私が本書を購入した時は35万部突破と腰巻に書いていたが、今は50万部突破したようだ。低迷する日本の経済に対する正鵠をえた分析が読者に支持されたのだろう。一読して日本の問題は「現役世代の減少」と「高齢者の激増」の同時進行にあり、これは大都市圏も地方も関係がない。高齢者が増えるということは生産年齢人口が減少することで、内需は構造的に縮小しているのだ。ものが売れないのはここに原因がある。著者曰く、「いくら生産年齢人口が減少しようとも、労働生産性さえ上げられれば、GDPは落ちない」というマクロ経済学の絶対的な定理が、「GDPさえ成長していれば、それが世界の隅々に波及して皆がハッピーになる」という思い込みと合体して、日本の経済関係者の間に究極の油断を生んでいる。団塊の世代の高齢化によって消費はますます減少していく。なぜなら、高齢者の多くは特に買いたいモノ、買わなければならないモノが無い。逆に「何歳まで生きるかわからない、その間にどのような病気や身体障害に見舞われるかわからない」というリスクに備えて、「金融資産を保全しておかなければならない」というウオンツだけは甚大にある。実際、彼ら高齢者の貯蓄の多くはマクロ経済学上の貯蓄とは言えない。「将来の医療福祉関連支出の先買い」、すなわちコールオプション(デリバティブの一種)の購入なのです。先買い支出ですから、通常の貯金と違って流動性は0%、もう他の消費には回りません。これが個人所得とモノ消費が切断された理由ですと。
私はこの説明を読んで、腑に落ちた。人間60を越えると、将来の不安からか、やたら支出を制限して小金を貯めようとする。特に何を買うのでもなく、ただ漫然とだ。葬式金だけ置いて後は使ってしまおうというきっぷのいい老人は少ない。結局は使えないままあの世に旅立つことになる。現世の金はあの世持ち込めないのに、使う勇気がないのだ。結局は孫・子に使われたり、税金でごっそり持って行かれたり、国庫に入ったりするわけで、消費が低迷するのは当然だ。特に女性にこの傾向が顕著のような気がする。お金があれば精神的に安定する、お金大好きという女性は多い。また親の遺産相続をする年齢も本書によると67歳ぐらいで、その遺産も消費にまわされる可能性は少ないという。これでは生産年齢層に所得移転が行なわれず、一番お金が必要なところに回らない。これからの国の課題はそこだ。埋蔵金をどんどん世の中に送りこむシステムを考えると同時に、お金があれば安心という人間を啓発することも大事になってくる。宗教や哲学や文学の出番が来ていると思うのだが、どうだろうか。知的想像力の中に死の恐怖を昇華させて、いつ何があっても動じない精神を涵養するのである。老人よ、お金をどんどん使って若い者の所得の増加に貢献しよう。
私はこの説明を読んで、腑に落ちた。人間60を越えると、将来の不安からか、やたら支出を制限して小金を貯めようとする。特に何を買うのでもなく、ただ漫然とだ。葬式金だけ置いて後は使ってしまおうというきっぷのいい老人は少ない。結局は使えないままあの世に旅立つことになる。現世の金はあの世持ち込めないのに、使う勇気がないのだ。結局は孫・子に使われたり、税金でごっそり持って行かれたり、国庫に入ったりするわけで、消費が低迷するのは当然だ。特に女性にこの傾向が顕著のような気がする。お金があれば精神的に安定する、お金大好きという女性は多い。また親の遺産相続をする年齢も本書によると67歳ぐらいで、その遺産も消費にまわされる可能性は少ないという。これでは生産年齢層に所得移転が行なわれず、一番お金が必要なところに回らない。これからの国の課題はそこだ。埋蔵金をどんどん世の中に送りこむシステムを考えると同時に、お金があれば安心という人間を啓発することも大事になってくる。宗教や哲学や文学の出番が来ていると思うのだが、どうだろうか。知的想像力の中に死の恐怖を昇華させて、いつ何があっても動じない精神を涵養するのである。老人よ、お金をどんどん使って若い者の所得の増加に貢献しよう。