すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

天然姉妹(バックナンバー)

2007-03-02 11:38:58 | うちのキヨちゃん
 キヨちゃんには、九州に姉妹がいる。そのほとんどが同じような明るい天然系である。彼女たちの笑い声と共に繰り出されるマシンガントークは、お国訛りも手伝って、大変ヒアリングが難しい。
 みんな焼酎が好きで、よく飲みよく笑い、よく食べる。そしてみんな涙もろく、情に厚く、わんわん泣きながら話すのである。
 ある日、一人の姉から電話が入った。何でもキヨちゃんの幼なじみの連絡先が分かったとかで、教えてくれるためにかけたらしい。若くして四国に来たキヨちゃんにとって、幼なじみは何より連絡したい相手に違いない。
 嬉しそうにメモを片手に、キヨちゃんは姉の言う電話番号を復唱していた。
 「ふんふん、08××―××―△△△△ 。」
ふと聞くともなしに耳に入ってきた聞き覚えのある番号に、私はメモをのぞき込んだ。そこには紛れもない我が家の番号が書かれていた。
 「これでいいんじゃな、〇〇ちゃんの番号は。」
何の疑問も持たず納得しようとしているキヨちゃんに、私は慌てて忠告した。
 「お母さん、それ家の番号。」
 「え?まあ!」
と初めて気づいたキヨちゃんは、姉にその事を指摘し電話を切った。そして姉を心配する。
 「困ったもんじゃ。ぼけたんかいな。」
 しかし思うのである。妹の家の番号を他人の番号と間違える姉も姉かもしれないが、そもそもどちらもよその電話である。間違えても仕方ないと思うのである。
 それならば、復唱しながら我が家の番号と気づかないキヨちゃんの方がひどいのではないか。
 「姉さん、しっかりしなよ。」
電話をかけ直し、そう注意するキヨちゃんに小声で
 「お前もな。」
と突っ込まずにはいられなかった。


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コメント (3)
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