すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

サバ(バックナンバー)

2007-03-10 12:07:33 | うちのキヨちゃん
 父とうちのキヨちゃんは三歳違いで、父が上である。彼女はこの年の差がベストであると、いつも自慢気に私に話していた。
 ところが、そう言っておきながら、しばしばキヨちゃんは年をサバ読むのである。しかもそれはごく自然に、悪気もなく「ついうっかり」サバ読んでしまうのである。
 もう二十年以上も前「フルムーン」の名で夫婦の割引切符が売り出されたことがある。それは夫婦の年齢を足して八十歳以上の人を対象としていた。そのCMを見ながらキヨちゃんはこう言った。
 「えーっと、父ちゃんが五十だろ。うちが二十五だから・・・。まあ残念、五年足りん。」
 私は開いた口が塞がらなかった。冗談ではないのだ。本気でそう計算しているのだ。
 また最近ではこんな事があった。前年喜寿を迎えた父を連れて、氏神様にお参りに行った時である。お参りの折は大抵数え年で言うものである。だから父は七十九歳、キヨちゃんは七十六歳ということになる。
 体の弱い父を本殿前で私に預けたキヨちゃんは、家族の分もお参りするからと、元気良く石段を登った。大きな声で祝詞をあげ
 「(父の名)七十九歳、キヨ子四十六歳、(私の名)・・・。」
と言っているのである。サバを読むにもほどがある。神様も三十歳もサバ読まれたのでは、苦笑するしかあるまい。
 そのことを指摘すると、カラカラと笑いながら
「まあ、気つかなんだわ。まあ、ええでえ。」
で済まされてしまうのである。
 どうせなら娘の年もサバ読んで欲しいものである。


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コメント (4)
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