すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

メール(バックナンバー)

2007-03-17 16:10:12 | うちのキヨちゃん
 アナログ人間のキヨちゃんには、メールというものが何かよく分からないらしい。一応「これで文章を打って送ると、手紙になって相手にとどくのだ」と説明していた。もちろん、メール何て言葉は返ってややこしくなるので話さない。
 そんなキヨちゃんは、私が仕事の日はいつも着信を入れている。それがもうそろそろ上がる時間とかではなく、どう考えても携帯を触りそうもない時間に入っているのだ。
 まあ着信履歴さえ残っていれば、用事があることは分かるわけだし、急用なら会社にかけるだろうから、見た時点で私の方から電話すれば事は足りる。だから特に疑問にも思わなかったのだ。例えキヨちゃんが「分かった?」と聞いても、それは「着信に気づいた?」という意味だと思って話を続けていたのである。
 そんなことが何回かあったある日、ついにキヨちゃんの言いたかった事が明らかになった。いつものように着信に電話すると
 「今日お風呂沸いてるよって、(メール)入れといたけど、分かった?」
と言ったのである。キヨちゃんがメール?いや、そんなことは不可能なのだ。何故なら彼女はパソコンも携帯も持っておらず、例え持っていても、メールを打てるはずもないのだから。そこでそのことを説明した。
 「え、これって電話口で喋った内容が、文字になって届くんと違うん?」
真剣に語るキヨちゃんであった。そうなのだ。キヨちゃんはそう思い込んでいたため、毎回鳴り続ける呼び出し音に、一所懸命語りかけていたのだ。
 常に時代の先を行くキヨちゃんである。近未来、こんなメールが出来る日は来るだろうか。


にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ ←ここをクリックしてお立ち寄りください。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする