すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

皆様に、感謝の気持ちを込めて・・・

2008-10-18 22:59:08 | ひとりごと
 15日、親友ナースは私の代わりに父を見舞ってくれていた。いつもなら、そのまま帰るのにその日は何となく私が病院に着くまで待った方がいい気がしたらしい。夕方血糖値が低いことに気づき、対処の遅いその日のナースに代わってあれこれ世話をしてくれた。私が到着して、夕飯を介助した。相変わらず食欲はなかったが、それでも頑張って食べてくれた。
 1回目の透析を済ませるのを見届けてから、ナースとふたりして病院を出た。16日17日が休みなので、翌日早くから私が詰める予定だった。
 「父ちゃん、ほな帰るわな。また、明日。」
 「おお。気を付けて帰れよ。車飛ばすなよ。」
・・・これが、父との最後の会話になった。
 病院を出て間もなく、父は嘔吐し始めたらしい。急激なレベルダウン。私が家に着くと同時くらいに携帯が鳴った。病院までの30分、これほど道のりを遠く感じたことはなかった。車の中で号泣しながら
 「神様、まだ足りませんか!まだ我慢が足りませんか!まだ不足ですか!」
と悪態を付いた。
 病院に着くと、父は既に下顎呼吸になっていた。酸素は15リットル。手足を出来る限りさすった。ごめんね、ごめんね、これ以上がんばれって言いたくないけど、もう少しだけがんばって。泣きながらそればかり祈っていた。そして、義理堅い父は、親戚の到着を待ちわびたように、21時21分息を引き取った。
 葬儀の日までは、とにかくしなければならないことが多くて、悲しむ暇がなくありがたかった。けれど通夜に来てくれる人の中に、友人の顔を見たときだけは我慢が出来なかった。
 父は家に着いた時から安らかな顔をしていたが、通夜の日、葬儀の日とどんどん柔らかな顔になっていって不思議だった。もちろん納棺師の硬直してしまった身体を丁寧にほぐして、和服を着せてくれた技術や死に化粧もあったろうが、そうとばかりはいえない説明のつかない変化だった。
 キヨちゃんは、危ういくらいにハイテンションでなすべきことをこなしていた。けれど、葬儀の日17日は糸が切れてしまった。葬儀場まではしっかりしていたが、葬儀の最中に
 「父ちゃんどこにおるん。」
とつぶやいたり、焼香からは一人で立っていることが出来なくなった。
 田舎では葬儀の後、火葬場には配偶者は行かない。近所の人と家に残って作業をすることで、火葬という悲しい場面には立ち会わない習わしだ。しかし、今回は葬儀場で行ったので、ひとり葬儀場に残すのも不憫で火葬場に連れていった。そのことで、キヨちゃんはひどく取り乱したが、それでも骨を拾うときにはしっかりとしていた。受け止めることが出来たのだと思う。
 これからまだ、片づける問題がたくさんある。悲しみは後から追いかけてくるのかもしれない。でも、今は私も大丈夫。
 皆様に本当に感謝している。いつでも傍にいて、父の二人目の娘役をしてくれた親友ナース。公私ともに勇気づけてくれた、会社の友人。父のためにあらゆる可能性を探ってくれた担当ケアマネ。お風呂に入れてくれた訪問入浴スタッフ。献身的だったヘルパースタッフ。無理難題をいう私に根気よくつきあってくれた主治医。いつでも駆けつけてくれた親戚。電話で私よりも大泣きした友人。遠くから来てくれた友人。定年して何年にもなるのに、葬儀に来てくれた父の会社の人々。父のために折り鶴を送ってくれた涼々さん。鶴はお棺にいれました。音楽を送ってくれたTさん。書くことを勧めてくれた千葉男さん。書くことで私は救われました。疎遠だったのに、応援してくれて葬儀にも来てくれた祥ちゃんさん。作品を送ってくれて勇気づけてくれたremiさん。そして、ブログを通して応援してくれた、ふくださん、マギーさん、yoshiさん、macotchaさん、ronraraashさん、まいどさん、たぬっぺさん、yumibooさん、ちびさん、かぶらさん。まだまだ、たくさんの方々・・・。本当にありがとうございました。
 父はきっとしあわせだったと思います。介護に満足することはないと感じ、もっとしてあげたいこともありました。後悔していることもたくさんあります。でも、たくさんの人に支えられて、父はしあわせだったと思います。心残りは最後の会話が「またね」だったこと。伝えたい言葉、聞きたかった言葉。伝えることも聞くことも叶わなかったけど、私の心が今穏やかであることが、答えなのかも知れない。
 本当に皆様、長らく応援ありがとうございました。次の書き込みからは元気なキヨちゃんと私の報告が出来ると思います。
コメント (8)
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