「アースダイバー」とは心の無意識までを含んだ四次元の地図を作成する作業全体を指す言葉だそうだ。大阪のフイールドワークであるが、思想家・文化人類学者としての著者の面目躍如たるものがものがあり、読んでいて大変面白い。氏は上町台地の南北をアポロン軸、河内・生駒山の東西をディオニソス軸と名づけ、この二つの座標軸を元に、大阪の歴史・文化を論じるという手法をとっている。このニーチェが文化・芸術の型として述べたアポロン(理性的)とディオニソス(陶酔的)の二元論が、そのまま大阪に当てはまるかどうかは定かではないが、一目、上町台地の洒脱な感じと河内の泥臭い感じが大阪の二面性を表していることは事実であり、それがディープな大阪のイメージを作り上げていることは確かである。
中でも、第四部の「土と墓場とラブホテル」の項が面白い。生國魂神社の裏の崖下はもともと墓地で、モノに霊力を宿らせるアミニズムと、生命あるものをただのモノに連れ戻そうとするマテリアリズムが一つになった場所だ。今、その墓場跡にラブホテルが建っている。なぜか。その秘密を解くカギは近松門左衛門の心中物の中にあると氏は言う。即ち、死に向かって突き進む恋人たちが、死に場所を求めてさまよう道行のロケーションは、しばしば深い森であったり、墓地であったりする。もうすぐ二人は自分の命を断って、静かなモノの世界に入ろうとする。そのとき二人を死へ導いたのは、世の掟に許されない性愛の歓喜だった。性愛には、愛を物質に突き戻すマテリアリズムの力がひそんでいる。ことばの空虚を埋めるのが性愛の行為で、モノに向かうことで、観念が埋めることのできない空虚を満たそうとする。墓も観念を無化してモノ化してしまうという点で、セックスと似た構造をしているのだと。思想家の分析は底が深い。
さらにここからラブホテルと墓がディズニーランドと繋がっているという展開になる。白雪姫は死の国の王子によって目を覚まされたのであり、死の王国に迎え入れられたということであり、この王子は普通の国の王子ではないという。なぜなら白雪姫は、半分は死の世界の住民であるドワーフと長年一緒だったからだ。従ってお城は死者の国のものであり、王様も王子も死者の国の頭領と考えるべきで、ディズニーランドの広場の中央にそびえる白は死者の国のものである。だからそこでは人は永遠に若く、病気もなく、チリ一つ落ちておらず、汚物はたちまちにして処理される。その構造は墓場とよく似ているのだと。以上墓場とラブホテルのテーマは誠に深いと言わねばならない。
また同じく第四部の「大阪の地主神」の項で、座摩神社のイカスリの神の話から、この霊を守ってきた渡辺一族の話。そこから渡辺村の変遷を述べ、地区誕生のいきさつを述べている。大阪では避けて通れない問題だが、被差別が生まれる歴史的真実が明かされている。
中でも、第四部の「土と墓場とラブホテル」の項が面白い。生國魂神社の裏の崖下はもともと墓地で、モノに霊力を宿らせるアミニズムと、生命あるものをただのモノに連れ戻そうとするマテリアリズムが一つになった場所だ。今、その墓場跡にラブホテルが建っている。なぜか。その秘密を解くカギは近松門左衛門の心中物の中にあると氏は言う。即ち、死に向かって突き進む恋人たちが、死に場所を求めてさまよう道行のロケーションは、しばしば深い森であったり、墓地であったりする。もうすぐ二人は自分の命を断って、静かなモノの世界に入ろうとする。そのとき二人を死へ導いたのは、世の掟に許されない性愛の歓喜だった。性愛には、愛を物質に突き戻すマテリアリズムの力がひそんでいる。ことばの空虚を埋めるのが性愛の行為で、モノに向かうことで、観念が埋めることのできない空虚を満たそうとする。墓も観念を無化してモノ化してしまうという点で、セックスと似た構造をしているのだと。思想家の分析は底が深い。
さらにここからラブホテルと墓がディズニーランドと繋がっているという展開になる。白雪姫は死の国の王子によって目を覚まされたのであり、死の王国に迎え入れられたということであり、この王子は普通の国の王子ではないという。なぜなら白雪姫は、半分は死の世界の住民であるドワーフと長年一緒だったからだ。従ってお城は死者の国のものであり、王様も王子も死者の国の頭領と考えるべきで、ディズニーランドの広場の中央にそびえる白は死者の国のものである。だからそこでは人は永遠に若く、病気もなく、チリ一つ落ちておらず、汚物はたちまちにして処理される。その構造は墓場とよく似ているのだと。以上墓場とラブホテルのテーマは誠に深いと言わねばならない。
また同じく第四部の「大阪の地主神」の項で、座摩神社のイカスリの神の話から、この霊を守ってきた渡辺一族の話。そこから渡辺村の変遷を述べ、地区誕生のいきさつを述べている。大阪では避けて通れない問題だが、被差別が生まれる歴史的真実が明かされている。