副題は「もう一つのアメリカを行く」だ。「もう一つのアメリカ」とはアパラチア山脈をこえた、オハイオ、イリノイ、カンザス、ネブラスカ州などの地域を指す。これらの州はかつて製鉄業や製造業で繁栄したが、経済のグローバル化でメキシコ、中国などの安い労働力を頼って会社が海外移転した結果すっかり没落してしまった。その余波で、白人のブルーカラー労働者たちの多くは失業の憂き目に会い、かつてのアメリカを支えた中産階級がやせ細ってしまった。特に五大湖周辺はラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれ経済的に疲弊している。トランプ大統領はここに目をつけ、再びアメリカを偉大な国にすると言い、自国中心主義によって雇用の増大を訴えた。そして選挙に勝利した。本書はそのトランプを支持した人々を取材したものだ。
田舎のバーや食堂、床屋、自宅などでのインタビューを聞くと、彼らの現在のアメリカに対する不平不満が爆発していることが分かる。我々外国人が知っている情報とはアメリカの大都会のメディアが発したもので、片田舎の労働者や農民の生活実態のレポートを見聞きすることはまれだ。彼らの都会の知識階級に対する反感は相当なものだ。有名大学を出て、有名な会社に入って大金を得て優雅に暮らす都市生活者を彼らは既得権益層と見なし批判する。富の偏在化はアメリカの大きな課題だと夙に指摘されてきたが、彼らのナマの声を聞くと想像以上だと実感する。
予備選挙の段階でアメリカのジャーナリストの多くがこの状況を目の当たりにして、トランプが勝つだろうと確信していたらしい。日本ではこんな暴言を吐くオヤジが当選するはずがないというのが大方の予想で、見事に裏切られてしまった。これもトランプが嫌う都会のメディアの報道に知らず知らず騙されていたのだろうか。
トランプの選挙演説はブルーカラー労働者の心にヒットするフレーズを畳みかけて大いに盛り上がった。メガチャーチ(大教会)で牧師が大勢の人々を前に分かりやすい言葉で説教するのと同じような感じだ。今はやりの反知性主義の実践だ。
インタビューで彼らは言う「大陸の真んに暮らすオレ達が本物のアメリカ人だ。エスタブリッシュメントは外国に旅行するくせに、ここにはこない。「つまらない」「何もないから行きたくない」と言う。真ん中の暮らしなんかに興味なしってことだ。エスタブリッシュメントは、自分たちがオレたちより賢いと思っているが、現実を知らないのは、こいつらのほうだ」また「テレビに映るカリフオルニア、ニューヨーク、ワシントンは、オレ達とは違う。あれは偽のアメリカだ。(中略)ここが本物のアメリカだ、バカ野郎!」と。
トランプ大統領は彼らの支持票にどう答えて行くのか。大統領令の連発で実行力をアピールしているが、議会との関係を考えるとそうやすやすと自国中心主義を貫けるとも思えない。彼が開けたパンドラの箱をどうするのか。前途多難である。
田舎のバーや食堂、床屋、自宅などでのインタビューを聞くと、彼らの現在のアメリカに対する不平不満が爆発していることが分かる。我々外国人が知っている情報とはアメリカの大都会のメディアが発したもので、片田舎の労働者や農民の生活実態のレポートを見聞きすることはまれだ。彼らの都会の知識階級に対する反感は相当なものだ。有名大学を出て、有名な会社に入って大金を得て優雅に暮らす都市生活者を彼らは既得権益層と見なし批判する。富の偏在化はアメリカの大きな課題だと夙に指摘されてきたが、彼らのナマの声を聞くと想像以上だと実感する。
予備選挙の段階でアメリカのジャーナリストの多くがこの状況を目の当たりにして、トランプが勝つだろうと確信していたらしい。日本ではこんな暴言を吐くオヤジが当選するはずがないというのが大方の予想で、見事に裏切られてしまった。これもトランプが嫌う都会のメディアの報道に知らず知らず騙されていたのだろうか。
トランプの選挙演説はブルーカラー労働者の心にヒットするフレーズを畳みかけて大いに盛り上がった。メガチャーチ(大教会)で牧師が大勢の人々を前に分かりやすい言葉で説教するのと同じような感じだ。今はやりの反知性主義の実践だ。
インタビューで彼らは言う「大陸の真んに暮らすオレ達が本物のアメリカ人だ。エスタブリッシュメントは外国に旅行するくせに、ここにはこない。「つまらない」「何もないから行きたくない」と言う。真ん中の暮らしなんかに興味なしってことだ。エスタブリッシュメントは、自分たちがオレたちより賢いと思っているが、現実を知らないのは、こいつらのほうだ」また「テレビに映るカリフオルニア、ニューヨーク、ワシントンは、オレ達とは違う。あれは偽のアメリカだ。(中略)ここが本物のアメリカだ、バカ野郎!」と。
トランプ大統領は彼らの支持票にどう答えて行くのか。大統領令の連発で実行力をアピールしているが、議会との関係を考えるとそうやすやすと自国中心主義を貫けるとも思えない。彼が開けたパンドラの箱をどうするのか。前途多難である。