ワルシャワゲットーの約2万7千人のユダヤ人の逮捕を報告した。今年の初めに、今まで以上に諸問題の多くなったゲットーを壊すことが決まり、1940年に約40万人いたユダヤ人が約6万人にまで減ったのを機に、親衛隊がゲットー内に乗り込んだのである。あくまでも逮捕が目的ではあったのだが、「クズで人間以下」の彼らは自らの運命を悟ったのか、「抑圧者」である我々に勇敢に抵抗した。怒り狂った親衛隊は、ユダヤ人居住区全体を1ブロックも残さず火をつけて破壊した。それでも彼らはあきらめず、熱と煙と爆発のために発狂して死ぬ方を選んだ。
 逮捕されたユダヤ人たちは絶滅キャンプのあるトレブリンカへ送り込まれ、その後、この作戦の総指揮官であるストロープ将軍は、総統にこう報告した。
「逮捕したユダヤ人の総計5万6065名のうち約7千名はゲットー内で処理。6929名はトレブリンカに送り、処理。残りの5~6千名のユダヤ人は、爆破で死ぬか炎に包まれて命を落としました。もうゲットー内には1人もユダヤ人はいません。」
「また1つ、悩みの種が減ったというわけか。」
「そういうことです、総統。」
ボルマンは、ゲットーのことよりも遥かに大きな“我がドイツの存亡”という問題が残っていることには触れなかった。


(つづく)

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